2009年11月18日
新たな埋蔵金として、行政刷新会議が、事業仕分けの過程で、公益法人や独立行政法人に眠る基金など新たな「埋蔵金」の洗い出しも進め、仕分け作業の前半戦で20の基金などに対し、9000億円から最大1兆円近くを国庫返納すべきだと判定したようなのだが、果たして、どうなのだろう?
たとえば、厚生労働省所管の独立行政法人、福祉医療機構が抱える4基金、計2800億円についてみれば、政府の出資金を元手に設置しその運用益を積み立て、民間非営利団体(NPO)などによる地域福祉事業や障害者スポーツ大会の費用を助成しているというのだが、その肝心の運用益が、リーマン・ショック後の各種運用金融商品の評価損の嵐を、かいくぐっているとは、到底思えない。(上記の福祉医療機構の場合は、政府保証のない財投機関債のようだが。)
ナッシム・タレブさんのように、オプションでヘッジをかけながらの運用でなければ、到底、このリーマン・ショックは、乗り切れていなかったであろう。
運用していないならば別であるが、運用しているとすれば、おそらく、現時点では、元本保証の国債(この場合でも、中途換金調整額が差し引かれる)運用など以外は、運用資産に、巨額の含み損があるに違いない。
なかったら、その基金の運用担当者は、「運用者として、アグレッシブでなかったがゆえに、結果として有能の立場を勝ち得た。」という意味で、この時勢、表彰ものである。
つまり、『返せ』と言われても、返せない、埋蔵どころか、実質、『含み損の埋蔵』に過ぎないような状態で、次年度予算でつなぎながら、市場の回復と、含み損の圧縮を待つしかない、というのが、正直な実情なのではなかろうか?
おそらく、運用している金融商品の額面残高の実現残高は、行政刷新会議が返納をいきまいている埋蔵金の数字の、すくなくとも、三分の一くらいは目減りをしている関係にあるのではなかろうか?
つまり、未実現損(Unrealized Loss)をふくんで、表面残高に計上されているものを、行政刷新会議は、返せ返せと、いきまいている光景なのだとしたら、まさに、取らぬ狸の皮算用ということになる。
まして、運用途中のものを引き上げれば、さらに、それ以上の基金の目減りを招くことになるのだが。
もし、事業仕分け人の方々が、それほどにいきまくのであれば、それぞれの基金の現時点での運用資金の評価損を確定して、誇らしげに語るのであれば、話はわかるのだが。
まして、このような基金においては、自主運用のスキルもない方ばかりなのであろうから、実質的な運用は、金融機関なり証券会社への委託運用の形をとっているのであろう。
実際、ここまで踏み込んでの事業仕分けなんだろうか?
一度、担当者に聞いてみたいものだが。
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