Sasayama’s Weblog


2004/02/28 Saturday

エコツーリズムによるメソポタミア湿原の共生的復元を

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:42:11

   
2004年02月28日

イラク戦争と日本とのかかわりあいで、唯一、救いとなったのは、今回の公明党の浜四津敏子代表代行のイラクのメソポタミア湿原視察で、小泉首相が、この湿原の復元に意欲を示したことだ。

その意味で、今回の浜四津さんのイラク訪問は、大きな意味を持ったと、私は思う。

なんといつても、日本の政党を代表とする方が、このような視察をされたことは、喜ばしい限りだ。

メソポタミア湿原は、イランとイラクにまたがる二万平方キロメートルに渡る広大なものだ。

下記写真は、人工衛星から見た、湿原だが、1973−1976年と2000年との湿原の状況を比較対照したものだ。

ここには、人間の血管のように、現在の湿原を取り巻く状況が映し出されている。

http://earthobservatory.nasa.gov/Newsroom/NewImages/images.php3?img_id=5112
http://earthobservatory.nasa.gov/Newsroom/NewImages/Images/landsat_mesopotamia_1990.jpeg より引用

この湿原は70年代には四国より一回り広い面積があったが、旧フセイン政権時代の干拓などで乾燥が進み、4%ほどまで縮小している。

赤黒々と見えている部分が湿原で、当初は、牛の舌ほどのものだったのが、いまや、人間の舌程度の大きさになってしまった。

日本政府はイラクの復興支援策の一環として、このメソポタミア湿原復元に協力することを決めたものだ。

このきっかけは、昨年12月3日に来日した、イラクの部族代表アブドル・アミール・アル・リカービ(Abdul Amir al-Rikabi )氏と、小泉総理との会談の中で、アブドル・アミール・アル・リカービ氏から「アフワール地域」(Al Ahwar アラビア語で、メソポタミア湿原地域のこと) の再生へ支援を要請提案されたことをきっかけにしてのものであり、傾聴に値すべきものであった。

ただ、この2月に入って、やや、同氏をめぐっての世間の風向きがかわってきつつある。

アブドル・アミール・アル・リカービ氏が、この小泉総理との会談において、七千五百万ユーロ、または、九千四百万ドル、または、百億円の資金提供を、イラク派遣の自衛隊基地保安要員費として提供することを約束したとの、ややスキャンダルめいたthe Qatar News Agencyの報道が、2004年1月26日に、あったからである。

同氏は、これを否定し、翌々日の1月28日付けで小泉総理に出した書簡を公開し、このなかでアブドル・アミール・アル・リカービ氏は、「小泉総理と話し合ったのは、第一は、友好と協力をベースにした、アメリカ人では出来ない、イラクへの協力の仕方について、第二は、メソポタミア湿原再生についての、この二つだけだった。」「この二つの問題については、イラクの独立性を重んじた会議を構成する形で、イラク人の権利をサポートする。」「私と小泉総理との間では、資金的な問題は、まったく触れていないし、私は、あなた−小泉総理−から、これまでにも、または、会談の後にも、一銭も受け取っていない。また、自衛隊を保護することを保証するなどとは言っていないし、この問題に言及もしなかった。」「昨日のthe Qatar News Agencyの記事は、この新聞社独自のソースのものでは、あろうが、もし、これらのニュースソースが日本の官邸筋からのもの-from a source in your office-であるとするなら、この誤報によって、私やあなた-小泉総理-に与えられた図り知れない政治的ダメージの責任は、ニュースソースを出したあなた方にある。それに対して、私は、訴訟をも辞さない決意を固めた。」として、躍起になって、その火消しに、これつとめているようである。
(これについては、http://www.risq.org/article279.htmlや、http://washingtontimes.com/upi-breaking/20040127-093259-5304r.htm参照)

(追記–なお、HP「中東経済を解剖する」特設コーナー「外電の目」において、3月5日付のデンマークのネット新聞、イラク・フォー・オール の伝えるところによれば、日本の外務省が、3月2日付で、アブドル・アミール・アル・リカービ氏に対して、次のような返書を出したことを伝えている。

