Sasayama’s Weblog


2009/10/31 Saturday

新型インフルエンザ・ワクチン接種は、実質、法定接種なのではないのか?

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2009年10月31日
 
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10月27日に閣議決定した「新型インフルエンザ対策特別措置法案」ならびに「独立行政法人地域医療推進機構法案」による措置のポイントは、新型インフルエンザ・ワクチンの接種が予防接種法に規定されてる「二類疾病」接種に入っていないことによる措置だ。

「二類疾病」接種に準じるセーフティー・ネット

現在、65歳以上の季節性のインフルエンザワクチン接種は、予防接種法に規定されてる「二類疾病」接種である。

一方、今回の新型インフルエンザ・ワクチン接種は、予防接種法に規定されてる「二類疾病」接種措置の埒外にある任意接種である。

しかし、任意接種ではあるものの、国の事業として医療機関に委託して実施する以上、接種行為に起因する被害も救済する必要があるとし、「二類疾病」接種とイコールフッティングにするために、「二類疾病」接種に準じるセーフティー・ネットを、今回の「新型インフルエンザ対策特別措置法案」ならびに「独立行政法人地域医療推進機構法案」の二法案によって、措置するものである。

一類疾病と二類疾病との違いは

では、そもそも、現在の65歳以上についての季節性インフルエンザ・ワクチン接種が、どのような過程で、予防接種法に組み入れられてきたのだろうか。

予防接種法第二条三項において、「二類疾病」(個人の発病又はその重症化を防止し、併せてこれによりそのまん延の予防に資することを目的として、この法律の定めるところにより予防接種を行う疾病)として、インフルエンザは規定されている。

一類疾病と二類疾病との違いは、

一類疾病に対する接種は、集団予防目的であり、国民に予防接種を受けるよう義務付けが規定されている法定接種である。

これは、さらに、定期接種(一類)と臨時接種とに分けられうる。

二類疾病に対する接種は、個人予防目的であり、国民に予防接種を受けるよう義務付けが課せられていない非法定接種である。

任意接種と一般的に言っているが、やや、この区分には、グレーゾーンがあるようだ。

つまり、任意接種には、法律に基づかない任意の予防接種もあるが、この二類疾病に対する接種は、強いていえば、法律に基づいた任意の予防接種ともいえるのだが—

だから、接種の義務を伴わないにもかかわらず、65歳以上の対象者には、毎年、季節性インフルエンザのシーズンになると、9月中旬あたりに、公的機関からの通知がくるということだ。

二類疾病に対する接種は、さらに、定期接種(二類)と臨時接種とに分けられうる。

任意接種というヌエ的概念が生まれていく過程

問題は、接種の義務付けが課せられていない二類疾病の接種に対しても、一類疾病に対する接種同様のセーフティーネットが、どうしてもうけられているのか?ということなのだが。

それは、日本のインフルエンザ・ワクチンの任意接種のヌエ的歴史に立ち戻ることになる。

すなわち、

1962年に、厚生省が都道府県知事に勧奨を通知したことにより、インフルエンザワクチンが勧奨接種に組み入れられ、学校での集団接種が始まった。

1967年に、インフルエンザワクチンの接種年齢を三歳以上との勧告が出された。

1972年には、インフルエンザワクチンが、HAワクチンに切り替えられた。

1976年の予防接種法の改正によって、インフルエンザワクチンは、臨時接種(臨時の義務接種)とされた。

1979年には、群馬県前橋市で、1人の児童がインフルエンザワクチン接種後に痙攣を起こしたが、国は、それが副作用であることを認めなかったため、前橋市医師会は、1980年から集団接種停止を決めた。

1987年には、インフルエンザワクチン接種率の著しい減少もあり、保護者の同意を重視する実質的任意接種となった。

2001年に、予防接種法の改正で、現在の一類疾病と二類疾病との仕分けができ、二類疾病に、高齢者のインフルエンザが含まれることになった。

この一連の歴史を見ると、実質、任意接種であるにもかかわらず、二類疾病である65歳以上高齢者に対して、一類疾病に対する接種同様のセーフティーネットが設けられているのは、インフルエンザワクチンの副作用についての訴訟が、今後あるかも知れないことを想定しての、、ある種の行政責任回避の担保であるとも見て取れる。

ワクチン訴訟の相手は、新三種混合(MMR)ワクチン大阪訴訟に見るとおり、ワクチンを製造した法人に対するものと、国の法人への指導監督義務違反についてのものがあるが、それ以外に、国の不作為に対する国家賠償法に基づく、責任の問い方もありうる。

今回の「新型インフルエンザ対策特別措置法案」ならびに「独立行政法人地域医療推進機構法案」によって、実質、新型インフルエンザワクチン投与が、二類疾病とイコール・フッティングでのセーフティー・ネットが整備されたとしても、この、もともとの、実質、任意接種であるにもかかわらず、65歳以上高齢者への季節性インフルエンザワクチン接種について、二類疾病として、一類疾病に対する接種同様のセーフティーネットが設けられてことについての、任意接種という言葉のヌエ性を払拭することはできないわけである。

