Sasayama’s Weblog


2004/12/30 Thursday

国連対アメリカの「けち(stingy)」論争

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 07:36:00

  
2004/12/30
ことの発端は、月曜日の国連緊急援助調整官室(OCHA)のイゲランド(Jan Egeland)室長(事務次長)の記者会見に始まった。
サイトhttp://edition.cnn.com/2004/US/12/27/un.tsunami/ にその概要があるが、この席で、イゲランド室長は、津波被災国に対する援助について触れたくだりで、次のような発言をした。
「もし、実際、多くの国の対外援助額が、国民総所得の0.1パーセントから0.2パーセントであるならば、私の思うに、実際、それは、けち(stingy)であると思う。私には、それは、決して、気前のいいものとは、思えない。」
この発言が、既にその前に、津波被害国に対して、一千五百万ドルの援助を発表していたアメリカを、刺激した。
アメリカの現在の対外援助額は、DDP対比では、0.13パーセントである。
しかし、この数字には、イラク・アフガニスタンへの対外援助額は含まれていない。
国連は、各国の国内総生産に対する対外援助比率を、0.7パーセントにあげるように説得しているが、この水準に到達しているのは、スカンジナビア諸国など、一握りのヨーロッパ諸国に過ぎない。
このイゲランド室長の発言は、アメリカを名指ししたものとして、パウエル国務長官は、翌火曜日に、当初の援助額に加えて、追加の支援を、記者団に対して約束した。
また、ブッシュ大統領は、イゲランド室長の「アメリカ・ケチ発言」に対して、名指しを避けながら、「そのような発言をする人は、間違いであり、誤った情報の元の発言である。アメリカは、気前がよく、心優しい国である。」とコメントした。
ワシントンポスト紙は、ブッシュ大統領が、この危機の時に、テキサスの牧場で、クリスマス休暇を取っていないで、世界の先頭に立つべきとの論説を張った(Aid Grows Amid Remarks About President’s Absence By John F. Harris and Robin Wright 2004/12/29)が、大統領側近は、「クリントン前大統領が、天災の後に、カメラの前で、感情を込めてやったような(”Actions speak louder than words,”)パフォーマンスは、ブッシュは踏襲しない。」としている。
その後、イゲランド室長は、29日になって、「あの発言は、アメリカなどの特定国を指したものではない。」とのコメントを出した。
火曜日になって、アメリカの国際開発庁(Agency for International Development)は、津波援助として、二千万ドルの追加を発表した。
こうして、アメリカの津波援助額は、合計三千五百万ドルになったわけだが、これは、イゲランド室長の「アメリカ・ケチ発言」の効果と見ていいだろう。
ただし、アメリカが、あといくらの追加をするのか、その金額については、まだ明言していない。

追記(2005/01/01)
続く「アメリカはケチか?」論争

この問題については、その後も、サイトhttp://www.csmonitor.com/2004/1231/dailyUpdate.html などで、今回、国連の緊急援助調整官室(OCHA)のイゲランド(Jan Egeland)室長(事務次長)が提起した、富裕国ケチ論についての、米国各誌の論調を比較して伝えている。
ニューヨークタイムズは、木曜日の「Are we stingy? Yes 」との社説で、「その通りケチである。」との論説を展開した上で、共和党がブッシュ大統領就任祝祭イベントに使う予算の半分以下の援助しか、世界最大の富裕国アメリカができないことについて、疑問を呈している。
これに対して、ワシントンタイムズ紙は、「Odious tsunami politics」との論説で、ニューヨークタイムズ紙とイゲランド(Jan Egeland)室長は、高望みの楽観主義者であるとしている。
つまり、天災をネタに、関係国債務の逓減をさせようという政治的アジェンダを推進しようと、意図しているとしている。
これは、天災による死者への冒涜であるとしている。
しかし、ロサンジェルスタイムズは、「Stingy? Depends who’s counting」との論説で、ソンニ・エフロン氏は、ケチかどうかは、そのカウントの仕方によるとしている。
すなわち、総額で見れば、アメリカは、世界第一の援助国ではあるが、アメリカ国民一人当たり、または経済の富裕度に対しての援助額ということになると、アメリカは、世界で、もっとも気前が悪い国であるということになるとしている。
デトロイトニュースは、「Be Generous Disaster is no time for tempered U.S. response 」との論説で、この見解に賛同する形で、今回、もっとも被災を受けた国であるインドネシアは、世界でもっともイスラム教徒の多い国であり、その国でのアメリカの信頼回復ができるかどうかは、大切な問題であるとしている。
しかし、フィナンシャルタイムズ紙は、「US sees chance to revive ties with Asians」との論説で、たとえ、これらの国へアメリカが援助の手を差し伸べたとしても、アメリカのイメージの失墜は取り戻せない、としている。

バンコクにある米国空軍のデーブ・モブレイ中佐は、「ブッシュ大統領は、今週、津波問題に対して、反応が遅く、しかも、わずかな反応しかせず、この問題について、当初玄関払いしてしまった。今、望むことは、大統領が、この問題について、世界のリーダーシップをとることである。そして、この機会に、世界のイスラム教徒からの信頼回復にとめるべきである。」と、いっている。

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