Sasayama’s Weblog


2005/03/28 Monday

これまでの経済の常識を覆す、六つの謎

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:50:49

2005/03/28(Mon)
 
どうも、このところ、世界経済のこれまでの常識が、いくつかの点で通用しなくなってきているように思えるのだが。

その一つ−自国通貨は、安くてもいい。

これまでにも、私のサイトでは、日米通貨の弱いふり競争といってきたことで、アメリカでは、スノー財務長官以来、その傾向が露骨になってきた。

これを「(ドル高介入を)慇懃に無視したビナイン・ネグレクト・ドル政策(The Benign Neglect of The Dollar) 」というのだそうだが、政策当局者にとって見れば、自国通貨を強くしようと、為替介入するよりは、流れのままにして、結果弱くなっても、それなりの利得はあるのだから、ということになっているようだ。

日本の政策当局者も、ようやく、円売りドル買い介入のおろかさを知ったようだが、まだ、建前論では、そんなに露骨には、言っていない。

いくらドルがそのポジションを下げてきても、ゼロ金利状態の日本では、独自の中立的水準を保つ手段を奪われている。

その二つ-自国通貨安となっても、貿易収支赤字は、自動調整に向かわない。

これまでは、自国通貨安となれば、輸入される価格が高くなって、輸入が減少してき、結果、貿易収支赤字は改善に向かったたが、今は、自国通貨安となっても、輸入インフレは起きない。

ここで、初歩的なおさらいのようになって恐縮だが、「為替の貿易収支の自動調整機能」について、見てみよう。

自国通貨高から、自国通貨安に向かう場合
それまで高くしか売れなかった輸出品が安く売れるようになり、それまで減少してきた輸出が増加に転じてくる。
また、それまで安く買えていた輸入品が高くなり、それまで増加していた輸入が減少に転じてくる。
結果、貿易収支は、黒字へ向かっていく。

自国通貨安から自国通貨高に向かう場合
それまで、安く輸出できていた輸出品が、高くしか輸出できなくなり、それまで増加していた輸出が、減少してくる。
また、それまで、高かった輸入品が安く買えるようになり、それまで、減少していた輸入が、増加してくる。
結果、貿易収支は、赤字に向かっていく。

しかし、今、この「為替の貿易収支の自動調整機能」は、この公式のようには機能していない。

つまり、自国通貨高から自国通貨安にむかっても、輸入品の価格は、高くならず、輸入は減らず、貿易収支は、黒字へと改善されないのだ。

その三つ-双子の赤字がいくらあっても、自国通貨安になるとはかぎらない。

いくら巨大な財政赤字があっても、いくら巨大な貿易赤字があっても、そのこと自体で、自国通貨安とはならない。

経常収支と財政赤字との関係は、次のとおりの式に要約されている。

海外部門・経常収支=貿易収支(一般商品収支+加工用雑貨収支+修理費収支+港湾調達財貨収支+非貨幣用金収支)+サービス収支(輸送収支+旅行収支+その他サービス収支)+所得収支(雇用者報酬収支+投資収益収支)+経常移転収支(実物財産無償取引収支+金融資産等無償取引収支 のうち経常移転分のみ)

海外部門・経常収支=民間部門収支〔家計部門収支(貯蓄−投資)+企業部門収支(貯蓄・利潤−実物投資)〕+政府部門収支〔地方財政収支(税収−支出)+国財政収支(税収−支出)〕

貿易収支(海外部門・経常収支)と財政収支(政府部門収支)が赤字になっても、海外進出自国企業の収支が好転していたり、過去のドル高の食いつぶしがなされていたり、国内での生産性が向上したり、減税効果が上がっていたり、対外債権の積み増しが過去にあり、そこからの配当なり含み益が出ているなり、しているうちは、そのことで、直ちには、ドル安にならない。

