Sasayama’s Weblog


2009/09/17 Thursday

「案をそなえて」の文言を削除しない限り、脱官僚依存は、できない。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:39:38

2009/09/17(Thu)
 
脱官僚依存を旗印に昨日発足した鳩山政権だが、内閣設置法や行政組織法など、いたるところに「案をそなえて」との一言が法律にちりばめられているのが、気になるところだ。

内閣設置法ではこうだ。

第七条  内閣総理大臣は、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する。
2  内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しくは政令の制定、改正又は廃止を必要と認めるときは、案をそなえて、閣議を求めなければならない。

また、国家行政組織法ではこのようだ。

国家行政組織法
第12条
各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。 
2 各外局の長は、その機関の所掌事務について、それぞれ主任の各省大臣に対し、案をそなえて、省令を発することを求めることができる。

これを受けて、各省庁の設置法あるいは国家公務員倫理法などでも、この「案をそなえて」の一言は、条文の中に入っている。

一体、この「案をそなえて」を、英語では、どのように訳しているのだろう?

公定訳ではないが、これを「国家行政組織法」でみてみると、つぎのようだ。

「The head of an external organ may, in respect of the affairs under the jurisdiction of the external organ, submit a proposal for the issuance of a Ministerial Ordinance together with a draft thereof to the competent minister.」

このうちの「together with a draft thereof 」(それに関するドラフトと一緒にして)が、英訳版の「案をそなえて」である。

ポイントは、「案を備えて」の一言が、これまでの事務次官会議や、現在も行われている各省庁間の「あいぎ」(合議)の存在を正当化するものとなっているのではないか、という点にある。

では、もし、これから民主党政権が作るという国家戦略局にも、「案をそなえて」提出され、それが、さらに、閣議への関門となるかどうかについて、この「案をそなえて」の文言がある限りでは、国家戦略局自体の役割も、判然としてこないのである。

まあ、脱官僚依存を標榜するのであれば、この「案をそなえて」を削除することが、まず、その手始めであると思うのは、私だけであろうか?

政治サイドが何でもかんでも自分でやりたいって言うんなら、官僚サイドからすれば、「案はそなえませんので、ご自由にどうぞ」ということだって、いいうるのだ。

一体、今度できるという国家戦略局とは、「案をそなえて」各省大臣から内閣総理大臣に提出されたものを、審議するのだろうか?

これは、ちょっとおかしくはありませんでしょうかね?

「案をそなえて」の文言が各法律から消えない限り、鳩山政権の標榜する脱官僚依存のキャッチフレーズは、たわごとに過ぎなくなってしまうのだが。

参考
「案に備えて」に関する国会論議

昭和27年06月18日 参 - 内閣委員会 -

三好始君 次に国家行政組織法上出て来ている外局の長の権限の問題は、第十二条に一つ出ております。国家行政組織り法第十二条第二項によりますと、「各外局の長は、その機関の所掌事務について、それぞれ主任の各大臣に対し、案をそなえて、前項の命令を発することを求めることができる。」、これは規定そのものを見ましても、各大臣に案を備えて命令を発することを求めることができるという程度でありますから、内局の場合も或いは実際上相違がないような気もするのですが、これは現実の運営上は多少違つたものがあるのですか、或いは外局の場合も、内局の場合も現状において余り相違がないのでしようか、その点ちよつと現在の状況を承わりたい。

○政府委員(渡部伍良君) 外局の長としましては法律で一定の定めがある場合には特別の命令を発することができるとか或いは公示を必要とする事項については告示を発することができる、そういうふうな特別な権限があるのであります。内局の長になりますれば、これは皆大臣名でやるということになるだろうと思います。その外局の長が特別の告示なら告示を出すというような場合は、例えば営林局の仕事について見ますれば、どこの部分の林野の払い下げをするとかというようなものを一々大臣名で告示する必要もないから、外局の長がやるというような必要から出て来ていると思います。従いまして……。

○三好始君 十二条のは実は省令なんです。省令の問題なんです。

○政府委員(渡部伍良君) 二項の問題……、やはりそういうふうな具体的な例になると、どういうふうになりますか、省令では余りしばしば用いておりませんが、告示などの場合にはそういうことがしばしばあるのであります。権限どしましてはそういうふうに独立の権限がありますので、相当普通の内局とは違う行動ができることになつているのであります。

○三好始君 国家行政組織法第十二条の問題は実は各大臣の省令についての権限規定なんでありますが、各大臣が省令を出すという権限を行使する場合、第二項によりますと各外局の長は主任の大臣に対して案を備えて省令を発することを求めることができる、まあこういう規定だと思うのであります。ところが簡単に考えますと内局の長にいたしましても、
   〔理事中川幸平君退席、委員長着席〕
案を備えて各大臣に命令を発することを求めることができるという点においては同じではなかろうか、何のために各外局の長がこういう命令を発することを求めることができるという点を規定したのか、実際上多少の相違が現実にあるのかないのか、この点をちよつと伺つておきたいと思います。

