2004年04月22日
今年の3月24日開催された読売国際会議の開幕フォーラム「「ビジョンなき国家」克服への道」で、アメリカのパネリストである米バージニア大学準教授レナード・J・ショッパ(Leonard J. Schoppa)氏が、「終身雇用制でがんじがらめになっている日本の雇用制度を柔軟なものとするために、第二次世界大戦後アメリカが制定したGI法(The G.I. bill)的なものを、日本も制定することにより、労働市場のビッグバンを起こし、経済活性化の起爆剤にしたら」との提案があり、大いに興味をひかれた。
このGI法(The G.I. bill)(復員兵援護法)(1944年制定)は、戦後のアメリカを大いに変えたとの評価をもつ。
これは、90日間、従軍したGIに対して、失業給付金の給付と、住宅・教育資金の貸付を行うものである。
このシステムは、第二次世界大戦後のアメリカ経済を支えたといわれる。
また、退役軍人のために、「52/20 Club」(52週の失業期間において、一週間当たり20ドルが支払われるという意味)というものがあり、多くの退役軍人が、従軍前までは、一部の特権階級しかできなかった大学への進学が可能になったり、アフリカからの移民階級も、その二世も、従軍前は、限定した職にしかつけなかったものが、退役後は、民間サービス業に就職できたり、職業訓練学校に入学できたり、郊外に住宅を手に入れられたり、といった具合に、GI法(The G.I. bill)は、退役後の従軍者の戦後生活を180度変えてしまったという。
ある退役軍人は、「私にとって、GI法(The G.I. bill)は、魔法のじゅうたんのようなものでした。」と、その生活の変化ぶりを語る。
このようにして、第二次世界大戦後10年を経たころには、アメリカ人の三分の二が、自己所有住宅を有し、ホワイトカラーの数は、ブルーカラーの数を凌駕したという。
こうして、GI法(The G.I. bill)の存在こそが、アメリカの中流階級形成の原動力になったのだという。
その後、このGI法(The G. I. Bill)は、朝鮮戦争やヴェトナム戦争でも、スケールダウンはしたものの、一定の機能を有し、現在ではthe Montgomery GI Billとして、軍隊のリクルートの役割を果たしているという。
しからば、なぜ、今の日本に、このGI法(The G.I. bill)の日本的な適用が必要なのか。
一言でいえば、これによって、出入り自由な雇用環境の整備を図ろうとするものだ。
もともと、アメリカにおいて従軍をするということは、既存の雇用を一時退出しなければならないということだ。
この「既存の雇用の一時退出」ということは、日本のような終身雇用制のもとでは、すなわち、永久退出を意味することになる。
そこで、日本版GI法(The G. I. Bill)の制定によって、通常雇用の逸失期間と復帰待ち期間におけるリスクを、いろいろなインセンティブによって、補完していく必要がある。
一時退出のケースとしては、出産・転職・外国への移民・外国からの移民・スキルアップ・摩擦的失業・就業待ち などなど、いろいろなケースが考えられるであろう。
この一時退出期間の賃金保証にくわえ、復帰段階での教育制度・再訓練制度などによるスキルアップのための助成などが、考えられてくるだろう。
これによって、労働者にとって、日本国内においても、また、海外においても、転職しやすい環境がうまれやすくなる。
また、民間企業とNGOとの人事交流がしやすくなる。
それぞれのライフステージにおいて、価値観ある職場において、自己実現がしやすくなる。
さらに、これらの制度の完備により、アメリカ経済の戦後の奇跡を生んだように、消費面・雇用面・文化面などにおける波及効果とビッグバンが期待できる。
すなわち、日本版GI法(The G. I. Bill)制度が、制度それ自体の持つ意味にとどまらない、ビッグプッシュ効果を持ってくるということだ。
改革志向による「ちぢみ・萎縮効果」によっては、日本経済発展の機動力は、当分生まれ得ないことを、このアメリカの経験から学び、一日も早い日本版GI法(The G. I. Bill)制度の実現により、日本経済の復権をめざすべきである。
GI法(The G. I. Bill)については、以下のサイトを参照
http://www.nvr.org/content.php?pro=post&sec=vid&subsec=2
http://fcis.oise.utoronto.ca/~daniel_schugurensky/assignment1/1944gibill.html
http://college.hmco.com/history/readerscomp/rcah/html/ah_036500_gibill.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/G._I._Bill_of_Rights
http://www.pbs.org/newshour/bb/military/july-dec00/gibill_7-4a.html
http://discussions.seniornet.org/cgi-bin/WebX?formatToPrint@201.8MVOaHOQyZ1.0@.ee8fe0f.ee8fe0d
http://www.ohiohistory.org/etcetera/exhibits/kilroy/afterwar/gibill.html
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