Sasayama’s Weblog


2002/06/22 Saturday

小泉総理は、日本のゴルバチョフか?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:16:43

   
2002年06月22日

ワシントンポスト紙 2002年6月21日 David Ignatius氏記
原文はこちら参照

色鮮やかなライオンの鬣を持った日本の首相小泉純一郎氏は、このところ、ますます、日本版ゴルバチョフの様相を呈し始めてきた。

彼の同僚でさえも、彼では、改革半ばにある、日本の病んだ政治システムの危機は救えないとの見解で一致している。

しかし、彼が失敗するということは、将来に向かって、今度は、真の突破口を拓くことにつながる。

日本が必要としているのは、真の政治革命である。

それは、これ以上のつぎはぎだらけの改革を行なうことではなく、むしろ、小泉氏の属する自由民主党の力を、最終的に粉砕することを意味する。

「自由民主党は、腐敗した一枚岩である」と、日本の評論家は、述べている。

自由民主党は、ロシアの旧共産党やメキシコのPRIのように、何十年もの間、日本に、一種の一党支配体制を強いてきた。

それは、政党というよりは、むしろ、一国のパワーエリートのクラブハウスのようなものであった。

うれしいことには、トップダウン型の小泉改革が失敗すると同時に、これまで、自由民主党の金城湯池であった地方のいくつかを含め、下からの反乱が醸成されてきた。

若手の政治家たちは、旧体制を姑息にいじりまわすよりは、むしろ、それを破壊しようとしている。

そして、日本の政治通の消息筋の数人から、「小泉さんが最後の自民党総裁である。」ことを確信していると、私は聞いている。

ある重要な消息筋は、こうもいう。「地方には、反乱がある。」

彼は、来年春の地方選挙において、地方のボス政治家に対し、大衆の強い怒りが見られるであろうと、確信している。

私は、今週、新しい一連のスキャンダルが、自由民主党に押し寄せたことで、小泉さんにインタビューをさせていただいた。

林業会社の御用商人から金を受け取ったと伝えられる国会議員の逮捕許諾請求について、国会は、議論していた。

この種のごたごたは、これまでにも、党のボスたちが、公金をむさぼる民間請負業者と共謀したとして非難されてきた、自由民主党の伝統的なものである。

私が、小泉さんに、「自由民主党が、あなたを引きずり落とすかいなかにかかわらず、小泉さん自身が、仲間の党員に責任を負うことはないか。」とたずねたとき、彼は、次のように答えた。

「自由民主党というのは、生まれつき、中に、賛成するものもあり反対するもあるという、合成物なんです。」

小泉氏を批判する評論家たちがいっているように、まさに、そのことこそ、真実であり、かつ、問題なのである。

「かつて、この国に存在しなかった種類の総理」と、ご自身を売り込みながら、小泉さんは、政治改革について、自信に満ちた声ではあるが、あいまいな約束を、私に、繰り返していた。

声をはり上げ、いすをたたきながら、小泉さんは、ご自分のカリスマ性によってこそ、日本を簡単に変えうると考えているかのように、私には見えた。

しかし、悲しいことに、2001年4月の総裁選挙以降、小泉さんが設定した大胆な改革のゴールのうちの何も、小泉さんが成し遂げたものは、ないのである。

たとえば、日本の高速道路工事における、悪名高い浪費と政治のごり押しを一掃することに失敗したし、また、日本の銀行の支払い不能の事態にたいし、真正面に取り組むことにも失敗した。

彼は、明確な行動計画を策定できなかったし、彼に尽くす献身的なアドバイザーも持っていなかった。

何が起こったのか?

