Sasayama’s Weblog


2008/11/08 Saturday

定額給付金の所得制限−アメリカではどうだったか?-

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:30:03

2008年11月8日
 
null自民、公明両党は七日、追加経済対策に盛り込まれた総額二兆円の定額給付金(生活支援定額給付金)について、一人あたり一万二千円を支給し、十八歳以下と六十五歳以上は八千円を加算することで大筋合意した。

問題の高額所得者を支給対象から外す所得制限の具体的方法は、十二日ごろまでに結論を出すというのだが ここで、比較したいのは、すでに、今年、同じような消費刺激策としてアメリカが実施した税還付小切手(Tax Rebate Check、戻し税小切手)(総額1520億ドル、約15兆円)における所得制限スキームである。

アメリカの税還付小切手(Tax Rebate Check)においては、所得制限を、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )でない場合とカップルの所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )である場合とで、差別化した。

しかも、段階的廃止範囲(Phase OutRange)として、所得制限の適用者と非適用者との間に、グレーゾーンの緩衝帯を設けた。

具体的には、下記のとおりである。

税還付小切手配布の非対象者とグレーンゾーン者(限定的対象者)

1.税還付小切手(Tax Rebate Check)配布の非適用者

(1)個人で、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )でない場合
修正総所得(AGI=Adjusted Gross Income )が年間七万五千ドル以上
(2)カップルで、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )である場合
修正総所得(AGI)が世帯総所得で年間十五万ドル以上

2.税還付小切手(Tax Rebate Check)配布の段階的廃止範囲の対象者(限定的対象者)

(1)個人で、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )でない場合
修正総所得(AGI)が年間七万五千ドルから八万七千ドルの範囲にあるもの

(2)カップルで、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )である場合
修正総所得(AGI)が世帯総所得で、年間十五万ドルから十七万四千ドルの範囲にあるもの

税還付小切手(Tax Rebate Check)の総受取額

次の三つの部分からなる。
(対象者は上記の「1.税還付小切手(Tax Rebate Check)配布の非適用者」該当者を除いたもの)

1.個々人の分(600ドル受領)
2.こども(被扶養者、17歳以下)、または、年間修正総所得が3000ドル以下のものの分(300ドル受領)
3.段階的廃止範囲(Phase Out Range)対象の分
(上記の「2.税還付小切手(Tax Rebate Check)配布の段階的廃止範囲の対象者(限定的対象者)」該当者)
(支給対象の年間修正総所得をオーバーした部分について、5パーセント分を乗じた部分を控除して受領、
たとえば、

個人で八万七千ドルの場合は、
(87000ドル−75000ドル)×0.05=600ドル
実際の支給分=本来の支給分600ドル−本来の支給分から減じる部分600ドル=0

個人で八万ドルの場合は
(80000ドル−75000ドル)×0.05=250ドル
実際の支給分=本来の支給分600ドル−本来の支給分から減じる部分250ドル=350ドル)

受け取りうる税還付小切手の総額=1+2-3

個人で、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )でない場合の例

1.子供がいなくて、Phase Out Range対象者でない場合
1のみ適用
2.子供がいなくて、Phase Out Range対象者の場合
1と3が適用
3.子供がいなくて、Phase Out Range対象者でない場合
1と2が適用
4.子供がいて、Phase Out Range対象者の場合
1と2と3が適用

カップルで、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )である場合の例

1.修正総所得(AGI)が世帯総所得で、年間十五万ドル以下の場合(600ドル×2=1200ドル受領)
2.修正総所得(AGI)が世帯総所得で年間三千ドル以上の場合(300ドル×2=600ドル受領)

退職者の場合

年金収入が年間三千ドル以上の場合(単身者の場合は300ドル受領、カップルの場合は、600ドル(300ドル×2)受領

退役軍人の場合

障害者給付金(disability payment )の給付を受けている者は、対象

上記をまとめると下記のようになる。

個人で、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )でない場合

―だ義軆蠧(AGI)が75,000ドル以下の場合
受け取りうる税還付小切手の総額=600+(被扶養者の数×300)
⊇だ義軆蠧(AGI)が75,000ドル以上87,000ドル以下の場合
受け取りうる税還付小切手の総額=600−〔(修正総所得(AGI)−75.000)×0.05〕+(被扶養者の数×300)

カップルで、所得税の夫婦合算申告(married filing jointly )である場合

―だ義軆蠧(AGI)が150,000ドル以下の場合
受け取りうる税還付小切手の総額=1.200+(被扶養者の数×300)
⊇だ義軆蠧(AGI)が150,000ドル以上174,000ドル以下の場合
受け取りうる税還付小切手の総額=1,200−〔(修正総所得(AGI)−150、000)×0.05〕+(被扶養者の数×300)

上記の「被扶養者」とは
17歳以下のこども
年間修正総所得が3000ドル以下の者
などを指す。

以上が、アメリカで、今年、日本と同様の消費刺激策の一環として行われた税還付小切手(Tax Rebate Check)の所得制限等スキームの概要である。

参考
2008 Tax Rebates

日本同様、上院と下院とがねじれている「グリッド・ロック」の状態にあったアメリカ議会としては、超党派による異例の速さで、これだけのスキームを今年の2月(2008年2月13日に法案化)にまとめ、5月にかけて、税還付小切手をアメリカ中の対象者に配布したわけだが、その実際の消費刺激効果については、疑問が残ったにせよ、そのスピード性については、評価できる。

これができたのは、納税者番号(Taxpayer Identification Number-TIN-)、社会保障番号(Social Security Number-SSN-)が整備されていたためとも思われる。

それにしても、これらのアメリカの念入りな所得制限の実態を認識すれば、今回の日本での与党案(公明党を中心にして、所得制限をしないという案が有力とのことであるが、ひどい話だ。)が、いかに、ずさんなスキームであるかが、わかるであろう。

実施は遅れても、その辺もふくめたモラルハザードの排除についてはきっちり整備してかかるべきだろう。

もう少しいえば、本来は、公明党主導型の総選挙のための人気取りばら撒き政策なのだから、この辺で、拙速は避け、出直し、これにかわる本格的な消費刺激策を構築する好機なのではなかろうか。

ちなみに、アメリカにおいても、この還付小切手に関する詐欺事件は多かったようだ。

たとえば、「還付を得るためには、あなたの銀行口座の番号が必要だ。」とか、「あなたの還付が早く受けられるようにお手伝いをしましょう。」という類の詐欺行為が、電話やメールで飛びかったようだ。

同時に、上記のアメリカのスキームにおける所得制限の「段階的廃止範囲(Phase Out Range)」の概念は、日本においても、考慮されてしかるべきであろう。

さらにいえば、あらゆる所得制限の政策スキームにおいても、この辺の所得制限の前後のグレーゾーンが問題になるのだが、所得制限で切った場合の対象者と非対象者との前後のギザギザをなだらかにしうるスキームも、この際、考えられてしかるべきであろう。

たとえば、そのためには、寄付税制におけるインセンティブの確保や、日本では希薄なドーネーションの振興に寄与しうる政策的インセンティブの用意の必要性などがあげられるであろう。

 

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