Sasayama’s Weblog


2003/09/16 Tuesday

日本の中小都市へのLRT(=Light Rail Transit)導入に付いて

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:29:25

   
2003年09月16日
nullLRT(=Light Rail Transit または、=Light Rapid Transit) -新型路面電車-を、地方中小都市発展の起爆剤にしたいという地方都市が増えてきた。

「全国・路面電車ネット」
などをみても、結構、「わが都市にもLRTを」という意欲に燃えている行政マンは多いように見受けられる。

しかし、LRTを従来の路面電車と同種のものと思ってしまうと著しい勘違いとなってしまう。

http://www.lrt-utsunomiya.net/ には、LRTと他の交通機関との違いの対照表が書かれている。

「Urban Transport in France」
にみるように、LRTには、大きく5種類がある。

1.TVR(Transport sur Voie Reservé) または BRT(Bus Rapid Transit)-タイヤ式トラム。1 本のガイドレールの上を1つの鉄車輪がまたいで ガイドする方式。 Bombardier 社製。架線がなくても自走できるデュアルモード。時速70キロ、

2.Translohr-タイヤ式トラム。ガイド レールを2つの車輪が挟み込む形のもの。Lohr 社が開発。架線がなくても自走できるデュアルモード。時速70-75キロ、

3.CIVIS -ガイドとして路面にペイントされたマーキングをカメラが認識し、追尾して走る光学式ガイドウェイ・トロリーバス。動力はエレクトリック・ディーゼル兼用と、架線がなくても自走できるデュアルモード。時速70キロ、

4.CITADIS(TGA202)-架線のない区間でも最大3kmならば走行可能。Alstom社製。最大の特徴は、車両の長さが変えられることで、最小22メートルから最大60メートルにまで可変。これによって、時間帯などによるキャパシティの変化に対応できる。基本的には、30メーター車両で、定員が235人、そのうち座席が60人分。低床路面電車。時速70キロ、

5.Tram-Train -ハイブリッドをキーコンセプトにしており、路面電車(Tram)にも、鉄道(Railway)にも対応できるのがミソ。一般の軌道も地下鉄も在来線も利用できるライトレールで、国境を越えた接続や都市線からローカル線への接続などに有利。バイヨンヌ・サンセバスティアン間、バーゼル・ミュルーズ間、ザールブリュッケン・サールゲミーヌ間などで実施。電気も、15kV/750V DC の両方対応で、ボルトの違う国々で、連続して運行できる。それにとどまらず、バッテリーと電気とのハイブリッド(Battery-Aid Electric Train (BAET))、または、ディーゼルと電気とのハイブリッド(Electric-aid diesel-driven train (EADT) )が考えられている。このシステムの狙いは、新交通システムが、既存の鉄道のインフラを生かせないという弱点を、ハイブリッドのコンセプトで解消しようとするもの。時速100キロ、

このうち、1.2.3がタイヤ式、1.2が一本のガイドレール、3はトロリーバスの変形といったところで、現在日本に導入されている低床路面電車は、4であるに過ぎない。
しかも、その目的は、可変的な車両の連結にある。

こうしてみると、日本においてLRTと称せられているものとは、その社会目的も、性能も、コンセプトも、まったく異なる新交通であることがわかる。

日本においてLRTと称せられているものとは、低床のLRT車両であるLRV(Light Rail Vehicle)の導入である。

たとえば、海外からのLRVとしては、
熊本市交通局のLRV 9700形に独ドイツ・ADトランツ社(現:ボンバルディエ)(新潟鉄工所と提携) 
広島電鉄の5000形グリーンムーバ 独シーメンス(アルナ工機と協力) 
岡山電気軌道の9200型「MOMO」独ボンバルディエ(旧ADトランツ社) 
高岡市の第三セクターである万葉線株式会社に、同じく独ボンバルディエ(旧ADトランツ社)
といった具合である。

また、国産のLRVとしては、
伊予鉄道 2100形に、アルナ工機、
土佐電気鉄道(株)の100形(愛称:ハートラム) にアルナ工機、
鹿児島市交通局の1000形ユートラム にアルナ工機 
長崎電気軌道の新車両に、アルナ車両株式会社(アルナ工機の名称変更)
といったぐあいである。

