2005/12/02(Fri)
おそらく、日本で現在使われている『新型インフルエンザ』の意味を、世界で理解させる事は困難であろう。
日本の新聞の英語圏向け発信では、これをそのまま『a new strain of influenza』として発信している。
どうして、このような名前をつけたのか?
政策当局の見識を疑いたくなる。
当面のヒトインフルエンザの脅威は、H5N1である。
しかし、ただ、H5N1といっただけでは、そのH5N1が、鳥感染のものなのか。ヒト感染のものなのかわからない。
皮肉な言い方をすれば、H5N1ウィルスは、日本では、「ヒトにとっては、新型」であっても、鳥にとっては、昨年2月の京都の鳥インフルエンザのように、決して、新型でも何でもないわけである。
このように、日本でいうような『新型インフルエンザ』では、そのウイルスが、何を指しているのか、さっぱりわからない。
では、英語圏ではどういっているのか?
いろいろな表現があるが、中でも、『human H5N1 bird flu infections』または、、『human H5N1 avian flu infections』というのが、一番正確に言いえているものとおもう。
これを日本語で言えば、「ヒト感染H5N1鳥インフルエンザ」とでも言おうか。
この場合、『人』ではなく、科としての『ヒト』でなくてはならない。または、Mammalである。
この辺は、回りくどくとも、正確な名称をつけたほうがよかったのではなかろうか?
英語に訳しようがない、役所サイドの造語は、百害あって、一利なし、である。
ちなみに、WHOの定義するパンデミックの5段階について、この『新型インフルエンザ』という言葉の使われ方の限界を見てみると、次のようになる。
WHO定義のパンデミックの五段階
1.大流行の狭間の段階
フェーズ1-
人間に新しいウイルスが、まだ、検出されていない段階ではあるが、動物には、ウイルスが存在するであろう段階。
フェーズ2-
まだ、人間には、新しいウイルスは検出されてはいないが、動物のウイルスが、人間に重要な危機をあたえるであろう段階
2.パンデミック警告段階
フェーズ3-
人間に新しいウイルスが検出されているが、ヒト→ヒト感染は、始まっていないか、または、家族間など、限られた接触範囲で感染が始まっている段階。
フェーズ4-
限られた範囲でのヒト→ヒト感染によるクラスターが出現している段階であるが、感染の範囲が、ひとつの地域に限られていて、ウイルスがまだ人間に適合していないことを示しているような段階。
フェーズ5-
多くのクラスターが出現しているが、一定の地域にそのクラスター出現が限られている段階。
この段階では、ウイルスが、ますます、人間に適合しようとしているが、まだ、完全なヒト→ヒト感染にいたる伝達可能の段階にまではいたっていない段階。
3.全地域感染段階
フェーズ6-
特定地域に限らず、全般的に、ヒト→ヒト感染が、蔓延している段階。
「Information About Influenza Pandemics」
より
とあるのだが、日本の厚生労働省が使っている「新型インルエンザ」という言葉は、ヒト段階でのフルのことだから、上記でのフェーズ1と2は、ヒトのウイルスではないのだから、『新型インフルエンザ』ではなくて、『鳥インフルエンザ』という事になる。
フェーズ3では、ヒトのウイルスと鳥のウイルスとが共存する段階なので、同じH5亜型ウイルスであっても、「鳥インフルエンザ」と「新型インフルエンザ」とが、共存することになる。
フェーズ4.5.6では、パンデミックの主流は、ヒトのウイルスとなるのだから、H5亜型は「新型インフルエンザ」と呼ばれる事になる。
なんか、こうしてみると、ウイルスの管轄省庁によって、いわば、ウイルス名の一物ニ価の状態が、生じるというわけだ。
それにしても、現場での混乱を助長させうる、妙な名称のつけ方をしたものだ。
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