Sasayama’s Weblog


2009/02/28 Saturday

小沢一郎さんの「第7艦隊で十分」発言は正論

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 08:36:48

2009/02/28(Sat)
 
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小沢一郎さんが「在日米軍駐留は第七艦隊の存在で十分」と発言したことで、政府・与党からの批判のみならず、民主党内でも批判をあびているようだが、この小沢発言は、本人が「米軍がやらなくても、自衛隊でやれることはやっていけばいい。米国の負担が軽くなれば、それだけ在日米軍も少なくて済む。ごく当たり前の話をしただけだ」「(自衛隊が)他国の有事に参加するなどということはあり得ない。われわれの安全保障に対する原則は突然、変わるわけがない」と発言しているように、至極当然の正論をいったまでのことで、なぜ、このように、反響が大きいのか、よくわからない。

おりしも、アメリカのオバマ大統領が、ノースカロライナ州の海兵隊基地での演説で、約14万人に上るイラク駐留米軍のうち、2010年8月末までに主要な戦闘部隊を撤退させる計画を表明した。

今回のイラク撤兵は、もちろん、アフガニスタンへの兵力の集中という目的があるが、それ以上に、現在の経済危機とアメリカの財政危機の状況では、とても、これまでの海外駐留兵力を維持できないわけだから、今後も、イラクにかぎらず、世界各地域から、米軍の撤退(U.S. Troop Withdrawal)は始まるとみているが、どうなのだろう。

要は、経済・財政危機を契機にしての「やむを得ざる軍縮」(inevitable disarmament)(これには、核軍縮も含んでいる。)の機運が、アメリカを始めとして、おこってきたということ、そして、世界の軍事力の減感作療法ともいうべき現象が始まった、世界における地域紛争の可能性と非可能性とを、ともに、十分、比較秤量しての、「軍力と覇権力との慎重な将棋崩し」が始まった、と、見るべきなのだろう。

その意味では、今回の小沢発言は、けっして、「日米同盟に亀裂をもたらす」「軍拡路線に転換」なんてものではなく、むしろ、オバマ政権に対し、「塩をいち早く送った」、「タオルを投げてあげた」、という意味合いは大きいのではなかろうか。

今回、駐日アメリカ大使に決まったジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア(Joseph Samuel Nye, Jr.)氏の持論は、ハード・パワー(軍事力や埋蔵資源など)によらず、ソフト・パワー(政治力、文化的影響力など)によるべし、とのものであり、また、オバマ大統領自身も、かねてからの軍縮論者である。

もっとも、このサイト「Lofty Rhetoric Must be Translated into Action」のように、「修辞学的にはオバマは軍縮論者であっても、経済危機のもと、1.5兆ドルに及ぶ世界軍事予算の再配分がもとめられているにもかからわず、また、外国での730に及ぶ米軍基地の解体(disarming and dismantling )がもとめられているにもかかわらず、実際には何も出来ていない(今回の予算教書に反映されていない、の意味か?)ではないか」、との批判もある。

(注-ちょっと数字が古いが、2005年時点で、海外の米軍基地数は735であり、要員数は、196,975人、うち、現地国調達外人要員数は、81,425人、これらの基地での所有建物は、バラックや関連施設、病院などを含めて32.327戸、借り屋数は、16,527戸といわれている。
基地所在地マップは、こちらのサイトをクリック
海外の国別基地名一覧については「BASE STRUCTURE REPORT-2005-」の62ページから80ページ参照
その他参考「The American Empire
U.S. Military Bases = Global Empire」))

しかし、アメリカの経済危機・財政危機を逆手に取ったオバマ政権の軍縮方向への舵は、すでに切られているのではないのか、というのが、私の見方である。

それにしても、一般紙の見る今回の小沢発言をめぐる論調には、そのような観点からの考察はいっさいないのには、おどろかされる。

日本のマスコミは、「いまだに、強いアメリカの幻視を、見続けている。」そんな感じもしないではないのだが—–

サイト「Obama Soft Power, Smart Power II」では「いまや、 地球上における偉大なる国、アメリカ」(the “greatest country on earth”)の呪縛(mantra)からのがれ、ヒラリー・クリントンの目指す「より少なき敵と、より多き協力者」を探すために、スマート・パワーを駆使するとともに、ジョセフ・ナイ の目指す「恐怖と支配から逃れ、インスピレーションと希望を得る」ためのソフト・パワーを駆使する、として、オバマ政権は、このスマート・パワーとソフト・パワーの元において、アメリカの再建をしていくであろう、との展望をこころみている。

その新しいアメリカを見据えた上での、国家戦略が、いま、日本にとって、必要な時だというのに——-

2月26日のファイナンシャル・タイムズの記事「Diplomatic feint that looks to leave Japan in the cold」(レジスターしていない場合はこちらで)でPhilip Stephens氏は、次のように書いている。

「私は、すこし以前の記事で、「コンパスを持っていない日本は、新しい地政学的ランドスケープのもとで、自らの居場所を見つけることが出来ないでいる」と書いた。
そして、いまも、そのように見える。」
(Some time ago I wrote that Japan, lacking a compass, had yet to find its place in the new geopolitical landscape. It seems that it is still looking.)

参考1.「Obama plans to Disarm America-YouTube 」



参考2.「Obama Vows to Disarm America

参考3.「Obama’s plan to unilaterally disarm the U.S.」

参考4.「Obama wants to reduce stockpiles, not disarm

 

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