Sasayama’s Weblog


2005/07/25 Monday

アスベスト問題で国家賠償責任を問われた場合を逆に考えてみると。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 21:51:42

2005/07/22(Fri)
 
nullもし、アスベスト問題が、 薬害エイズ問題、あるいは、ハンセン氏病・水俣病などのように、国家賠償法上の責任を問われた場合、何がポイントとなるかを、ちょっと気が早いですが、見てみましょう。

第一は、国の行政上の不作為についてですが、国がいつから、アスベストを危険な物質とみなしていたか、そして、いつから、それに対応する行政上の措置をとっていたか、その時期(「除斥期間の起算点となる「不法行為の終了」の時期)がとわれるということ。

また、厚生労働大臣の職務行為についての責任については、7月20日、西博義副大臣が国会答弁であっさりと認めてしまったということが、意外と、今後、大きなポイントになる気配がありますね。

(その後、戸苅利和事務次官が、7月21日の定例記者会見で、「可能な限りの必要な対策を取ってきた。失敗ではないが、省庁間や関係者の連携に問題があったのかをよく見極める必要がある」と述べましたが、ご進講不足、時すでに遅しでしたね。

というか、西副大臣の方は、国家賠償法のことまで、そのとき、念頭になく、役所サイドにとってはまことに不利な、感情に任せた、というか、西さんらしい、ヒューマンなご発言を、図らずもしてしまったということなのでしょう。)

第二は、国会議員の立法上の不作為についてですが、国会が 憲法13条(幸福追求権)での違憲状態を認識して後、どの程度の猶予期間の後に、立法にふみきる必要があったか、ということが問われるでしょう。

ただ、薬害エイズ・ハンセン氏病・水俣病と違うのは、アスベストへの暴露歴が、分散化・多様化しており、その確定が、他のものに比して難しい点が上げられますね。

ここにも、集団訴訟制度−クラスアクション−のない日本の被害者にとっては、不利な面があります。

なお、わが国のアスベスト訴訟については、このサイト「Japanese Situation on Asbestos Issues and BANJAN’s Activities」 が一番わかりやすいのですが、

これによれば、1975年に、特定化学物質等障害予防規則(1971 年制定)が改正され、発がん物質に対する規制が強化されたという時期がひとつのポイントで、
1978 年に、労働省が、アスベスト関連疾患(石綿肺、肺がんおよび中皮腫)に関する労災認定基準を策定した時期が、もうひとつのポイントになりますね。

さらにさかのぼって、1971年の「特定化学物質等障害予防規則(特化則)」施行の際に労働省(当時)は、すでに、アスベストの危険性を認識していたとする説もあります。

裁判としては、

1.1988 年、8 人の石綿肺に罹患した元造船労働者が、住友重機械工業を提訴、1997年和解。

2. 1993年、四国電力の元労働者の家族が同社を提訴し、1999 年に解決

3.1998 年に、米海軍横須賀基地艦船修理廠の元労働者12 人と4 人の遺族が、日米安全保障条約に関連した特別法に基づいて、日本政府を提訴し、2003年5月27日に解決。

ということで、国を相手にしたものは、このうちの三例目のみですが、今後、アスベストの実態がわかってくるうちに、新たな国家賠償法上での訴訟が増えてくるような予感がしています。

参考 これまでの日本のアスベスト対策の歴史
「アスベスト被害の再考 」より引用

1971年 日本、特定化学物質等障害予防の制定で、石綿などの物質の取り扱いを規制
1972年 IARCによる石綿の発がん性指摘
1972年 ILOの専門家会議で石綿の職業がん発生指摘
1974年 米国産業衛生専門家会議が石綿の職業がん発生を指摘
1975年 日本、建設現場での吹き付けを作業を原則禁止
1976年 朝日新聞7月21日報道:日本、労働省通達で、危険性指摘
1988年 日本、作業場所での飛散量を規制する管理濃度の策定
1989年 WHOが青石綿と茶石綿の使用禁止勧告
1989年 米環境保護局が石綿の生産・輸入の段階的な規制
1993年 EUが青石綿と茶石綿の使用禁止
1993年 ドイツが一部を除いて使用禁止
1995年 日本、青石綿と茶石綿の製造・使用を禁止
1996年 フランスが一部を除いて使用禁止
1999年 イギリスが一部を除いて使用禁止
2004年 日本、石綿の使用禁止
2005年 EU、石綿の使用禁止
2005年 日本、建築物解体作業時の対策を定めた石綿障害予防規則の制定

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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