「親愛なるリカービさんへ 私はこの手紙を、カタール通信のレポートの件に対してのあなたの憂慮を表明された、あなたから(小泉)首相に宛てた2004年1月27日付の貴信が外務大臣から私に廻ってきたことをお伝えするために書きます。
この機会に、首相官邸、或いは日本政府の誰も、カタール通信が伝えたような陳述をしていないことをお伝えしたいと思います。
報道されたレポートは全くの誤りで、真実の逆です。
我々はあなたと首相の会見の録音を保有しています。
そこにはカタール通信のレポートを立証するものは何もありません。
逆に、我々は、この会見が、特にイラクの湿原が抱える諸問題に関心を喚起した点で、有意義であったことを知りました。
我々は現在、この件に関心を寄せてくれた諸外国政府や国際機関、非政府組織の助言を受け、進めています。」)

これらについての日本の報道が、これや これなどのごく一部をのぞいて、まったくないというのも、おみごとというしかないが、これらのいきさつに不純性があったかどうかは別にして、メソポタミア湿原再生の推進自体については、だれしも、異論のないところだろう。

もっとも、このメソポタミア湿原再生プロジェクトは、すでに2001年から、アメリカサイドで、the Eden Again Projectとして、アメリカ在住のイラク人Azzam Alwash氏 などを中心として、進んでいる。

the Eden Again Projectについては、http://www.sit-on-topkayaking.com/Articles/NatureIssues/EDENAGAIN.htmも、ご参照。

また、国連サイドでは、国連環境計画(The United Nations Environment Programme (UNEP))として、The Mesopotamian Marshlands: Demise of an Ecosystemのレポートや、‘GARDEN OF EDEN’ IN SOUTHERN IRAQ LIKELY TO DISAPPEAR COMPLETELY IN FIVE YEARS UNLESS URGENT ACTION TAKENの声明などで、常に、その重要性を喚起して来た。 

すなわち、日本側の、いわば今回の思いつき的協力に至る前に、すでに、アメリカ・国連ベースで、枠組みは作られているのだ。

遅ればせながら駆けつけた日本側の課題は、これら既設のプロジェクトと、どう協調していくのかが問われているということだ。

ただ、ここでわれわれ日本人が注意すべきは、イラク側の思惑としては、単なる湿原復元なのか、それとも、この湿原をベースにした、エコツーリズムの振興によるツーリズム換金回路の整備なのかということだ。

私は、後者の方のニーズが強いのではないかと思う。

もちろん、第一段階は、湿原での危険汚染物質の除去だろうが、これとても、大変な事業である。

しかし、この湿原の問題は、すなわち、この湿原を生活の根拠にしているMarsh Arabsと呼ばれている民の生活保障である。

このあたりは、聖書の「エデンの園」であったとも伝えられ、別名「水のあるエデン」(Watering Eden)ともいわれている。

その湿地帯の風土と共生してきたのがマーシュ・アラブ族(Marsh Arabs)である。

これについてはhttp://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/cairo/story/89.html をご参照。

そこを勘違いすると、あまりイラクの人には歓迎されない援助になってしまう。

サイトhttp://www.dai.com/dai_news/iraq_marshlands.htmや http://www.csmonitor.com/2003/0327/p14s01-sten.htmlやhttp://usinfo.state.gov/regional/nea/iraq/text2003/0327marshes.htmやhttp://www.seas.upenn.edu/~istar/pubs/Christian%20Science%20Monitor%20-%20Iraq.pdfやhttp://www.communitiesbychoice.org/printme.cfm?ID=1194&print=1にも、結論として、Marsh Arabsの人々に歓迎されるのは、この湿原の復元と存在を戦略的に活用しうるエコツーリズムシステムの構築であると結んでいる。

私としては、もし、日本が遅れはぜながらの協力体制を生かすとすれば、このエコツーリズムの手法によるメソポタミア湿原の共生的復元に、援助の重点を絞ることではないと思っている。
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