Sasayama’s Weblog


2004/08/29 Sunday

「思いやり予算」を英語で言うと?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:25:21

H16.08.29

近頃、やたらと目につく『思いやり予算』なる言葉だが、「何が思いやりなの?」と子供から真顔で聞かれると、はたと困ってしまう概念の言葉だ。

「思いやり」予算という言葉は、一九七八年六月、金丸信防衛庁長官がブラウン米国防長官との会談で、「日米関係をより強固なものにするために思いやりの精神で駐留費の分担に応じる」と約束したことから、こう呼ばれるようになったのだが、それにしても、アメリカ人にとっては、分かりにくい言葉だろう。

サイトhttp://www.gwu.edu/~nsarchiv/japan/smith_wp.htmは、そのへんのことについて、明快に答えてくれている。

思いやり予算を英語で言えば、『Compassion Budget』(同情予算)または『Generosity Budget』(寛大予算)あるいは、『Condolence Fund』(義援基金)というのだが、アメリカサイドでは、これを“Host Nation Support”(HNS Budget)(駐留軍受け入れ国支援)と、呼んでいる。

この言葉なら、分かりやすい。

http://www.g2mil.com/June2003.htmに見るように、世界のどの国も、Host Nation Support Activity の一環として、直接アメリカに、費用を提供している国はない。

で、どうして、こんな『思いやり予算』などという、分かりにくい言葉になってしまったのか。

上記サイトでは、金丸さんが野党説得のために、「日本の野党も、米軍に対して思いやりの精神を持って、このような予算をつけるのを許してくれ」という、野党の情をほだす意味の言葉を使ったのだとしている。

なんのことはない、「米軍基地に反対する野党が、それにもかかわらず、思いやりの精神を発揮して、(「沖縄の基地関係の日本人の利害にも影響するのだから」と、金丸さんが言ったかどうかは分からないが)予算措置をとるのをみとめてくれ。」という意味だったのだろう。

いわば、『野党の米軍に対する思いやり』の要請という意味だったようだ。

まあ、米軍基地に反対する野党にとって見れば、「同情」という言葉で、米軍に対する優位感をくすぐる言葉であったに違いないが、対する米軍にとってみれば、同情される意味合いがまったく分からなかったであろう。

いかにも、野党との「なぁなぁ構図」を得意としてきた金丸さんらしい言葉なのだが、55年体制の残滓として、この言葉が今も使われているというわけだ。
今回の思いやり予算の見直しをきっかけに、このような曖昧語にも、別れを告げる時代なのではなかろうか。

参考

1.思いやり予算の裏舞台

「1978年初頭から、金丸防衛庁長官は、野党党首に対して、思いやりの精神を持って、米軍基地施設改善のための予算配分拡大に力になってもらうよう、支持を求めるための根回しを始めた。」

In early 1978 Kanemaru Shin, then Director General of the Defense Agency began a process of consultations with opposition party leaders that appealed for their support to consider expanding budgetary allocations for improving US facilities in the “spirit of generosity ” [omoiyari no seishin de].

2.日米地位協定(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)全文

3.日米地位協定

第二十四条

1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。

2 日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む)をこの協定の存続期間中。
合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。

3 この協定に基づいて生ずる資金上の取引に適用すべき経理のため、日本国政府と合衆国政府との間に取極を行なうことが合意される。

4.日米地位協定合意議事録

第二十四条

この協定のいかなる規定も、合衆国がこの協定に基づいて負担すぺき経費の支出のため、合衆国が合法的に取得したドル又は円資金を利用することを妨げないものと了解される。

5.日本での米軍基地におけるHost Nation Support についてのアメリカ側の考え方

6.在日米軍駐留経費負担(いわゆる「思いやり予算」)実績推移

7.SACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費実績 165億円

No Comments

No comments yet.

RSS feed for comments on this post. | TrackBack URI

Sorry, the comment form is closed at this time.