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/4173/link/linkindex.htm  
http://www.railjournal.com/links/suppliers.html  参照

このように、日本におけるLRTの現状とは、既存の路面電車に低床式のLRV(Light Rail Vehicle)を導入しているに過ぎず、車社会から断絶しうる新しい都市計画の下における新交通システムとしてのLRTの導入には至っておらず、また、構想段階においても、単なる路面電車復活願望に基づくものが多いように見受けられるのは、残念なことである。

LRTが従来のチンチン電車とおおきくことなるのは、相当の高速と、相当の輸送量があるという点だ。

そこで、これらの利点を生かし、LRTによって、どのようなリンク形成したらよいかというのが、優先的な検討課題となってくる。

ここに、LRTと、BRT(Bus Rapid Transit)と、パーク・アンド・ライドとを組み合わせたルート作りの例がある。

Tuscon Linkは、アメリカ・アリゾナ州のタスコンにおける延長13マイルにわたるLRTのルートの例である。

Hiawatha プロジェクト は、アメリカ・ミネソタ州Hiawatha市の、パークアンドライドとLRTとを組み合わせた線状リンクの例である。

これ は、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンジェルス市の、地下鉄とLRTとの相互接続ルートの例である。

また、フランス・ストラスブルグでのTram-TrainによるStrasbourg-Bruche-Piémont 間のプロジェクトでは、既存の国有鉄道網(Réseau Ferré National )やトラムウェイとの接続が構想されている。

そのほか、LRTのルートには、環状のもの、線状のもの、いろいろあり、さらに、LRTとリンクする交通機関にも、いろいろな組み合わせが見られる。

日本の場合、多くの中小都市が直線上の都市形成となっている以上、環状リンク形成のためには、相当規模の都市集積がなければならないだろうし、線状リンク形成のためには、都市群の連担都市化によるリンク形成が必要であろうし、この場合は、周辺都市を巻き込んだ構想でのリンク形成を考えなくてはならない。

このように、LRT導入の究極の目的が、チンチン電車の復活なのか、新交通システムの一部としてのLRT導入なのか、どちらかなのかによって、その実現へのアプローチはかなり変わってくるのではないだろうか。

参考リンク

Light Rail, Tramway, and Urban Transit Links
Links To Important International Rail Industry Information
Picture files on Light Rail Transit-1-
Picture files on Light Rail Transit-2-
Picture files on Light Rail Transit-3-
LRTとは
次世代路面電車
LRTに見るくふう
LRT導入の意義と問題点
まちづくりと連携したLRTの導入
公共交通分野における、新しい都市交通のかたち
機能面から見たLRTの類型
LRTとは
LRTについての論点整理 
LRTって何だ?
LRTの特性
東京の交通体系を見直す
新交通システムLRTとは
ひょうごLRT整備基本構想
マルチモーダル施策と公共交通
路面電車とLRT
LRTの導入に向けての課題と提案
都市鉄道の整備水準評価と整備のあり方
新たな公共交通機関LRT
LRTの現状と、東京への導入の可能性について
<都市交通>LRTが日本をかえる
LRTの優位性
江東区LRT基本構想策定調査報告書
ストラスブールにおけるLRT導入の効果
都市交通における路面電車の再評価 
LRT導入パターン毎の事例研究一覧 
欧州LRT参考資料 
チューリヒにおけるLRTシステム成功の秘訣 
トラム導入に向けた法整備及び国会LRT研究会の動き
LRTさっぽろ
トランジットモール社会実験
次世代路面電車(LRT)による枚方のまちづくりを推進する会
LRD計画
日本の間違った都市計画
シンガポールの公共交通政策
マルチモーダル施策
セントルイスにおけるLRT(ライトレール)に関する投資分析調査と合意形成
陸上交通システム製品と将来の展望
EUの公共交通
SIEMENS JAPAN 交通システム
クアラルンプールの新公共交通網案内
現代アメリカ都市計画におけるトランジット・ビレッジの位置づけ
公共交通の活用事例:ポートランド編
ライトレールシステムの導入評価に関する研究
国境を越えるネットワークの発展
オランダにおける路面電車の100年
アメリカの交通体系と土地利用計画
費用負担の関係を考慮した公共交通整備財源制度に関する研究
路面電車について
世界路面電車めぐり

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