Sasayama’s Weblog


2004/11/27 Saturday

個人住民税の段階廃止は、高所得者優遇につながりかねない。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 07:29:48

  
2004/11/27
国から地方への税源移譲のために、個人住民税について、現在5−13%で3段階に分かれている税率を10%に一本化して増税するとのことである。
一方、所得税の減税方法については(1)10、20、30、37%の4段階の現行税率を5%からの最高税率40パーセントもありうる5段階に変更(2)子育て支援に力点を置いた人的控除の拡充などを狙っているという。
しかし、待ってください。
ここで、表面的な税率論議ではすまない問題がありますね。
所得税と、住民税とで、絶対的に違うのは、皆様ご存知の通り、所得税と住民税では所得の控除額が異なるので、サラリーマンの場合、源泉徴収票の控除額を住民税の控除に置き換えることになりますね。
このサイトのように、所得税で、270万円の控除があった人は、住民税では、224万円、といった具合にですね。
で、この金額を給与所得から差し引くと、住民税の課税標準額が決まります。
これまでは、この課税標準額を、たとえば、200万円まで、700万円まで、700万円超など、三段階区分で、区や市町村によって異なりますが、5、10、13%の3段階などの三段階の税率と、ゼロ、10万円、31万円などの三段階の速算控除額がありました。
これが、今度は10%に一本化するということですね。
速算控除額がどうなるかは、分かりません。
所得税の五段階税率区分は、まだ、はっきりしていませんが、住民税が一段階、所得税が五段階ということですから、これまでの住民税の課税標準額が700万円未満の層で、新しい所得税区分の5段階のどの層に属するかによって、住民税が増税になっても、所得税のほうで減税の恩典を受ける層と、所得税の恩典をそれほど受けないで、住民税のほうで、増税にあってしまう層との分離が生じてしまうことになりかねませんね
さらに、問題は、そもそも、この住民税計算の基礎となる所得金額についてです。
所得税の世界の控除が、住民税の控除と実質ほとんど連動しているのは、おかしいことなのではないのか、ということです。
所得税と住民税との控除額が同じなのは、社会保険料控除・小規模共済等掛金控除・雑損控除・医療費控除 です。
所得税と住民税との控除額が違うのは、基礎控除、障害者控除、特別障害者控除、老年者控除、寡婦控除、特別寡婦控除、寡夫控除、 配偶者控除 (同うち同居特別障害者控除)扶養控除 (同うち同居特別障害者)特定扶養控除 (同うち同居特別障害者)老人扶養控除 (同うち同居特別障害者)同居老親等扶養控除 (同うち同居特別障害者)生命保険料控除 (限度額)損害保険料控除 (限度額)です。
また、住民税では年少扶養控除の制度がなく、一般の扶養控除として扱います。
さらに、住民税の寄附金控除の対象となる寄附金は、所得税よりその範囲が狭く、また、控除可能な寄附金額は、住民税では10万円を超えるものですが、所得税では1万円を超えるものとなっています。
しかし、上記の控除額は、所得階層如何によって、ほとんど差のない控除額です。
所得階層あるいは、保有資産によって、控除額に大幅な差が生じるのは、損益通算制度というものです。
所得金額は、収入金額−必要経費ですね。
この必要経費にカウントできるのは、サラリーマンでは限られてきます。
せいぜい、災害・盗難等により損害を受けた場合の雑損控除くらいのものです。
ところが、損益通算制度というものは、これらの小さな控除額の積み重ねを吹っ飛ばすぐらい、節税に威力のあるものです。。
たとえば、給与所得者が、アパートなどを持っている場合、そのアパートの年間の償却費や、土地取得を除く借り入れ金の利子や、それにかかわる固定資産税までを、アパート収支の総合の中で、丸々、経費に算入でき、それが赤字になった場合には、所得税の計算の中で、所得からごっそり差し引くことができるという制度です。
償却は、原則定額ですが、税務署に申請すれば、その翌年度から、定率も可能です。
この制度は、平成16年度から、居住用資産を譲渡して発生した損失についても、適用できるようになっています。
これは、○「居住用資産の購入価格から経過した減価償却費を差し引いたものと、資産処分価格との差」、または、○「資産譲渡直前での住宅ローンの残高と、資産処分価格との差」の、いずれか少ない額を、譲渡損失として、他の所得から差し引くもので、一年で控除しきれない分は、以後三年にわたって、控除可能というものです。
そして、そのごっそり差し引かれた所得に基づいた所得税計算を元に、住民税がカウントされるというわけですね。
つまり、損益通算が、結果的には、同じルールで、住民税の世界にも、通用してしまっているということです。
逆に言えば、所得税の控除対象を多く持つ所得階層ほど、住民税の世界でも、課税標準額計算において、有利に働く。ということになりますね
こうしてみると、地方に住む個人の懐勘定から見れば、個人のトータルの税負担の中で、国税から地方税への税負担の移譲が、スムーズに、そして公平に行われるかといえば、必ずしもそうではないことに気づかれるはずです。
個人のトータルの税負担から見た「国から地方への税負担移譲」問題というのも、ここらで、専門家を交えて、ヨーク検証してみる必要がありそうな感じがしますね。

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