法律に基づく任意接種と、法律に基づかない任意接種との混在

平成十二年十一月三十日中川智子議員提出質問趣意書
インフルエンザ予防接種の問題に関する質問主意書
に対して、当時の厚生労働省は、平成十三年一月二十三日(内閣衆質一五〇第七〇号)において、次のような答弁をしている。

「第百四十七回国会に提出した予防接種法の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)においては、御指摘のとおり現行の予防接種の対象者に課されている予防接種を受けるように努める義務を二類疾病に係る定期の予防接種の対象者には課さないものとしており、この点については法律に基づかない任意の予防接種との違いはない。
しかしながら、平成十二年一月二十六日付けの公衆衛生審議会の意見において「高齢者を対象としてインフルエンザの予防接種を行うため、予防接種法の対象疾病にインフルエンザを追加するべきである。」、「市町村が実施しやすく、被接種者や接種医が、安心して、接種を受けやすくまた接種することができるように、定期の予防接種としての体制を活用していくべきである。」等とされていること、健康被害が生じた場合に公費による救済制度を設ける必要があること等から、法案においてはインフルエンザを二類疾病として位置付けることとしたものである。
中略
予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)においてどのような疾病を二類疾病として位置付けるかについては、各々の年齢層において等しく感染又は発病する可能性がある疾病のうち予防接種の安全性及び有効性が確認されているもの(一類疾病を除く。)の中から、当該疾病の発生予防や公費による健康被害救済の必要性等を総合的に勘案して選定されることになると考えている。
中略
法案は、高齢者を対象としてインフルエンザの予防接種を行うことを目的として、予防接種法の対象疾病にインフルエンザを追加すること等を内容としていたものであり、政府として、同法に基づき児童に対してインフルエンザの予防接種を行うことは考えていない。なお、現行の予防接種法に基づく予防接種の実施に当たっては、市町村等に対して各医療機関で行う個別接種を原則とする旨の技術的な助言を行っているところであり、インフルエンザが同法の対象となった場合にも、個別接種を原則とする旨の徹底を図っていく考えである。」

任意接種という概念が国の責任をあいまいにしている

ここで、重要と思われるのは、次の箇所である。

政府として、同法に基づき児童に対してインフルエンザの予防接種を行うことは考えていない。」

この点に、実質,法定接種的であるにもかかわらず、任意接種であると言い切らねばならない、国の苦しさが見える。

また、今回の法改正が、単に、予防接種法第二条三項の改正では、済まされえない、隠されたドミノへの国のおそれの存在がある。

今回の「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案」においては、「今回の新型インフルエンザ・ワクチンは、非法定接種であり、ワクチン接種に伴う副反応に対する救済はこの特別立法措置で対応する」、との整理である。

ここで、問題なのは、国の責任についてである。

非法定接種とする限り、国の責任は、問われない。

しかし、今回の新型インフルエンザワクチンを、国民が、すべて、任意として、接種を受けているかといえば、そうではない。

つまり、国が、事実上の接種優先順位を決めている以上、接種を受ける国民の選択権は、その時点で、著しく、狭められている。

ブリンカー(遮眼革)をつけた馬がまっすぐ動かざるを得ないのを、「これは、馬が任意で動いているのだ。」というのと、これは同じことである。

国が、ワクチンの優先接種対象者順位を決め、事実上、国が接種勧奨し、国民に対する個人として努力義務を課している以上、この接種は、決して、任意接種ではない。事実上、完全な法定接種である。

医師の責任も、この法律によっては、免責とはなっていない。

「善きサマリア人法」(Good Samaritan Law)のある国であれば、この措置でいいかもしれないが、日本には、アメリカのあるごとき、「善きサマリア人法」はないのだから、医師にとっては、依然として過酷な心理的な負担を迫られていることには、変わりないのだ。

国立大学医学部長会議は10月22日に、「新型インフルエンザ・ワクチンの接種は、現在任意接種との位置付けだが、安全性についてまだ十分なデータの蓄積がなく、副作用が出た場合に個々の医師が法的責任を問われる可能性があるので、予防接種法に基づく法定接種とするべき」との長妻昭厚生労働相あての要望書をまとめたが、無理からぬ要望ではある。

海外ワクチンメーカーに対する政府補償は、限定的であるべき

ましてや、輸入ワクチンについては、治験もほとんどない状態で、国民は、やむにやまれぬ任意接種という形となる以上、輸入ワクチンの安全性を、国民に情報開示できなかったり、治験による安全性をおこたった場合には、国の不作為は、問われうる。