○国務大臣(野田卯一君) 私一応の見解を述べたいのでありますが、外局というものは、本省と或る程度の独立性を持つているものであります。従つて大臣が指揮、監督ということは直接できないことになつております。長官を任命するとかいうことはできますけれども、直接仕事を指揮監督するということははつきり出ておらないわけであります。そこで仮に外局の仕事について省令を発するというような場合には、大臣がみずから勝手に省令を出せないわけであります。これは外局のほうからそういう省令を出して下さいということを言つて来なければ大臣としては出せない、内局であれば大臣が出せと言えば、大臣の権限でありますから出せるのであります。こういうところにも相違があるというふうに考えます。

○三好始君 十二条の点は今の野田長官の御説明の通りだとするとはつきりわかりました。
 次の十三条にやはり外局と内局の長の相違が出て来るのでありますが、十三条によりますと、「各外局の長は、別に法律で定めるところにより、政令及び前条第一項に規定する命令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。」、こういうことになつておりますが、この十三条を根拠にして農林省の外局である林野庁或いは食糧庁が現在までに発した規則或いは特別の命令という例があるのかないのか、そのことをちよつと承わりたいのであります。

○政府委員(渡部伍良君) 現在までのところは十三条の規定に基く規則を出した例はありませんです

昭和29年04月30日 衆 - 地方行政委員会 -

○柴田(達)政府委員 第十二条の二項の「それぞれ主任の各大臣に対し、案をそなえて、前項の命令を発することを求めることができる。」当然これも適用があるわけでございます。主任の大臣である総理府の長である内閣総理大臣に対しまして、それを求める、依頼をすることができるわけでございます。

○北山委員 これはもちろん第一項の主任の大臣の行政事務についてですから、この際は内閣総理大臣の所轄ということですから、いわゆる所轄の権限の範囲内におけるものについて、今のような命令を発することを求めることができるという意味で、一般の警察のその他の部分について、主任大臣が権限のない事項についてはもちろんできないというふうに解してさしつかえありませんか。

○柴田(達)政府委員 御意見の通りでございます。

平成11年11月16日- 衆 - 内閣委員会 - 1号

○続国務大臣 ただいまのお尋ねは、あるいは人事院かもしれませんけれども、あえてお答えを申し上げます。
 今委員御指摘のように、ことしの八月九日に倫理法を可決、成立させていただきました。そして、いよいよ来年の四月から同法の施行があります。そのために、今御指摘のように、国家公務員倫理法の第五条の第二項で、「内閣は、国家公務員倫理規程の制定又は改廃に際しては、国家公務員倫理審査会の意見を聴かなければならない。」こう規定してありますし、さらには十一条の第一号で、「国家公務員倫理規程の制定又は改廃に関して、案をそなえて、内閣に意見を申し出ること。」と書いてございます。
 したがいまして、ただいまここに書いてございますように、審査会ができ、審査会の案を添えて内閣へ提示をされる、我々はその提示を受けて、直ちに政令や規程の整備を行う、こういう段取りでございます。御理解をいただきたいと思います。

平成九年二月二十五日衆議院予算委員会

安住委員 法制局長官からお話があったように、事務次官会議というのは法的根拠がなくやっている、しかし内閣が統一的な見解を持つ、言ってみれば調整機構として行われているんだということです。
 それでは伺いますが、主宰者である官房長官、これは今、週二回でよろしゅうございますか、事務次官会議。その前にちょっと確認をさせてもらいますが。

○大森(政)政府委員 私も、今の立場に立つ前は事務次官等会議のメンバーでございました。
 週二回というのは、おおむね、通例は週二回。具体的に申しますと、閣議がある場合に、その前に行われる。したがいまして、閣議が飛べば事務次官等会議も原則飛ぶということにはなろうと思いますが、通例、通常は週二回、月曜日と木曜日の昼ごろに開かれるというのが定例でございます。

○安住委員 今の政策決定のシステムの中で、内閣が提出する法案は、実質的に事務次官会議の了解を得て、そして次の日の閣議に出すというふうな形でやっていると伺っておりますが、主宰者の官房長官はお忙しいのでそこには出席できない。ということは、事務の官房副長官が多分出席をなさって、それで主宰をしているということになると思いますが、それでは、橋本内閣になって、実際に事務次官会議を得ないで政府が提出した法案
というのは今まであるでしょうか。

○太田(義)政府委員 お答え申し上げます。
 ございません。
○安住委員 つまり、実質的には、言い方は大変悪いのですが、事務次官会議が実際の閣議のようになっていて、閣議そのものは非常に形式化している、形骸化している、私はそう思っております。
 そこで、まず法制局長官にお伺いしますが、内閣法の第四条、その三には、「各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。」と書いてありますが、要するに、事務次官会議、これは法的根拠はないわけですから、事務次官会議を得ずして、それぞれ個々の閣僚は、国務大臣という立場であれば、みずからの所管でない、つまり主たる任に当たらない事柄、事案であっても閣議にそれをかけることは可能でございますね。
○大森(政)政府委員 ただいま御指摘のとおり、内閣法四条三項はそのように規定しております。
 したがいまして、純法律上の解釈論といたしますと、国務大臣は、事務次官等会議を経ることなく、また主任の大臣でない大臣も、案件を内閣総理大臣に提出して閣議を求めることは可能でございます。

 

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