2002年06月12日
農水省が、対象外の肉を申請した業者名を公表する方針を決めたのに対し、食肉業者11社が行政不服審査法に基づき方針撤回を求める異議申し立てを行った。
業者名の公表が、企業の存続を危うくするとの理由で、これは、不開示情報にあたるとの理由のようである。
同様の例は、かつて、某国立大学医学部で、整形治験をめぐって、薬の業者名や治療にあたった医師名を公表することは、不開示情報にあたるかどうか、問題になったケースがあるが、この場合は、医療事故の訴訟がらみのものであり、今回のケースとは、やや、趣を異にする。。
また、横浜地裁平成元年判決においては、「不利益を与えるだけでは(不開示情報と判断するには)不十分であるという意味で、その不利益は現実的、具体的なもので、かつ、客観的に明白なものでなければならないと解すべきである」と判示している。
いかなる経緯によるにせよ、業者が対象外の肉を申請した事実は、厳然としてある。
そのなかにおいて、業者名を公表することは、国民の肉不信を取り除く有力な措置であり、業界が商品の安全を優先しなかったモラルの程度を測りうる指標ともなりえ、さらに、流通ルートにおいて汚染肉が潜在的に存在する可能性を縮小しうる情報にもなりえる。
それらのことは、結果として、今後のBSE汚染のリスクを低下せしめる。
以上のことから、業者名の公表は、国民の生命,健康,生活を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報であり、さらに、企業名公表によって、当該企業に与える具体的な不利益が、現時点では、明確でないことなどからみても、業者名公表は不開示情報には、あたらないというのが、私の見解である。
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