2010年3月14日
昨年のG20ピッツバーグ合意にもとづき、WTO関係国閣僚会議は、今月末に、関税引き下げなどについての幅広い取り扱いを決めるために開催の予定であるが、ここにきて、いよいよ高まる世界の保護貿易主義やアンチ・グローバリズムの高まりの中で、はたしてピッツバーグ合意が今年中に果たされうるのか否かについての楽観論・悲観論が織り成す状況となっているようだ。
前のWTOの事務局長だったニュージーランドのファルコナー氏によれば、WTO合意は80パーセントはできていて、残りの20パーセントに厄介な問題があり、その多くは政治問題なのだという。
「多くのマラソンランナーは、残り最後の数キロメートルのところで失敗する」と彼は言う。
オーストラリアのAnthony Byme氏は「ラミー事務局長が年初以来いっている2010年内合意は達成可能であり、残された問題は、特別セーフガードの問題やら関心品目の問題、そして、関税率割り当て創設問題や綿花問題などごく一部の問題のみである。2013年までに、輸出奨励金全廃を政策の優先順位にすればいい。」という。
一方、これらの楽観論の一方で、悲観論もある。
イリノイ大学のRobert Thompson氏は「今年中のドーハラウンド合意は、不可能で、2011年または2012年中合意も、難しい。最大の問題は、高まる失業率で、これらの経済問題が解決を見るには、2013年まで、WTOドーハラウンド合意は、難しい。」という。
これらの楽観論・悲観論に共通することは、表面的にするか実質的にするかの違いはあるにせよ、2013年を最終合意年にするという暗黙の合意にも見られる。
ここにきて、先週水曜日に、ラミー事務局長がアメリカのガイトナー財務長官などと会ったことが、いろいろな憶測をよんでいる。
一方で、アメリカは、二国間(バイ)での貿易協定の締結を加速させている。
棚上げ中のコロンビア、パナマ、韓国とのFTA締結議会承認を加速させる動きも、アメリカ議会に見られる。
オバマ大統領が、この木曜日での演説で強調したのは、この五年間で輸出を倍増させるという強気のものであった。
しかし、これらの動きにもかかわらず、議員の動きは、鈍いようだ。
これらの動きを加速させようと躍起になればなるほど、ブーメランのごとく降りかかってくるのが、アメリカ国内の労働問題であるからだ。
上院議員のグラスレー氏は、次のように語る。「貿易問題が次なる問題に発展するようなうちは、われわれは、貿易問題を論じない。」
参考
「CORRECTED - UPDATE 1-Deal in WTO Doha round doubtful in 2010 -USTR Kirk」
「U.S. Nears a Crossroads on Trade」
「US views Doha framework as ‘not satisfactory’: lawmaker」
「WTO says ‘too early’ for ministers to meet on Doha」
「Doha derailed until 2013, says US」
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