Sasayama’s Weblog


2009/10/28 Wednesday

近時のWTOドーハラウンド交渉の状況

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 21:44:11

2009/10/28(Wed)
 
来月11月30日から3日間にわたって行われるWTO閣僚会議をあと約一ヶ月後に控えて、その交渉のテンポぶりが気になるところだが、先週会見のラミー事務局長の口ぶりからすると、農業交渉のほうは、順調に進んでいるようだが、NAMA(非農産品)交渉のほうの進展は、遅々としているようだ。

リーマンショック後の各国の貿易収支は、最近になっていくらかの改善を見せてはいるものの、リーマンショック以前の前年同期比を大きく下回っており、このことから、各国での貿易保護主義の台頭が、WTO交渉にも影を落としているようだ。

特に、アメリカの中国製タイヤの緊急輸入制限(セーフガード)発動と、それに対する中国側の報復措置などが、混乱に輪をかけているようだ。

中国は、報復措置の予備段階として、アメリカの鶏肉、自動車部品についてのアンチ・ダンピング調査を開始した。

また、アメリカからのナイロン輸入(ナイロン66(ポリアミド66)のチップ輸入)に対して、36パーセントの高率関税措置を報復措置とした。

農業交渉のほうは、国内保護措置の撤廃やら、関税のキャップ、TRQ(関税割当)拡大、関税の簡素化に向けての合意に向かって進んでいるようだ。

いずれにしても、ここにきて、WTO交渉の鍵を握るのは、インド、中国、ブラジル、そして、従来のアメリカ、EUといったところのようだ。

なお、ここにきて、テキスト化の必要性を主張する向きもあるが、前回のインドでの会議で、これ以上のテキスト化はさけるとのラミー事務局長の言明があったが、テキスト化しないとまとまるものもまとまらないとの声も多くなってきているようだ。

このサイト「Focus on Doha round to push global recovery」は、WTOドーハ・ラウンドがおかれた現在の立ち位置を明確に言い表している。

つまり、先月のG20での各国の首脳の確約(ピッツバーグ・ステートメント)にもかかわらず、実際、各国は、ドーハ・ラウンド合意を目の前にして、地域協定や二国間協定にのみ関心を示している、という状況のようだ。

最近行われたSalzburg Global Seminarにおいても、WTOの形骸化についての危機感が、参加者から多く表明されたようだ、

このサイトが言うように、「今のうちに、ポケットに入れられるものはいれておけ」ということなのだろう。

それは、アメリカの「インド−アメリカ投資協定」などに見られるし、オーストラリアなどは、例によって、ケアンズ・グループの日和見的な性格をむきだしにして、インドや日本との二国間協定に前のめりのようである。

日本は、残念ながら、この点では、完全に出遅れており、リカバリーの仕様が、すでにない。

結果としてみれば、安倍政権の早期挫折が、ここに来て、尾を引いているようにも見える。

これらの傾向は、各国で高まる保護貿易主義と、WTOとの相克の構図ともいえる。

WTOが言うように、ドーハラウンドの締結効果によって、毎年1800億ドルから5200億ドルの経済効果が見込まれるというのも事実なのだろう。

しかし、背に腹はかえられない、各国の事情も、裏にはあるようだ。

 

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