2008/05/22(Thu)
“後期高齢者”問題や年金問題で自民党離れを憂慮した自民党が、与謝野馨さんを中心にして、「高齢者の安心と活力を強化するための合同部会」(与謝野馨会長)をつくり、抜本的な高齢者対策策定に向け、雇用対策を含め、陣頭指揮に乗り出したとのことだが、狙いとしては、正しいのだろう。
なぜなら、これ以上、民主党のように年金問題の矛盾点を針の穴的につついてみても、矛盾に満ちた全体のスキームが正されるわけではないのだから、いわば、答えの出ないボタ山をつついて、宝探しをするより、あらたな高齢者の所得のパイを増やすスキームを考えたほうが、正しい選択といえるからだ。
年金スキームのほうは、崩壊寸前なのであり、あっちをいじれば、こっちが崩れていく、という収拾のつかない羽目に陥ることは必至なのだから、ともかく、荷崩れしないように、びほう策で持たせていくしかないのだ。
とはいっても、現在取りざたされている自民党の高齢者対策なるものは、「高齢者への利子課税を優遇する高齢者マル優制度の復活」「定年後の有期雇用契約のあり方」「シルバー世代によるNPO(民間非営利団体)支援」「企業従業員の定年について70歳までの延長」などというありきたりのもののようで、創造性・企画性のない官僚に振り付けされた与党政治家の政策立案能力の限界をそのまま、示しているようにもみえる。
要は、高齢者パー・キャピタの収入を増やすには、どうしたらいいのかを考えればいいのだ。
それには、「エルダー・スモール・ビジネス」(高齢者が起こす小起業)(Elder Small Business)ともいうべき、高齢者中心のスモール・ビジネスのクラスター群ができるために、国家的支援をすればいいだけの話だ。
このスモール・ビジネス(SME=Small and Medium-sized Enterprises )というスキームは、よく、発展途上国や、後進地域・農村地域の内発的発展機動力確保のために、よく使われてきたスキームだ。
たとえば、EUの農村地域でのスモールビジネス振興のために容易されたLEADERプログラムなどは、その典型的なものだ。
これの高齢者版を作ればいいというわけだ。
さらに、これに加えて、以前「クラスターを、地域振興の推進力にしよう」サイトで提言したクラスター形成(クラスタリング)の考え方などを加えていく。
ここで参考になるのは、EUにおけるSME手法を使った各種プロジェクトだ。
たとえば、このサイト「Projects, initiatives and literature: Instruments for the training of older employees」に掲げてあるAWISE構想やSmart-Region構想は、SME手法の高齢者への適用を狙ってもので、日本においても、十分適用しうる構想のように見える。
今高齢者で働きたくとも、働く職場が制限されているのは、65歳以上の高齢者だ。
先日、新宿のハローワークをのぞいてみたら、65歳以上と思しき方々が、真剣にモニターを見つめている姿の多さにびっくりしてしまった。
タクシーの運転でも、65歳以上となると、厳しい。
といって、では、シルバー人材センターがあるではないかといわれるものの、ここは、実質、人材センターならぬ「労役・労務センター」であり、一週間での働く時間数も限られており、一ヶ月の十分な収入を得るにいたっていない。
各地での登録者数も、その魅力のなさ故なのか、年々減少してきているのが実情のようだ。
この「エルダー・スモール・ビジネス」構想を政府が国家的構想として支援することによって、年金のマイナスを十分補いうる社会的効果をもたらすことは間違いない。