Sasayama’s Weblog


2005/03/21 Monday

「財政赤字は、テロリズムよりも怖し」との米調査機関の報告

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:47:15

 
2005/03/21(Mon)

NABE( National Association for Business Economics)というアメリカの経済調査機関が3月21日に発表した調査報告では、アメリカ経済にとって最大の脅威は、テロリズムではなく、財政赤字であるとしている。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=10000103&sid=aV9d59yRSIhA&refer=us参照

また、長期的には、社会保障費の増嵩であり、短期的には、経常収支の赤字であるとしている。

レーガン時代の「双子の赤字」が、ブッシュ時代に、再び再現しつつあるとは、これまでにもいわれてきたことだが、その状況がさらに深刻化しつつあるということなのだろう。

経常収支は、財政収支と民間収支を足したものであり、その財政収支は、歳入と歳出との差であり、民間収支は、貯蓄と投資との差である。

レーガン時代の双子の赤字(財政収支と経常収支とが、ともに赤字になるという現象)は、どうして生まれたかといえば、減税先行をしたがために、財政赤字が増え、その分を国債増発でまかなったため、金利が高くなって、ドル高になり、それに、減税による景気刺激も手伝って、需要が増加し、この両者があいまって、貿易赤字が拡大していったというものである。

ブッシュ時代の双子の赤字は、このレーガン時代の双子の赤字とは、いくつかの点で異なっている。

イラク出兵や減税先行によって、財政赤字が拡大していることには変わりない。

しかし、金利は、いまだ低水準にあり、米連邦準備制度理事会(FRB)は、余裕を持って、次期金利引き上げを、計画的にしようとしている。

また、ドルは、前スノー財務長官がドル安容認発言をして以来、為替介入なしに、市場原理のままに、あがったり下がったりしている。

本来、ドル高・ドル安は、貿易収支の赤字・黒字をビルトインで調整する働きをかつてはしていたのだが、今の状況は、レーガン時代と異なり、貿易収支が赤字とあっても、ドル安の状態が続くというのは、おそらく、巨大な中国市場のバブル圧力の故なのだろう。

さらに、アメリカの貿易の主要相手国は、日本から中国へとシフトしている。

だから、レーガン時代の双子の赤字は、原因と結果が、つながって、悪循環を招いての双子の赤字であったのが、今回のブッシュ時代の双子の赤字は、意図しての財政赤字であり、中国という巨大市場相手のやむを得ざる貿易赤字であり、減税での購買力堅調による民間収支赤字なのである。

つまり、レーガン時代のような、結果としての双子の赤字なのではなく、ブッシュ時代の双子の赤字は、「双子の赤字先にありき」の与件としての双子の赤字なのである。

しかし、次の要因は、どうなのだろう。

アメリカの対外純資産が、債権国 (所得収支がプラス) から債務国 (所得収支がマイナス)へと変化しているという要因についてである。

すなわち、過去に発行した米国債が、すでに、日本を中心として、海外の民間ならびに公的な資産となっているという状態の下での双子の赤字問題ということである。

原油高の要因や、米国の先行きを悲観しうる要因によって、米国債をユーロ債なり金なりにシフトする動きが高まると、アメリカの長期金利は、うなぎのぼりに上がり、米国債価格は、暴落する。

それは、ドミノ的に、すでに米国債を持っていた保有国の資産価値目減りをおこさせ、更なる、米国債から他の運用ツールへと、シフトしていく。

長期金利下落にともなうドル安は、アメリカの過去債分の利払い負担を減少させはするものの、そのこと自体、米国債保有そのものへの魅力を減じさせる。

すなわち、レーガン時代の双子の赤字は、それによって、米国債増発の要因になリ、それが、ドル高や高金利を招いたのだが、ブッシュ時代の双子の赤字とは、その赤字額自体が、すでに米国債を保有している海外保有者の信任投票のメルクマールに過ぎないものとなっているのだ。

その意味では、「時すでにおそし」であり、その時、一蓮托生となりうるのは、溝口前財務官のおこなった巨額の為替介入で、図らずも、「バブル時のゴルフ会員権のような存在となりかねない」大量の米国債を保有してしまっている「名目的には、巨大な債権国」日本が、やむを得ず、アメリカとともに、最後の「アルゼンチンタンゴを踊る」破目となってしまう気配なのだ。

「アメリカの財政赤字は、日本にとっても、テロリズムより怖し」なのかもしれない。

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