Sasayama’s Weblog


2005/04/03 Sunday

カナダ・メキシコ・アメリカの統一BSE戦略構築のねらい

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:52:18

 
2005/04/03

null「米国、カナダ、メキシコは1日、食肉からの脳や眼球など特定危険部位の除去や、感染源となり得る肉骨粉飼料の禁止など、9項目の最低基準を満たせば域内の牛肉貿易を認めることを柱とする3カ国統一の牛海綿状脳症(BSE)対策を策定したと発表し、これをOIEの改正会議で国際統一ルールとするように働きかけるとのことである。

この「カナダ・メキシコ・アメリカの統一BSE対策」(Canada, Mexico And United States Release Harmonized North American BSE Strategy)の概要は、USDAのサイトhttp://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p
/_s.7_0_A/7_0_1RD?printable=true&contentidonly=
true&contentid=2005/04/0113.xml
で、次のように発表されている。

以下、概訳である。

「カナダ・メキシコ・アメリカの三カ国は、一致した北米BSE戦略を発表した。

科学的根拠をベースにしたBSEのためのリスクマネージメント方策の枠組みが、北アメリカ内での反芻動物ならびに反芻動物製品の正常化した貿易の助けになることを目的として、開発された。

そして、これは、OIEガイドラインに沿った国際的なBSE戦略となることをも、目的としている。

この戦略は、また、OIEを通じて、国際的な一致を持ったBSEリスク緩和策を促進するための、更なる討論の一部として、OIEへ提出されるであろう。

このレポートの中で定義されているミニマム基準は、北アメリカ内では、これまで、成文化は、されてこなかった。

むしろ、これらは、それぞれの国において、個々の国での規定のプロセスを通じて、動物の健康担当局や公衆衛生担当局で、考えられるべきものであろう。

これらの勧告は、現在貿易されている製品についての要件変更実施を求めるものではない。」

以上が、その内容である。

また、この合意に先立って、アメリカとカナダとの反芻動物の貿易に関する規則について、いくつかの改訂が行われ、この改訂は、NAFTA間のOIE基準に準拠した輸入緩和措置の前触れをなす内容と憶測される。

すなわちその内容とは、次のとおりである。
http://canadagazette.gc.ca/partII/2005/20050331-x2/
html/extra2-e.html
参照

1.この「反芻動物とそれらの製品の輸入禁止に関する規則」は、規則が発効する2005年6月30日以前には、適用しない。

2.生体動物については、精液採取用の雄の鹿、雄の牛、雄のラム、の輸入を可能とする。

3.月齢30ヶ月以下の肥育用牛についても、輸入を可能とする。ヤギや羊については、月齢12ヶ月以下のものであって肥育用のものや、直ちにと畜去れるものについては、輸入を可能とする。

4.肉製品については、骨なしの羊肉・ヤギ肉については、輸入を可能とする。また、月齢12ヶ月以下の動物の臓物については、輸入を可能とする。

5.化学肥料の成分や、 動物性食品の禁止範囲は拡大され、それらの中に反芻動物由来の物質が含まれている場合には、輸入禁止とされる。

以上である。

これらの戦略の下敷きになっているのは、2004年4月27日に、Julie A. Caswell氏とDavid Sparling氏の両氏によって書かれた「RISK MANAGEMENT IN THE INTEGRATED NAFTA MARKET:LESSONS FROM THE CASE OF BSE」という論文である。
http://www.farmfoundation.org/naamic/cancun/caswell.pdf参照

この論文は、カナダ・メキシコ・アメリカのNAFTA加盟三国共通の「牛肉インテグレーション」を実現するための課題について、詳細に分析しているもので、たとえば、難航している日本との牛肉貿易再開のための戦略として、次のように記載している。

日本との貿易再開のためには、二つの観点からのアプローチが必要であり、一つは、OIE基準遵守をふリかざしてのもの、もう一つは、アドホック(場当たり的)な戦略としての短期的なもので、その内容として、次のように書かれている。

「日本との牛肉貿易再開が難航している、その間に、カナダ・メキシコ・アメリカのNAFTA 加盟三国は、アドホックをベースにした国境再開のためのステップをすすめなければならない。
三国共通のインテグレートされた生体牛と牛肉の市場構築のために重要なことは、NAFTA 非加盟国との貿易について、影響を与えることである。それらNAFTA 非加盟国との牛肉貿易再開にあたっては、リスクマネージメントシステムのインテグレーションを、それ自体の中に含まれなければならない。」

図らずも、日本との牛肉貿易再開問題で、あらわになったかのように見える北米三国(カナダ・メキシコ・アメリカ)の生体牛・牛肉製造業のNAFTA加盟国間でのインテグレーション構想だが、この構想は、もともと、NAFTA発足時から、あったものだ。

