Sasayama’s Weblog


2008/11/27 Thursday

農林中金の一兆円増資を、ブルームバーグではどう伝えているのか?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 18:48:35

2008年11月27日
 

日本の報道では今ひとつ隔靴掻痒の今回の『農林中金の一兆円増資』問題だが、今日のブルームバーグの記事『Norinchukin Plans to Raise More Than 1 Trillion Yen 』では、その辺の事情を明快に伝えている。

以下、概訳すると下記のとおりである。

「カウンター・トレードで、クレジット・デリバティブに賭け痛手を負った(stung by wrong-way bets on credit derivatives)日本の農林系系統機関である農林中金は、1兆円という、今回の世界的金融恐慌では、アジアで最大規模の資本増強を、今年度中に系統組織から得ようと模索している。

本日、農林中金が発表した2008年9月中間決算では、最終利益が前年同期比92・5%減の104億円と大幅減益となったとしたが、資本増強の方法については、まだ、決定しておらず、来年3月までに、系統下部組織と、はなしあい、増資を目指すとしている。

(訳者注-保有する証券化商品関連の含み損は1兆5737億円、
上記決算表には、注意書きとして次のように付記され、相場変動なり見通しの誤りによる今後の実現損大幅拡大の場合に備えたことへの、または、『時価会計の緩和』を適用したことへの、今後ありうる指弾に対するイクスキューズ的表現となっている。
「上記の予想は,本資料の発表日現在において入手可能な情報および将来の業績に影響を与える不確実な要因にかかる本資料発表日現在における仮定を前提としています。実際の業績は,今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。上記の予想に基づく投資結果に対して当金庫は一切の責任を負いません。」、

なお、今期実現損は、1017億円計上。内訳はCDOの証券化商品815億円、株式関連202億円

上記の増資の中身とは、Tier 1 (core) capital、定義については、『バーゼル銀行監督委員会–自己資本の測定と基準に関する国際的統一化』をご参照)

中略

Atlantis Investment Research Corp.のEdwin Merner氏によれば、『これらの連中(guys)は、明らかに次に来るであろう巨額な損失を恐れ、今、資本増強を模索しているのであろう。彼等は(もともと)そのような危険資産に足を踏み込めるような、出る幕にはいなかったのだ。(“They had no business getting into such risky assets.” ) 』と言う。

農林中金の9月時点における自動車ローンやサブプライム関係金融商品の残高は、6兆八千億円であったが、これは、ノースカロライナ・シャロットのバンク・オブ・アメリカのもつ市場価値に相当するものである。

中略

農林中金では、系統下部組織に増資を求める際に、給与削減を約束することを考えていると言う。

上野博史農林中金理事長は「私が今すべき最大の責任は、増資によって、農林中金の金融機能の安定化を図ることである。」として、自らの辞職の可能性を否定した。

中略

昨年10月時点では、農林中金の二岡氏は、価格の下降で魅力的になったとして、クレジットカードや自動車ローン関連を含むサブプライム関係金融派生商品を3兆円購入する、と話していた。

(訳者注−この記事のことでしょう。これについては、当時の私のブログ記事もご参照、この当時のブルームバーグ記事の中での二岡氏の発言は下記のとおり
“The market has finally become attractive after recent price falls,'’ “The level to which we can build up credit assets is key to our second-half strategy.'’ )

格付け会社スタンダード・アンド・プアー社は7月に、ムーディーズは今月、農林中金についての格下げを決定した。

スタンダード・アンド・プアー社は、証券投資に極度に傾斜している農林中金の証券投資に由来する危機について、次のような見方をしている。

「農林中金の証券投資残高は、36兆二千億円に達しており、これは、日本の他の金融機関の証券/貸し出し比率が0.4から0.5であるのに比して、その3.6倍の高率となっている。

農林中金のリスク・ボリュームと自己資本とのバランスは、今後、さらに悪化していく可能性がある。」
と、スタンダード・アンド・プアー社は、見ている。

後略」

 

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