しかし、当面の手段が尽きた時点で、暴発的なドル下落現象が起きる可能性はある。

その四つ-長期金利を決めるのは、短期金利であり、長期債券の短期ものも長期ものも、差がなく、フラットの利回りになってしまっている。

これは、世界的現象で、グリーンスパンさんが「謎」(CONUNDRUM)といったものだ。

おそらくこの長短にかかわらない利回りの平坦化(A flat yield curve)現象には、世界経済の将来に対する不安が影響しているものと思われる。

ちなみに米国債といわれるアメリカの財務省発行債券には、次の三種類がある。
財務省割引証券(T・Bills 割引債) 3カ月、6カ月、1年もの
財務省利付証券(T・Notes 利付債) 2年、3年、5年、10年
財務省10年超利付証券(T・Bonds 利付債) 30年

利回り曲線には、正常利回り曲線(Normal yield curve)と、逆利回り曲線(Inverted yield curve)と、フラット利回り曲線(Flat yield curve)とがある。

通常は、証券の満期到来日が長くなるにつれ、利回りは上昇し、短期利子率と長期利子率との間の金利差( Spread)は、正の相関関係にある。

これが、正常利回り曲線(Normal yield curve)である。

投資家は、常に、短期の投資期間を選考するとされ、これを流動性プレミアム論という。

したがって、長期債は、短期債よりも、流動性プレミアム分だけ、高い利回り(債券金額は、低い金額)になるのが、通常のようである。

一方、逆に、証券の満期到来日が長くなるにつれ、利回りは下降し、短期利子率と長期利子率との間の金利差( Spread)は、負の相関関係となる場合がまれにある。

これが、逆利回り曲線(Inverted yield curve)である。

どのような場合に起こるかといえば、短期金利が異常に上昇し、短期債が、劣後してしまうときに起こりうる。

最近6年間のうちでは、連邦準備銀行貸し出し金利が、財務省利付証券(T・Notes ) 2年もの利回りを上回った例が二度ある

一つは、1998年であり、もう一つは、2000年である。
http://www.safehaven.com/article-296.htm参照

フラット利回り曲線(Flat yield curve)は、証券の満期到来日が長くても、短くても、利回りは、一定であり、短期利子率と長期利子率との間の金利差( Spread)は、ゼロである。

利回りのフラット化とは、この T・Notes の 2年、3年、5年、10年 もののいずれもが、同様の水準でフラット化するということである。

次のサイトhttp://www.investmenttools.com/futures/interest/
welcome_to_the_page_about_bond_yields_and_bond_spreads.htm
の中の表を見ていただきたい。

これは、最近の米国債のイールド変化を色分けして表した図である。

マゼンタ色が30年物、クロ色が10年物、アオ色が5年物、アカが3ヶ月もの、の、米国債の利回り格差である。

3ヶ月ものを除いては、30年物も10年物も5年物も、ほぼ、利回りは、一点に集中してきていることがわかる。

図の下部にある茶色の線は、5年物の財務省利付証券(T・Notes)と、財務省割引証券(T・Bills )との利回り格差の推移である。

http://www.drfurfero.com/books/2309book/ch04b.html参照

その五つ-日米の金利差(the US-Japan interest rate spread)放置が、ドル暴落を防ぐ

日米金利差が今後一段と拡大するとの思惑が、市場にあると、円は売られ、ドル買いが続く。

長短とも日米金利差は開く一方だが、日本が金利を上げ始めると、いまのところは、中立的金利水準確保と称して、金利を上げているアメリカは、今度はインフレ阻止のための加速的金利引き上げに踏みきらざるを得ない。

となると、アメリカにとって見れば、「日本さん、もうちょっと、金利引き上げはかんべんね」ってことになる。

もっとも、この日米金利差を、実質金利(「名目金利−インフレ率」であり、デフレの場合は、デフレ率の実数を名目金利に加えた数字)で見た場合には、日本の方が実質金利は、まだ高いとする説もある。