小泉総理は、彼が総理になり、権力をにぎるまでは、彼を支えてきた、自民党の派閥政治のくもの巣に、がんじがらめにされたままになっているのだと、日本の政界消息筋は言う。

なんといっても、彼は、おじいさんが国会の副議長で、お父さんが、防衛庁長官であるという、自民党の三代目なのだ。

小泉さんが私に話したところによれば、大衆の怒りへの恐れこそ、自由民主党を改革しうるというのだが、その兆候は、ほとんどみえない。

小泉さんの失敗は、リーダーシップのレッスンとしては、魅惑的なものでありさえする。

15ヶ月前に総理に選出されたとき、彼は、日本人の間に、変革への巨大な希望を与えた。

ハンサムで芝居がかった動作をすることから、彼は、しばらくの間は、ロックスターのごとく、もてはやされた。

日本の女学生たちは、彼のやせたライオンのような顔のポスターを買おうと、むらがった。

その同じ女学生たちが、今週は、英国のサッカー選手ベッカムに、気絶している。

その間、小泉人気は、年間、80パーセント以上から30パーセントちょっとの支持に落ち込んでしまった。

小泉さんの言われるに、彼の尊敬する政治家はウィンストン・チャーチルだという。

そして、かれは、日本は、今まさに自ら信じることが必要であるという、チャーチルのレトリックの奮起させるいくつかの例をあげつらった。

しかし、それは、正しくない。

日本が必要としているのは、真の政治改革なのであり、それは、一国の創造性と生産性を解放しうる種のものである。

その人的資源は、落ち着かず反抗的な若い人々の中にある。

彼らは、時々、異国風の衣装をまとい、インターナショナルヘラルドトリビューン紙のファッション編集記者Suzy Menkes氏に言わせれば、東京を「世界のストリートファッションの中心地」としてきたのである。

そして明らかなことは、日本の金融部門が弱くなっているにもかかわらず、日本の製造部門の大部分が、いまだ強く、革新的であるということだ。

日本の政治指導者が、結局、ゴールを達成できなかった理由は、変革を強行するという意思にかけていたためである。

政治力学の法則のもとでは、自民党のような安定した組織体は、安逸にとどまりがちである。

多くの日本のアナリストたちが言っているように、組織体を磨きなおす必要も、これまでなかった。

このような組織体は、とって代わられるべきである。

こんなことは、オムツをしていたときから自民党員であった小泉さんでは、なすことが出来ない。

しかし、この種の根本的な政治変革が、今の日本に、最も求められることであるように、思われる。(完)

参考-チャーチルの1940年8月20日英国下院議会におけるスピーチ “The Few” の一部分
「戦争の危機」を「経済危機」と読み替えると、小泉さんが引用したくなるようなレトリックが、諸所に見られますね。
国民の知る権利に対する説明責任についても、同様のことがいえます。

The dangers we face are still enormous, but so are our advantages and resources. I recount them because the people have a right to know that there are solid grounds for the confidence which we feel, and that we have good reason to believe ourselves capable, as I said in a very dark hour two months ago, of continuing the war “if necessary alone, if necessary for years.” I say it also because the fact that the British Empire stands invincible, and that Nazidom is still being resisted, will kindle again the spark of hope in the breasts of hundreds of millions of down-trodden or despairing men and women throughout Europe, and far beyond its bounds, and that from these sparks there will presently come cleansing and devouring flame.

(我々英国民が直面している危機は、依然として、大きいが、そこには、同時に我々にとって有利な面もあり、かつ手段もある。
私は、それらのことについて、ここに詳しく述べたいと思う。
なぜなら、国民は、次の諸点について、知る権利があるからである。
その一つは、なぜ、我々が自信を持っているか、そのしっかりした根拠についてである。
そして、私が、二ヶ月前の非常に暗い時間( “Their Finest Hour “-英国本土決戦-1940年6月18日の下院におけるスピーチ)に、私が、「必要ならば、単独でも、必要ならば何年かかっても」といったように、なぜ、英国が戦争を継続できると、我々が考えているか、その理由についてである。
私は、大英帝国が無敵の地位にあるという事実、そして、ナチは、今なお抵抗を続けていると言う事実のゆえに、ヨーロッパ中の、そしてヨーロッパを越えた、軍靴に踏みしだかれ絶望の淵にある数億人の男女の胸に、希望のきらめきを再び取り戻させようとするものである。
そして、彼らの希望の火花が火種となって、まもなく、世界の悪を浄化し、破滅させうる炎となって、燃え広がるであろう。)
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