今回の法案では、輸入ワクチンによる副作用被害が出た場合、海外メーカー側の訴訟費用や損害賠償金を政府が肩代わりするとの規定はあるが、ここにも、国の責任は、すっぽり抜け落ちている。

いわば、ここでは、海外ワクチンメーカーに対する政府補償(Government indemnification)を担保するための、肩代わりを果たす、という形をとっているようである。

しかし、この政府補償(Government indemnification)の範囲については、いろいろな考え方があるようである。

このサイト「Pandemic Influenza:CanWe Develop a GlobalVaccine Policy?」では、Chironからのワクチンメーカーの法的責任と政府補償の可能性についての見解に対して、Gordon, Lance K氏が、次のように言っている。

「商業ベースの責任保険でも、限られてはいるが、利用可能である。
政府も、非常事態に対応して使用されるワクチンに対する補償は用意できる。
しかし、政府補償は、あらかじめ準備された状況で、発生するわけではない。
政府補償がカバーできるのは、製薬会社の自家保険または、商業保険によって、カバーできない部分についての法的責任についてのみ、カバーするだけである。」

“Commercial product liability insurance, although limited, is available, noted Gordon.
Also, the U.S. government can provide indemnification for a vaccine used in an emergency response, but indemnification does not occur in the preparedness context.
Government indemnification only covers liability that is not covered by the company’s self-insurance or commercial insurance.”

モラルハザードのオンパレードにならなければいいのだが–

今回の政府の「輸入ワクチン製造会社訴訟費用無条件丸抱え」スキームは、あまりに、足元を見られた対応のようにも、見える。

つまり、国は、接種被害国民と輸入ワクチン製造業者との間に立つ、ブローカー様・身元保証人的役割しか果たしていないのだ。

その意味では、非常に言葉は悪くなるが、今回の新法案は、間接的な政府保証の元での、「海外輸入ワクチン訴訟促進法」として悪用されうるモラルハザードの可能性が大いにありうる。

たくみにダミーを経由した間接的「無過失補償・無過失免責スキーム」では、その隙間をつくモラル・ハザードの発生を阻止しえないように思える。

日本にも必要な日本版「公共緊急事態準備法」の整備

以上の構図から見えてくることは、今回のパンデミックという緊急事態の前で、行政・医師・ワクチンメーカー・市民が、、四すくみをしているという事態である。

あるかもしれない副作用・副反応に、立ちすくみをしている間に、年少者の犠牲者が次々と倒れていく、そのような構図でもある。

今回の「新型インフルエンザ対策特別措置法案」のような弥縫措置では、いつまでたっても、パンデミックがおこるたびに、同じような混乱が繰り返されるばかりである。

ここで、参考にすべきは、アメリカの、「公共緊急事態準備法」(The Public Readiness and Emergency Preparedness Act (“PREP Act”) である。

アメリカにおいても、ワクチンの使用による訴訟問題の発生には、頭を悩ますものがある。

そこで、この、「公共緊急事態準備法」においては、まず、保健社会福祉省が、疾病の流行などの措置に関するクレームや損害賠償請求についての不法行為賠償責任(Tort Liability)からの免責についてのPREP Act宣言を出す。

ただし、この場合は、意図的な違法行為(willful misconduct) はのぞくものとする。

同時に、政府が直接的に与えた損害に対して、これらの損害賠償に対し、政府に偶発損失準備金(emergency fund) を準備し、対応する。

以上の内容のものだ。

おそらく、今回の日本がワクチンの輸入に対して、ワクチンメーカーから免責を求められたのは、この、「公共緊急事態準備法」とのイコールフッティングの措置を求められたものと解釈される。

アメリカでは、今回のこの法律の成立によって、個人のワクチン被害への補償が果たされると同時に、政府やワクチンメーカーの不法行為賠償責任(Tort Liability)への免責が図られるようになり、パンデミック時の行政・企業一体となった、対応が、可能となっている。

もっとも、この法律には、批判がある。

それは、PREP Act宣言を出す基準が明確ではなく、政府の裁量が大きすぎること、△△泙蠅法▲錺チン・メーカーの主張を取り入れすぎていること、8朕佑料幣抔⇒を事実上制限するという、米国憲法の基本原則の侵害である、い垢任5例はあるといわれるワクチンによると見られるギランバレー症候群の存在を隠蔽するものである、ソK,砲いて、すでに、チメロサールを含むワクチンTCVs( thiomersal-containing vaccines )の使用禁止がうたわれているものと背馳する措置がとられかねない、などの点についての批判である。

これらのアメリカの「公共緊急事態準備法」の問題点と限界を見据えた上で、日本においても、それを超える日本版「公共緊急事態準備法」の整備を図ることが、医師の安心、メーカーの安心、そして、思い切った行政の決断を促しうる、大きな意味でのセーフティー・ネットと、なりうるものと思われる。

 

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