Sasayama’s Weblog


2004/10/05 Tuesday

工程や、工程とソフトウエアの組み合わせ、または、ソフトウエアについての特許の考え方について

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:49:12

  
2004年10月5日(火) 

工程に関する特許の考え方や、工程とソフトウェアの組み合わせに関する特許の考え方、ソフトウエアに関する特許の考え方について、最近の判例の動向を交え、以下にまとめてみました。

                  記

1.発明の種類

(1)特許法上の発明の種類

A.物の発明
特許法2条3項3号に規定、物の発明には、時間的な前後関係がない。 (単一工程での発明)

a.発明が物品として現れるもの
クレーム(特許請求の範囲)の記載例「 A成分、B成分、C成分からなる樹脂生成物」
b.媒体に記録されていないコンピュータプログラム

B.方法の発明
特許法2条3項2号に規定、方法の発明には、時間的な前後関係がある。(複数工程での発明)
生産物を伴わない単純な方法
Cの「物を生産する方法」と区別する意味で「単純方法」とよんでいる。

測定方法、制御方法、保存方法、収納方法、包装方法、修理方法、検出方法、通信方法、評価方法、選別方法、分析方法、試験方法、確認方法、ビジネス方法、スクリーニング方法  など

クレーム(特許請求の範囲)の記載例「A成分とB成分からなる組成物を加圧・噴霧することを特長とする殺虫方法」

C.物を生産する方法の発明
特許法2条3項3号に規定、物を生産する発明には、時 間的な前後関係がある。(複数工程での発明)
生産物を伴う方法
物の製造方法、物の組み立て方法、物の加工方法、などがある。
その、それぞれは、1.原材料.その処理工程.生産物.その他 から構成されている。
クレーム(特許請求の範囲)の記載例「A工程と、B工程から成ることを特徴とするCの製造工程」
  
(2)実務上の発明の種類

A.システム(方法)発明

物の発明 例「液体充填システム」

B.プロダクト・バイ・プロセス発明

物の発明
物の発明ではあるが、その製造方法では、その生産物しかできないという、製造方法によって物が特定された発明
クレーム(特許請求の範囲)の記載例「原料Aを加熱し、原料Bと混合し、常温まで冷却して得た物質X」

C.選択発明

すでに広範な概念のもとで特許があるが、その下位概念に、特に効果が顕著な一部分を見い出して、行われた発明 

D.利用発明

その発明を実施するために、別の発明を丸ごと使って、行われた発明
他人の特許発明(例えば、α+β)を利用して、発明(例えば、α+β+γ)

E.用途発明

すでに知られている物質について、新しい用途を見出してなされた発明

F.改良発明

先行する発明をベースにして、改良を加えた発明

G. USE(使用)発明

医薬など、物質の使い方を特定した発明

H.媒体発明

プログラムを記録した媒体についての発明
クレーム(特許請求の範囲)の記載例「コンピュータに、手順A.手順B.手順Cを実行させるためのプログラムを記録した媒体」

I.伝送媒体

所定の情報が、どの時間に、どの媒体に乗って伝送されるかということをあらわし、これ自体では、発明の対象にはならない。

2.工程の発明に関する問題点

(1)工程の発明自体は、「物を生産する方法の発明」 として、クレーム(特許請求 の範囲)することになるが、裁判で争われるケースが多いのは 、次の諸点である。

A「方法の発明(単純方法)」なのか、「物を生産する方法」なのかが、クレーム上で 明確になっていない。

判例−
平成16年4月27日」「原告タカラスタンダード 被告サンウェーブ」
平成16年7月13日」「原告(株)ハネックスロード 被告MR2工法協会」
平成11年7月16日「カリクレイン事件」

B.材料の概念が、クレーム記載の範囲内なのか、範囲外なのか、明確でない。

判例-
平成16年6月18日「原告丸山工業(株)被告日本下水道事業団」

C.工程の一部を自ら実施していなくても、全工程を実施した場合と同視してよいか否かが明確でない。

判例-
昭和36年5月4日「スチロピーズ事件」

D.その他
a. クレームに記載された「特許請求の範囲」が、広すぎる場合と、狭すぎる場合。

クレームに記載された特許請求の範囲が、

「すでに特許されている発明の100の部分のうち1つが違っていても、機能が変わらなければ、同一のものとみなす」という均等論にたつのか、
      
「 すでに特許されている発明の特許請求の範囲よりも、あまりに広範囲にわたったクレームであるために、かえって、特許請求の範囲を縮小解釈する」という逆均等論
にたつのか。