サイトhttp://www.card.
iastate.edu/iowa_ag_review/summer_03/article4.aspx

は、アメリカでのBSE発生前のものであるので、若干適切性を欠くが、NAFTA加盟国での生体牛・牛肉貿易戦略をよくあらわしているので、あらためて掲載しておく。

この中のチャート図
http://www.card.
iastate.edu/iowa_ag_review/summer_03/images/4-1.gif

が、その現状をよくあらわしている。

2002年の時点での数字だが、ここでは、次のようになっている。

カナダは、アメリカに百五十四万頭の生体牛と、五百七十六万頭の豚を輸出していた。

これらのアメリカが輸入していた生体牛の31パーセントが肥育牛であり、68パーセントが肥育豚であるとした場合、これらの牛や豚は、アメリカ国産の牛や豚用に加えて、追加七百三十九万ブッシェルの穀物コーンと、二十七万八千万トンの大豆ミールを飼料として消費していたことになる。

これらの牛・豚が米国内でと畜されたとした場合、牛の畜量は、牛で4.3パーセント、豚で5.7パーセント増えていたことになる。

また、カナダの家畜は、牛肉で三十八万九千百六十七トン、豚肉を三十八万三千八百七十六トンを、2002年の時点で、アメリカへ輸出していた。

同時に、アメリカは、八十二万八千六百六十八トンの牛肉と、五十四万九千九百八十九トンの豚肉を、輸出していた。

これらが累積して、カナダのと蓄される生体牛と肉の輸入量は、アメリカの牛肉輸出量の55パーセント相当、豚肉輸出量の100パーセント相当になっていた。

これに、肥育用の牛や豚の分もカウントすると、アメリカの牛肉や豚肉の輸出量に貢献する度合いは、もっと高くなってきていた。

一方、カナダからアメリカへの輸出は、生体牛十二万七千頭、豚九千二百五十二頭、牛肉八万三千八百二十六トン、豚肉六万四千三百三十八トン、と、微々たるものであった。

この、片務的ともいえるカナダ・アメリカ間の生体牛・牛肉の貿易関係は、と蓄規模の点でも、飼料コストの低廉度の点からも、消費者の肉消費量の点からも、カナダ側に対して、アメリカ側が、圧倒的に、勝っていたことから、必然的に生まれたものだ。

このような状況の構図を変えて、たとえば、カナダのアメリカへの輸入を減らすことになれば、カナダの肉の輸出は必然、これまでのアメリカから輸出されていた国へのカナダからの輸出へと向かうであろうから、アメリカの生産が拡大しないかぎり、アメリカの肉輸出量は、それだけ、減少することになる。

メキシコの牛肉生産体制は、衛生面や政治社会状況が影響していて、北米赤肉複合体(the North American red meat complex )の結成までにはいたっていないが、肉の輸出入量は、確実に伸びている。

とくに、脂肪のない肉 (muscle meat)の生産が特徴で、これへの需要が伸びているようである。

メキシコは、アメリカに対して、生体牛八十万頭、牛肉六千三十二トンを輸出している。

一方メキシコは、アメリカに対して、生体牛十万六千頭、豚十六万九千頭、牛肉二十七万一千六百七十一トン、豚肉十五万七千四百二トンを輸出している。

カナダとメキシコとの関係は、ほとんどない。

以上が、2002年時点でのカナダ・メキシコ・アメリカ間の牛肉などの貿易関係であるが、今回の北米三国(カナダ・メキシコ・アメリカ)の統一BSE戦略の意図は、図らずも、これまでBSE問題のカナダ・アメリカ両国の発生で中断していたこれら構想の復活条件を整える狙いがあるものと思われる。
参照 http://pods.dasnr
.okstate.edu/docushare/dsweb/Get/Document-1997/F-580web.pdf

しかし、このNAFTA三国での生体牛・牛肉インテグレーション構想に対しては、アメリカ国内でも反対がある。

たとえば、カナダ国境再開に対して反対の立場をとっているR-CALFの最高執行者Bill Bullard氏は、このインテグレーション構想について、次のように言っている。
http://pryordailytimes.
com/articles/2005/03/25/
news_content/community_news/agriculture/agriculture02.txt
参照

「カナダから牛肉製品を輸入しやすくするために、輸入標準規格を下げるという、多国籍ミートパッカー構想によって、日本や韓国のようなアメリカ牛肉主要輸出先顧客に対して、その牛肉貿易を再開させようとするUSDAの考えかたは、非論理的で、理性のないものである。

2003年以来、日本は、われわれに、こういってきた。「アメリカの牛肉が、カナダから来たものでないことが保証されないうちは、そして、その牛肉に、アメリカ産のものであると適切に示されていない限り、われわれは、アメリカの牛肉をほしいとはおもわない。」と。

どうして、アメリカの巨大ミートパッカーたちは、原産国表示制度(COOL制度)の実施をしたがらないのか?

もし、アメリカ政府が、海外の巨大市場の要求を無視することをやめるならば、アメリカの巨大パッカーも、中小パッカーも、原産国表示ラベルがあろうと、BSE検査があろうと、等しく、ビジネスの発展を見るであろう。

アメリカの牛肉の他の顧客の要求を前向きに満たすことが、それらの国々との良好な関係改善につながりうるのだ。」

一方、施行が延びに延びているアメリカの原産国表示制度(COOL)の実施が、この構想に不利な状況を与えるのではないかと、とくに、カナダでは、懸念する声が強いようだ。

http://www.fas.usda.gov/gainfiles/200301/145785050.pdf
参照

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