会計検査院が指摘した国の補助金を巡る不正処理問題の根源に、年度内に交付された補助金を使い切らないと、翌年、当該メニューについて、減額査定される恐れがあるという、事情がある。
つまり、補助金を交付される地方サイドには、補助金を返還しても、それに見合うインセンティブがなく、むしろ、翌年の減額査定というディス・インセンティブがあるがために、「国の補助金は、その年度内に使い切らねばならない」という予算制度上の決まりがあるにもかかわらず、やむを得ず、「預け」の手口などによる不正経理処理がされてきたという事情があるようだ。
ここで、私が提言したいのは、地方サイドに対して、ポイント制(point system )による「補助金返還へのインセンティブ」を、この際用意したら、という提言である。
これは、ヨーロッパなどで行われている壜やペットボトルの回収のためのインセンティブに使われている「デポジット制」の応用のスキームである。
デポジットとは、「預かり」という意味であり、まさに、今回の不正経理の手口である、業者への「預け」の手口を、そのまま、国への「預け」にすりかえる、というスキームである。
ただし、全額預けということではなく、預け分の一定割合を、年度を越えて、預けた自治体が、優先使用できるというスキームである。
ヨドバシカメラなどのポイント・カード制度のように、当年度にあまった補助金を返還した自治体は、その返還した金額に応じて、一定割合でポイントがたまり、そのたまったポイント分については、翌年度に、使途自由で、返還した自治体が使える、という仕組みである。
このように、補助金返還がされるたびに、その返還分の一定部分が、翌年度以降の補助枠の実質的な拡大となりうるというインセンティブを設けることによって、地方自治体は、率先して、「補助金を交付されて、結果、不要となった補助金の返還」に動くようなシステムが用意されれば、より効率的な補助金行政が実現できるのではなかろうか。
そのためには、いくつかの点での「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の手直しが必要であろう。
第17条〜第21条の「補助金等の返還等 」 については、17条(決定の取消)第18条(補助金等の返還)はそのままでよいとして、第11条(補助事業等及び間接補助事業等の遂行)については、前年度に補助金の返還があった場合の特例措置を規定する必要があるように思える。
問題点としては、財務省と各省庁の直轄補助との関係であるが、これについても、補助金返還のインセンティブを用意する必要があるのか、ということだが、各省庁を通じての県への補助とは別扱いというわけにはいかないだろう。
新たな款項目を設けなくてはならなくなるかもしれないが、この辺について、当の財務省が硬直的な考え方をもたれては、困るのだが。
どうだろうか、この提案は?
参考
「補助金についての一般的話し」