の二説があるので、クレーム(機能的クレーム)の書き方について、有利になるような書き方をするよう気をつける。

均等論の判例-
平成10年2月24日「 無限摺動ボールスプライン軸受け事件」

逆均等論の判例-
昭和53年12月2日「部品の自動選択及び組み立て装置」事件

b. クレーム(特許請求の範囲)に工程の順序を特定しない場合、問題になることがある。

判例-
平成14年11月27日「原告 株式会社ユタカ・トレンズ 被告 温産業株式会社 ほか 穀物粉製造プラント事件」

c.工程に分岐がある場合、クレームに特定しておかないと、問題になることがある。

例「A工程とB工程とを経て得られたCからCaを分離し、得られたCaにDを加えて、Xを得るとともに、Caを分離した残りのCbにEを加えてYを得る方法」というクレームでは、「A工程とB工程とを経て得られたCからCaを分離し、得られたCaにDを加えて、Xを得る」という方法発明と、「A工程とB工程とを経て得られたCからCaを分離し、Caを分離した残りのCbにEを加えてYを得る」という方法発明とを分けてクレーム記載しておかないと、いけない。

d.工程全体をひとつの発明とする場合
特許法37条「多項制クレーム」といわれ、一出願で発明を出願できるものである。
二つ以上の装置を組み合わせて全体装置を発明する場合や、二つ以上の工程を組み合わせて、各装置の発明、各工程の発明をする場合、 その全体をコンビネーション、 構成するそれぞれの装置なり工程を、サブコンビネーネョンという。
そこで、これらの装置・工程を一括した発明としてクレーム(特許請求の範囲)に記載する場合、いくつかの制約事項がある。
1.サブとコンビとが、特別の特徴を有していること-例- 送信機と受信機
2.サブとコンビとが、共通の有用性を有していること-例-シャープペンシルと芯留機構  ボルトとナット
3.産業上、利用分野と課題が、ともに同一であること。

なお、日本では、多項制についての判例はまだないが、アメリカのコネチカット地裁での Anton/Bauer社の バッテリー・パック・コネクション裁判では、全体のコンビネーションのみをクレーム(特許申請の範囲)とし、サブコンビネーション単体についてのクレームを記載しなかったために敗訴したケースがあるので、この点は要注意のようである。
また、コンビの片方しか権利化できなかった場合は、ライセンス上で、「本ライセンスに基づく実施品は、本ライセンスに基づく実施品と一緒にのみ組み合わせて使用することを認め、他の品物と組み合わせて使用することを認めない」という旨の制限をつけておけばよい。   
  

3.ソフトウエアとハードとの組み合わせの発明

この場合、ソフトウエアとは、狭義のコンピュータソフトをさす。

(1)今に至るまでの経緯

経緯の概要については、http://hino.moon.ne.jp/prov84.htmを参照

1993年6月の改訂審査基準 特定技術分野の審査基準「コンピュータ・ソフトウエア関連発明」が出る前も、ソフトウェア特許は、制御関係で、機械と関係するソフトウェアという、目立たない形で、出願されていた。
たとえば、1960年代前は、リレーを用いたシーケンス制御、 1960年代は、半導体を用いた電気的な回路でのシーケンス制御、1970年代には、マイクロコンピュータによるシーケンス制御であったが、その多くは、ソフトウェアとしてではなく、回路や何らかの装置として、特許を取得していた。
たとえば、全自動洗濯機の制御のソフトウェアは『サブルーチン回路』として、特許を取得していた。
ソフトウェア単独としては、著作権法によって、権利が守られていた。

1993年のソフトウエアの審査基準では、「ハードウェア資源と呼ぶコンピュータやネットワーク機器を利用するものであれば、『方法』として、特許を許可する方針をしめした。
これによって、制御プログラムを記録した記録媒体の権利保護ができるようになった。

2000年12月に、ハードとソフトを一体として用い、あるアイディアを具体的に実現しようとする場合、そのソフトウェアの創作は、特許の対象となった。
また、「媒体に記録されていないコンピュータプログラム」は、『物の発明』として取り扱われるようになった。
また、ビジネス関連特許に関する記述も明確にされた。

2002年2月には、プログラムが、特許法上の「物」に含まれることが明記され、ネットワーク取引で、ソフトが対象に加えられることになった。

(2)2000年12月以降のコンピュータ・システム関連特許の考え方

2000年を境にして、コンピュータ・システム関連特許の考え方が、従来とは、まったく異なったものになった。
すなわち、それまでは、ハードあってのソフトであり、媒体に記録されることを前提にしたソフトであったものが、ソフト単独でも、特許となりえ、媒体のないソフトでも、特許となりえるようになった。

