2010年3月22日
新しい通信手段ができるたびに、そのメディアと著作権との関係が問題になるのだが、今全盛のツイッター(Twitter)も、その例外ではないようだ。
ツイッターをマイクロ・ブログと考えた場合、ブログと同様の著作権が発生するとみなす意見の一方で、ツイッターの著作権問題は、現在の著作権とはなじみにくい、との意見もあるようだ。
Facebookについても同様の見解があるようだ。
ツイッターの140文字数の作品はcopyrightableなのか?
問題は、ツイッターの限られた140の文字数に、どの程度の著作権の侵害性を認めるか、copyrightableであるかuncopyrightableであるかどうか、という問題に尽きるようだ。
Jeffrey Zeldmanの意見『You cannot copyright a Tweet』では、「Copyright Protection Not Available for Names,Titles, or Short Phrases」で見る限りにおいては、『ある一定量のボリュームの文字・絵画・音楽・図形をふくむ作品』となっているもの、としている。
これに対し、『Copyright of Twitter posts in practice』では、Jeffrey Zeldmanに対し、著作権の適用には、文字数の少なさは関係ないとの反論を試みている。
また、「Is a Twitter Tweet Protected by Copyright?」では内容次第という見解を述べている
すなわち、ヘミングウェイがTwitterを使った場合、ヘミングウェイの言葉「”For sale: baby shoes, never worn.” 」(売ります:赤ちゃん用のくつ。未使用)なら、充分、著作権法の対象になるとしている。
また、Ashleigh Brilliantの17文字からなる警句集も裁判でcopyrightableと判断されたように、著作権法の対象になりうるとしている。
文字数の少なさについても、HashTagを使えば、特定の著作物の全文をTwitterで流すことも出来てしまうので、ひとつのツイッターの文字数で、著作権侵害の程度を測ることはできないとする見解もある。
ツイッターは、フェア・ユースの対象となるのか?
アメリカの場合には、”commentary on an underlying work”など、一定の条件の下、フェア・ユースとして著作権除外が認められている。
このことから、このサイト「Twitter and Fair Use」では、ツイッターへの著作権適用は難しいとの見解を述べている。
一方で、このサイト「Are Tweets Copyrighted ?」のように、「ツイッターは、フェア・ユースの対象とならない。」との意見もあり、ばらばらである。
オリジナリティのあるツイッターとオリジナリティのないツイッター
俳句や短歌などは、文字数は少ないが、オリジナリティはあるわけで、その故に著作権で守られる意義はある。
しかし、ツイッターという思いつき文字の羅列が、著作権で守られるべきオリジナリティのレベルに達しているかといえば、俳句や短歌とは同列にはできないという見解がある。
特に、ツイッターの場以外で、一定の業績を上げている著名人などの場合は、訴訟要件を構成しうるものとして、該当するようだが、一般人の場合には、難しいものとされているようだ。
第一、毎日のツイッター発言について『この発言には、著作権があります』と書き込めるシステムに、ツイッターは、なっていない。
しかも、ツイッター発信は、発信元であるアカウントの持ち主の恣意性に任されている。
もし、アカウントの持ち主が有名人であって、自ら放つツイッター発信に対して著作権侵害の怖れがある場合は、自己責任において、ツイッターを削除するか、あるいは、アカウントを削除すればいい。
しかし、たとえ、訴訟対象となりえても、それに対する対抗措置としては、サービスの停止措置を要求するにしても、タイムラインでツイッターが絶えず流れている以上、その停止は難しいものとされている。
また、ツイッターのもつ有力な機能として、「返信」「リツイート』という機能があるが、ここで、すでに不法な「さえずり」が、リンク交換で、転々すると、著作権の侵害がつづけられるということになりうる。
この場合、オリジナルなツイッター者が、その不法侵害性を訴えてみたところで、実質的には、その訴えは、不可能ということになってしまう。
特定のツイッターを収集し、他の媒体に纏め上げた場合
特定のツイッターを収集し、一定のボリュームに他の媒体に纏め上げた場合には、そこに、著作権が発生する、という見方がある。
たとえば、David Pogueが書いた「The World According to Twitter 」は、多くのTwitter例を集めたものだが、これなどは、著作権法の対象になるとする意見がある。
最近日本でも、一部商業新聞(3月16日夕刊フジ)が、特定政治家のツイッター集を無断で紙媒体である新聞に掲載したが、このような場合には、当然、著作権を主張されるであろう。
いわゆる有名人のツイッター集なるものが他の媒体で編集された場合には、差し止め請求はできるのかもしれない。
その他の問題
ツイッター上において、不法ダウンロード・サイトのリンク交換がおこなわれる危険性もありうる。
著作権以外のツイッター上における法的侵害問題については、名誉毀損問題や商標侵害問題などがある。
今後の展望
ツイッターのコピーがcopyrightableであるかuncopyrightableであるかどうか、という問題については、今後、個々の訴訟において示される司法見解に待つしかない。
その意味では、Kyle-Beth Hilfer が『Tweet Tweet The Rockin’ Copyright Debate』で述べているように、事実集約的プロセス(fact-intensive process)において、ツイッターのコピーがcopyrightableであるかuncopyrightableであるかが決定されていくと見られる。
したがって、それらの司法見解が一定の定着を見るまでは、あらゆる可能性を予測した対応が望まれるというしかない。
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