2009/07/27(Mon) 06:15
こんなことを言うと、一部日本の識者(?)からは眉をひそめられてしまいそうだが、昨日、インドでシン首相夫妻も出席して、南部アンドラプラデシュ州のビシャカパトナム海軍造船所でその進水を祝ったというインド初の国産原子力潜水艦「アリハント」(Arihant)(全長104メートル、最大時速44キロ(24ノット)、排水量5000−6000トン、乗組員100人、ミサイル15発搭載可能、100日間の潜水可能)の雄姿を見ると、そんな思いもする。
国産原潜を開発したのは米、露、英、仏、中国に続き6か国目のようだ。
これまで、インドは16隻の伝統的ディーゼル潜水艦に頼ってきた。
原子力潜水艦については、このほか、ロシア製の潜水艦(ロシアから1万2000トン級の最新型原潜「K152ネルパ(Nerpa)のChakra)のリース(長期賃借)に頼ることとしている。
こちらのほうは、現在試験運転中で、年末まで引き渡される予定であるという。
また、2005年には24億ユーロ(約3200億円)をかけ、フランスとスペインが開発したスコルペーヌ(Scorpene)級ディーゼル式攻撃型潜水艦6隻の調達契約を結んでいる。
今回の原子力潜水艦は、それとは別のロシアの技術協力を得た純国産のもののようだ。
船体の設計は海軍が担当し、搭載85メガワットの原子炉開発は、ロシア・フランスから技術を導入をえて、バーバー原子力研究センターで導入・開発した。
また、原潜に装備する核弾頭搭載可能な12基のK−15弾道ミサイル(射程700キロメートル)の開発は防衛研究開発機構(DRDO)が担当した。
このK15は核弾頭の搭載が可能で、2段階のロケットエンジンを利用して海底100メートルからでも発射することが可能のようだ。
船体の建造は、ラーセン&トゥブロ(L&T)がおこなった。
これらのための投下資本は、3,000億ルピー(約6,400億円)であるという。
「アリハント」とは、サンスクリット語で「敵を滅ぼす者」との意味のようだが、この名前自体、挑戦的である。
700 km飛行しうるK-15 ballistic ミサイルも搭載しうる設計になっているという。
ちなみに、アメリカ、ロシア、中国の K-15 SLBMs は、3000km,中国のJL-2 SLBMは、7200kmといずれも長距離化対応となっているようだが、インドで、これから新たに建造される4隻のうち2隻はアリハントと同じ射程距離のミサイル搭載の予定だが、残り2隻は射程距離3500キロメートルの長距離弾道弾の搭載が可能なタイプになるという。
アリハントは今後、2年間の試験航行を経て、2011年の実戦配備を目指している。
これにとどまらず、インドは、2020年までに原潜10隻を配備する予定という。
また、インドはベンガル湾ビシャーカパトナム軍港近くのラムビーリに、原子力潜水艦基地を建設中とのことである。
しかし、インドでは、核政策において、先制核攻撃を禁じており、これらの原子力潜水艦の大儀名分も、地上のミサイル基地が敵の攻撃で全滅した後にも生き延びるための抑止力として必要であるとしている。
2006年3月31日のインドのシヤム・サラン(Shyam Saran)外務大臣のアメリカ講演やヒルとの会見に見られるように、インドの原子力政策においては、巧みに、核拡散防止(Nuclear Non-Proliferation)を大儀名分としてのアメリカの干渉を避けながら、実利のある原子力利用の国家戦略が駆使されてきた。
参照
“Indo-US Relations: An Agenda for the Future” - Foreign Secretary Mr. Shyam Saran’s Address to the Heritage Foundation
http://www.indianembassy.org/India_Review/2006/april-06.pdf
今回のこの国産原子力潜水艦の進水も、そのインドの戦略を遺憾なく発揮している事例のひとつとも思われる。
それに比し、日本はどうであろうか?
「抑止力としての核装備」への動きは、オバマ政権以来の世界の核軍縮路線に逆行する動きとはなってしまうだろうが、そろそろ、海洋国家日本も、ある程度の、この現実路線をとらなけれはならないのではなかろうか。
以下は、やや、桜チャンネル的になりますが、動画で見る、「アリハント」の雄姿です。
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