A.2000年12月28日の「コンピュータ・ソフトウェア関連発明の審査基準」におけるソフトウエア発明の基準は次のとおり

a.これまでは、媒体に記録されているコンピュータ・プログラムのみを「物の発明」として特許の対象としていたが、これに、「媒体に記録されていないコンピュータ・プログラム」も加え、「物の発明」として、特許の対象とした。

b. これまでは、ハードウェアに従属するものとしてソフトウエアの発明を特許の対象としてきたが、ハードからのソフトへの働きかけも、ソフトからハードへの働きかけも、平等のものとして、特許の対象とした。

c.ハードとソフトとの関係には、次の三つがある。

イ.外在的ハードに対するソフトによる制御
例−エンジンのコンピュータ制御
ロ.内在的ハードに対するソフトによる制御
例-コンピュータ内部における「仮想記憶装置」などの処理
ハ.見かけ上、ハードに依存していないソフト
例-ソフトが、見かけ上では、コンピュータを制御しているという意識なしに、円の描画なりかな漢字の変換などの処理を行うソフト

(3)上記での制御には、それぞれ、

A 媒体発明やプログラム発明を含む物の発明.
B 方法の発明 
C 物の生産のための方法の発明
D 装置発明とみなされる方式(システム)発明
 がある。

(5)ソフトウェア関連特許の例

ハードの外在的制御−自動車エンジンの燃費効率を最大にするために、燃料供給量を適切に制御するプログラムを記録した媒体

ハードの内在的制御-コンピュータによる画像処理方法及び、画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

ハードを用いた処理−商品売り上げ予想装置、ゲーム装置

(6)ソフトウエア関連特許のクレーム(特許請求の範囲)の書き方の例 

A 物の発明としてのクレーム(特許請求の範囲)の書き方
「OOOOの演算機能を果たす演算手段と、XXXXのデータの記憶機能を果たす記憶機能とを備えてなる ZZZZ装置」

B 物の生産の方法の発明としてのクレーム(特許請求の範囲)の書き方  「OOOOする手順(工程)と、XXXXする手順(工程)とを具備して成る ZZZZ方法」 

(7)ソフトウェア関連特許についてのその他の留意点

A バージョンアップ前のソフト特許と、バージョンアップ後のソフト特許が、自社内で競合する場合があるので注意する。

B ソフトウェア特許における審査基準は次のとおり

a.産業上、利用可能であること−産業機械装置との関連性が求められるなど、以下に記載の「自然法則の利用性」(産業上利用性)の判断基準が、求められる。
    
審査基準による、ソフトウェア関連発明の「自然法則の利用性」(産業上利用性)の判断基準

(機縫愁侫肇ΕД△砲茲訃霾鷭萢に自然法則が利用されていること

(1)ハードウェア資源に対する制御又は制御に伴う処理を行うもの
.灰鵐團紂璽燭砲茲蠕御を行うもの
▲灰鵐團紂璽深体のオペレーションに関するもの

(2) 対象の物理的性質、技術的性質に基づいて情報処理を行うもの

(供縫蓮璽疋ΕД∋餮擦利用されていること

b.新規性・進歩性があるかどうかが問われ、次に掲げるものは、新規性・進歩性に欠けるものとみなされる。

(a)他分野への応用が利くもの。
(b)通常のシステム化手段の付加または置換が可能なもの
(c)ハードが行っている機能のソフト化がなされているもの。
(d)人間が行っている業務のシステム化がなされているもの。
(e)コンピュータ化の持つ、普通の特性を利用したもの。

C ソフトウェア出願に際しての明細書作成のための必要情報は、以下のとおり
「コンピュータ・ソフトウエア関連発明の改訂審査基準に関するQ&A」
「ビジネスモデル発明の特許明細書作成工程」
参照

■発明情報の収集工程(入力)

〔1〕要求定義の過程で作成したソフトの目的、機能、性能、環境などの決定事項を記載したドキュメント

〔2〕基本設計の過程で作成したドキュメント類、特に、プログラム用ドキュメントとしてのフローチャート、このフローチャートによるソフト実行の動作説明を特にソフトの特徴的機能を必ず網羅するように記載

