2009年7月10日
文部科学省の奨励・補助もあり、全国各地で、学校の緑化を目指したエコ・スクールの建設が盛んのようである。
内容は、ビオトープ、校舎の屋上緑化、校庭の緑地化、校舎の外壁の緑化、庇設置などがその内容のようである。
一見、まことに時代の流れにあった、ふさわしいエコスクールの建設のようにも見えるが、しかし、その全体スキームが、持続可能なスキームのもとにあるのか、といえば、中には、必ずしも、そうでないものも、散見されるようだ。
たとえば、上記の例で言えば、校舎の外壁緑化だ。
ここでは、特に、潅水を必要としない外壁緑化なのか、それとも、潅水を必要とする外壁緑化なのか、によって、その評価は大きく分かれうる。
これは、屋上緑化についてもいえる。
緑化技術には、潅水を必要としない無潅水緑化工法と、潅水が必須な潅水緑化工法とがある。
前者の工法は雨水の貯留システムと、保湿力のある特殊な土壌により、長期間の雨が降らなくても、緑化植物が、水を吸い上げられるようになっている。
また、選定する緑化植物も、セダムなどの乾燥に強い植物が選定されている。
後者の工法の場合、一日、100平方メートル当たり、一日、200リットルの水が必要であるという。
また、外壁緑化の手法としては、地面から植物が、自力で這い上がる登攀型と、下へ垂れ下がる下垂型などがあるが、前者は、這い上がりうる高さに限界があるようなので、高い校舎には不適当のようだ。
前者であれば、植栽される土壌は地植えとなるが、後者の場合は、地植えとならないために、直射日光と風などにより土壌が乾燥しがちとなりうる。
エコスクールの中には、メンテナンスが校舎内からできるようにしたシステムの採用をしているところや、雨水・天水を利用した低コスト型の屋上緑化・壁面緑化を採用しているところも、いくつかはあるようだが、その多くは、自動潅水システムによるプラント型のもののようである。
この自動潅水装置頼みの壁面緑化が、果たして、持続性の観点から見て、エコの名前に値するのかどうなのか、非常に疑問である。
まして、手動潅水と異なって、この自動潅水にかかる水道代は、馬鹿にならないようである。
これらの潅水を、水道に寄らずに、地下水に依存している学校もあるようだ。
これは、本末転倒なスキームである。
本来、雨水の保水機能を緑化植物に果たさせようとするのが、屋上緑化・壁面緑化の目的である。
ちなみに、ドイツでは、屋上緑化を行なった家は、下水道料金が50%以上免除されることになっているようだが、これも、ひとえに、屋上緑化が雨水の保水機能を促進させているという価値評価の元にあるからである。
また、自動潅水システムが、いわば、緑化植物の生命線ともなりうるだけに、その定期的なメンテナンスにも、かなりの労力が求められるようだ。
このように、ヒートアイランド対策と雨水の保水機能促進のための壁面緑化のはずが、その緑化植物の枯死を免れるために、かえって、水資源を多使用しているという皮肉な例も、東京都区内のいくつかのエコスクール優秀校といわれる小学校にはすでに見られているようだ。
本来、屋上緑化や壁面緑化は、ドイツの”fassaden begrünen” 等を真似たものだ。
その原初的な形態は、ほとんど、かやぶき屋根にぺんぺん草をはやしたような、ごく素朴なものであった。
それを、地球温暖化やヒートアイランド現象などの危機を理由に、過剰な装置にしたてあげてしまったことに、日本の誤りがあるようにおもえる。
つまり、エコのトレードオフとなりうるものを勘違いしたがために、大きなループホールを抱えた「擬似エコのスキーム」となってしまっているのである。
参考
ドイツでの屋上緑化・壁面緑化の意義のスキーム図
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(冒頭の写真は、東京都杉並区立荻窪小学校の壁面緑化)
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