Sasayama’s Weblog


2009/01/18 Sunday

面白いNHKの「出社が楽しい経済学」

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 08:04:38

 
NHKで1月10日からはじまっている「出社が楽しい経済学」は、身近なケースに置き換えてみると、いちいち、おもしろい。

第一日が「サンク・コスト」
第二日が「機会費用」
第三日が「比較優位」
第四日がインセンティブ
第五日がモラルハザード
第六日が逆選択
第七日が価格差別
第八日が裁定
第九日が囚人のジレンマ
第十日が共有地の悲劇

このうち、機会費用については、私自身も、むかし、大学の卒業論文でもとりあげた、なじみのあるものだ。

このときは、開発投資の投資基準論で社会的費用として取り上げたものだったが、そこで例として出したのは、チェネリー(Hollis B. Chenery)の考え方で、生産物や費用の評価を、市場価値ではなく、機会費用(オポチュニティ・コスト)として、とらえよう、というものであった。

機会費用を一言でいえば、「それが、なかりせば、かかったであろう費用」と言うことなのだが、その「それ」をインフラにおきかえれば、ある高速道路の路線がなかりせば、かかったであろう費用が、その高速道路の路線の建設コストを上回っていれば、その投資は、社会的にペイしうる投資と是認される、と言った考え方だ。

で、この「それ」を高速道路ではなく、人的資本である「後期高齢者」に当てはめてみるとどうなるのだろう?

「それが、なかりせば、かかったであろう費用」は、後期高齢者の場合は、すでに「時間の腐食」(タイム・ディケイ)がすすんでいるために、少なくなってしまっている。

にもかかわらず、その腐食を補填しうるのは、人道的見地、または、時間の腐食をおぎなって余りあるボラティリティの急上昇と言うことになるのだろう。

後期高齢者の社会的価値のボラティリティの急上昇のチャンスは、社会的な大変動によって、社会的な価値観が後期高齢者の必然的に持つ価値観に擦り寄っていくことによってしか生まれ得ない。

となれば、この世界的大恐慌の到来は、そのひとつのチャンスになりえるのかもしれない。

サンク・コストは、英語では、Sunk Costであり、直訳すれば「埋没費用」だ。

撤退しても、回収できない費用ということで、初期投資費用から回収費用を除いても、残る費用ということだが。

この概念などは、投資をして損切りできずに、大損をしてしまったFX投資家などに取ってみれば、まことに頭の痛い、身につまされる概念であるといっていいだろう。

つまり、すでにいったん投下した費用については、その投資効果があろうとなかろうと、その投資決断を正当化しようという欲求が、人々には、必然的に備わっているということだ。
参考「Passing the Time: Other-Regarding Behavior and the Sunk Cost of Time

または、昭和天皇の原爆投下後の終戦決断などというものは、昭和天皇が日本という国のサンク・コストをある段階で、さけえたひとつの例になるのかもしれない。

環境の経済学から見れば、このサンク・コストを軽減しうる−すなわち、回収費用に対峙する回収利益をたかめえる技術、社会的環境の整備が、必要ということになるのだろう。

サンク・コストを軽減するインセンティブを、社会的に用意することも必要なのだろう。

減価償却は、古来からある、そのひとつのインセンティブたりうるのだが、このインセンティブは、税収減とトレードオフの関係にあるのだから、社会的費用全体としては、社会的費用間の移転にしか過ぎない。

もうすこし、別の今日的なインセンティブも必要になってくるのかもしれない。

つまり、時間の概念を取り入れた、ミチゲーションの概念のスキームの構築等だ。

たとえばこのサイト「サンク・コストと治水経済評価」では、既存のインフラの更新において、既存のインフラのサンク・コストを「すでにサンクしている」とは考えないで、連続したものとしてコスト評価するという、斬新的な考え方をしている。

あるいは、環境オプションの概念の導入なども必要になるのかもしれない。

いまの3R−リデュース・リユース・リサイクル-の概念では、たんなる製品の上市期間の延長と言う概念でしか、処理できていない感じもする。

新たなインセンティブをもって、早期に上市期間を終息させ、そのことでもって、サンク・コストの軽減を図ると言う知恵も必要となりそうだ。

不良債権処理のためのジャンク債処理機関としてのサービサーの存在と言うのも、このサンク・コストの社会的軽減と言う観点からは、ちょっと、頓珍漢なインセンティブのように思える。

つまり、ジャンク債として投げ出す金融機関にとってのみの税効果会計のもとでのインセンティブであって、債務者にとってのサンク・コスト軽減のインセンティブではないからだ。

これから放映予定の比較優位についてみると、ここでも、時間の概念との関係が微妙である。

人的資源配分を機会費用の少ない特定の分野に特化させることによって、競争力を得るという概念だが、はたして、そうなのだろうか。

近時のトヨタの凋落ぶりは、比較優位の神話の崩壊を感じさせる。

時間の推移にしたがって、ダイナミックな比較優位の変遷を考えていかないと、妙なイクスキューズとして、この概念が使われしまう懸念も、無きにしも非ずだ。

こうしてみると、総じて、上記の三つ(ゝ_馮駘儉▲汽鵐・コストH羈嗟グ)は、時間の概念を捨象した、摩擦的なトレードオフの概念に過ぎないようにも、見える。

新たに時間の概念を取り入れた概念の創出が必要なのではなかろうか。

 

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