まづ、長期金利で日米の金利差を見てみると、

アメリカの米国債については、前記の「謎-その四つ」で見たとおりである。

日本の国債( Japanese government bond〈略〉JGB)の種類としては、次のものがある。

国債には利付債と割引債がある。
政府短期証券-期間が約60日
割引短期国債-期間が6カ月・1年
中期国債-期間2・3・4・5年
割引国債-期間5年
長期国債-期間6・10年
超長期国債-期間20・30年

このほかに、2003年3月より、個人向け国債があり、これは、期間10年の変動利付債である。

そこで、日米長期金利格差の比較対照として、次の組み合わせで、2001年と2005年との新規発行債の利回り(the Benchmark Yield)対比で見てみると、次のようになる。

日-中期国債-期間2年-2002/1-3-0.05  2005/2-0.10
米-財務省利付証券(T・Notes ) 2年-2002/3-3.72 2005/3-3.83
差-2002-3.67      2005-3.73

日-中期国債-期間5年-2002/1-3-0.52  2005/2-0.54
米-財務省利付証券(T・Notes ) 5年-2002/3-4.91 2005/3-4.29
差-2002-4.39     2005-3.75

日-長期国債-期間10年-2002/1-3-1.39  2005/2-1.33
米-財務省利付証券(T・Notes ) 10年-2002/1-3-5.42 2005/3-4.59
差- 2002-4.03      2005/3-3.26

との対応となる。
http://bonds.yahoo.com/rates.html
http://www.tmpages.com/tmp55.htm#TMDB_VV
http://www.morganstanley.com/GEFdata/digests/20020904-wed.html#anchor2
http://www.bloomberg.co.jp/markets/rates.html
http://www.bloomberg.com/markets/rates/japan.html
http://www.selftrade.es/generes/funds/BondLetter200502.pdf参照

また、短期金利の日米金利差については、

日-公定歩合-2002/3-0.10%  2005/3-0.10%
米-フェデラル・ファンド(FF)金利−2001/3−5.0%  2005/3-2.75%
差-2002/3-4.90% 2005/3-2.65%
となっている。

日本の公定歩合は、2001年9月19日以降動いていない。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)は、、3月22日に、短期金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、現行の年2・5%から0・25%引き上げて年2・75%にしたが、さらに、来月には、アメリカの更なる利上げが、0.25パーセントと行われると見込まれている。

FRBの利上げも、昨年6月以来7回連続で、いずれも0・25%の小刻みな上げ幅となり、FF金利に1%上乗せする公定歩合も同率引き上げ、年3・75%とした。

また、2002年3月当時の円相場は、一ドル114円であり、2005年3月の円相場は、107円であり、円安ドル高から、円高ドル安にふれている。

日米の二年物の国債と、10年物の国債の利回りを対比した場合、日本では、2002年が27.8倍、2005年が13.3倍なのに対して、アメリカでは、2002年が1.45倍、2005年が1.19倍となっている。

このように、2002年と2005年を比較した限りでは、アメリカでの長期金利のフラット化が進んでいることが、ここでもわかる。

また、円相場が、+7円の円高にふれている中で、日本の短期金利の上昇がないまま、日本の国債利回りは、長期物も短期物もほとんど、投資対象としては、意味のない利回りとなっている。

その六つ−中国の巨大市場の存在は、金から物への価値転換を加速化し、金本位的な考えが横行する。

これまでのドルを中心としたあらゆる経済指標が、連動せず、あるいは、無連関または、無反応になるなど、ばらばらな動きを見せ、世界経済は、石油の高騰、鉄鉱石価格の高騰などに代表されるように、中国のモノ需要とモノ供給の巨大で気まぐれな動きに、より振り回されてくる。

そして、通貨の動きから、資源価格の動きに、あらゆる指標は連動し始めてくる。

その過程の中で、各国の資産保有形態は、ドル中心の資産保有形態から、金保有形態へと、シフトしていく。

そして、日本のような、米国債をたくさん抱えた国は、結果、ババをひくことになる。

http://www.businessweek.com/bwdaily/dnflash/feb2005/
nf20050217_2341_db035.htm
参照

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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