〔3〕プログラム・リストは必要なし。

〔4〕出願しようとするソフトについて機能・仕様の変更がある場合は、その変更箇所を示すドキュメント

〔5〕 その他、ソフトウェアによる情報処理手段として用いられる場合等、ソフトを利用した具体例を少なくとも一つ挙げることが望ましい。

〔6〕ソフトが実現する機能を、一つずつ機能ブロック図として表現する。各機能ブロックがコンピュータのどの部分で実現されるのかも示すとよい。

■発明の分析工程  (分析)

<静的分析>
☆ソフトウェアの場合、動作手順を順次説明する。フローチャート図、タイミングチャート図で示すとよい。
<動的分析>
☆ソフトウェアの場合、静的分析で示したフローチャ-ト等から、機能ごとに「機能ブロック図」を作成してみる。

■明細書作成工程  (出力)

 ー損槊磴鯑Г泙─△任るだけ客観的な構成でクレームを記載する。
◆々柔を機能に置き換え、機能実現手段等の機能的表現でのクレームを作成する。
 前記実施例の他に機能実現手段の具体例が他にないか検討し、できるだけ多くの具体的実施例を列挙する。なお、実施例はできるだけ具体的に記載する。
ぁゝ’重クレームと構成によるクレームとの中間に位置する中間概念のクレームが存在しうるか検討する。

4.ビジネスモデル特許について

ビジネスモデル特許は、ソフトウェア特許の適用範囲が単に広がったものであり、ソフトウェア関連特許基準の特許の一部として審査される。
参考-特許庁 「ビジネス方法の特許」に関する対応方針について」
これには、コンピュータのハード資源を用いて処理が行われるもの、ソフト資源を用いて処理がおこなわれるもの、インターネットを用いて処理が行われるものなどがある。

5.その他

ハードとソフトの絡み合う微妙なゾーンである医療に関する特許の考え方について

(知的財産戦略本部医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会「医療関連行為の特許保護の在り方について」に基づく)

従来の考え方-
我が国では、従来、人間を手術、治療又は診断する方法は、特許法第2 9 条
における「産業上利用することができる発明」に該当しないと解釈することにより
特許の対象とはされていない。
これは、従来、医療業は産業ではないという実
務上の解釈や人道上の問題への配慮と解されてきたことによる。
このため、手術、
治療、診断方法のような医師の行為に係る技術のみならず、医療機器・医薬に
関連する方法の技術1についても、すべて一様に「人間を手術、治療又は診断す
る方法」ととらえ特許の対象とはならないとされてきた。

検討中の課題
1.医師の行為に係る技術を特許の対象とすることには慎重な配慮が必要である。
2.「医療機器の作動方法」と「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」とについては、特許の対象となりうるか、検討を要する。

(1)「医療機器の作動方法」
機能的MRI (f MRI )やポジトロン断層撮影装置(P E T )のように、医療機器が時系列的なステップに従って自動的に磁気発生、データ検出、対象部位の解析・
画像表示などを行う技術や、人工眼システムのように、人体内の補助・代替人工器官がリアルタイムで生体信号を検出しながら作動する技術、手術ロボットといった体内の対象部位を検知しながらマイクロメートル単位で作動する技術など、医療機器の作動方法に関する技術がある。
このため、医療機器がどのように機能的・システム的に作動するかという「医療機器の作動方法」を特許の対象とすべきであるとの考え方がある。
また、検査方法において、診断方法を構成する3 段階(.如璽深集段階、比較段階、0緡天萃蠱奮)のうち、,鉢△涼奮に留まる方法のみを特許の対象とすべきであるとの考え方がある。

(2)「医薬の製造・販売のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」
複数の医薬を組み合わせることにより、個々の医薬では得られない相乗的な効果や画期的な効能が見出されたり、あるいは投与間隔や投与量を全く従来とは異なる態様に変更することにより、従来の効果が増強されたり、副作用が軽減されるといった効果が見出される方法。
例えば、インターフェロンに、単独ではC 型肝炎ウイルスに効果を有しないリバビリ
ンを併用25すると、インターフェロン単独でも効かないような重度のC 型肝炎患者に対して画期的な治療効果がもたらされる。
また、タキソールは古くから優れた抗癌作用を有する化学物質として知られていたが、低用量で短時間の使用に変更すると、癌治療効果は維持しながら、副作用や患者の負担が軽減できる。
このため、複数の医薬の組合せや投与間隔・投与量等に特徴がある「医薬の製造・販売
のために医薬の新しい効能・効果を発現させる方法」27を特許の対象とすべきであるとの考え方が検討されつつある。

         以上
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