2005/04/13(Wed)
どうも、日本人の性格として、国際基準などとなると、律儀に守らなければならないような感じにとらわれるのだが、OIE基準をめぐる輸出国・輸入国の思惑は、もっと娑婆臭いものようだ。
で、OIE基準、輸入国安全基準、輸出国安全基準、SPS協定、この四者の相互関係を見てみると、次のようになるのだろう。
まづ、安全に対する厳しさの度合い順にならべてみると
輸入国安全基準 > 輸出国安全基準 > OIE基準
という順番は、大方はなるだろう。
となれば、輸入国の思惑としては、安全基準が、実質、隠された貿易障壁として機能するためには、OIE基準ができるだけ厳しくなって、「輸出国安全基準の底上げをはかる効果」を持たせたほうが好ましい。
輸出国の思惑としては、OIE基準ができるだけ緩やかになって、「隠された貿易障壁が低くなり、輸出マーケット拡大に資する効果」を持たせたほうが好ましい。
そこで、SPS協定の登場なのだが、
「輸入国安全基準 マイナス OIE基準」の安全度の差の評価について、輸入国・輸出国の思惑として、
「危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠」が輸出国から提出されていない場合には、「第五条 7」にもとずいて「暫定的に衛生植物検疫措置を採用」と、輸入国は、WTOの場で、主張することができるが、
「危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠」があると、輸出国が主張している場合には、「第二条 2」にもとずいて「衛生植物検疫措置を、(中略) 十分な科学的証拠なしに維持しないことを確保する。」ことに違反していると、輸出国は、WTOの場で、主張することができる。
つまりは、 OIE基準をより低い安全水準にしたほうが、「輸入国安全基準 マイナス OIE基準」の安全度の差の評価についての「科学的証拠」が立証不可能の差にまで拡大させることになり、輸出国は、「第二条 2」にもとずいた「イチャモン」を、輸入国に対してつけやすいというわけだ。
こうなると、ほとんどの農産品を輸入に依存しなければならない日本としては、国際安全基準をめぐっては、つねに、牛肉と同じような立場に立たされていることになりますね。
たとえば、すでにパネル紛争になっているアメリカ輸入リンゴの火傷病問題をめぐる紛争
http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j050.html#_Toc483278843
がいい例ですね。
アメリカ牛肉問題の帰結は、日本の食料自給率の向上こそ、根本の解決策となるようです。