2010年1月25日
ロストーの発展五段階説(「伝統的社会」→「離陸のための準備段階」→「離陸」→「成熟化へのドライブ」→「大量消費時代」)は、いわば、右肩上がりの離陸論であった。
そして、このロストーの理論どおり、世界経済は、G5国(イギリス→アメリカ→フランス→ドイツ→日本)をリーダーに、次々と、ロストーの予言したテイク・オフを果たし、そして、持続型の水平飛行に入っている。
しかし、ロストーは、この水平飛行から、再び、着陸するシェーマまでは、見通せていなかった。
かねてから、ロストーの発展理論(Rostovian take-off model)に対しては、二つの指摘があり、そのひとつはlinear systemのもとで、発展をとらえており、non-linearityによる発展の失敗を捕らえていないということ、もうひとつは、大国にのみ当てはまりうる理論であると言うことのようである。
つまり、大衆消費社会の爛熟後の遷移(“transition”)までは、見通せていなかったということが言えそうだ。
しかし、見事テイクオフし、今日までどうやら持続的水平飛行を果たしてきた日本の『失われた20年』の惨状を見ていると、私にとっては、『ロストーの発展五段階説を超えた可逆的なシェーマやシナリオ』が必要なのではないかと、思いたくなるのだが。
つまり、その着陸先は、もともと、飛び立った離陸時の段階に再び着陸というのではなく、それとは、異次元での着陸先ということになりそうなのだが。
経済成長という価値観やGDP世界第二位という価値観などとトレードオフしうる新たな価値観とのコンバーター回路がそこに必要ということになる。
経済学には、開発理論はあっても、経済発展成熟後の持続可能理論についての予言は、環境関係の理論以外には、見当たらない。参考「エントロピー派経済理論の私的整理」「環境経済学の種類」
しかし、エントロピー理論だけでは、解決できないものがそこにあると思われるのは、私だけであろうか。
ひとつの着陸先としては、『経済は収縮するが、高質化する。』という着陸先であり、『人口は、社会的にも出生的にも、矮小化するなかで、パー・キャピタでの快適性は、保たれうる。」という着陸先であり、といった具合である。
また、グローバル化のスキームの後に、どのような差別化のスキームが確立しうるのか、ということにもなるのかもしれない。
さらに、経済成長をドライブする技術革新ではなく、他の価値観をドライブする技術革新の出現というシナリオも考えられる。
あるいは、地域経済なり地方都市を、生命系やクラスターになぞらえて、その内発的かつ持続的発展力を醸成するというような、ジェイコブスの考えに似た地域発展戦略といったものも、考えられるであろう。参考「ヨーロッパのアメニティ都市」
それらの、ポスト・ロストーの進路については、『THE GHOST OF ROSTOW』に、ちょっとだけ触れられているようなのだが、
この新しいパラダイムを見つけうれば、何も、衰弱国家は、責任逃れのための、たとえば、少子化対策といったごときの、その場しのぎの「ないものねだり」をする必要はないというわけなのだが。
つまりは、コンパクト・シティならぬコンパクト・ステート・ニッポンとなるための立国デザインの構築が必要というわけなのだろう。
果たして、どうなのだろう?
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