Sasayama’s Weblog


2010/01/16 Saturday

政権交代後の環境政策スキームの課題

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 12:39:42

 

三年前から、明治大学の学部間共通総合講座という講座で、年一回、90分程度、「環境と政治」というようなテーマで、講義らしきものを受け持っているのだが、昨年は、ちょうど予定当日、台風の襲来で講義が流れてしまい、一昨日、実現した。

なんやら、前々日は雪模様なので、今回も流れるのかなと思ったが、どうやら、無事に終わった。

毎年話すことが同じではと思い、今回は、政権交代後の環境行政を中心にしての話とした。

とくに、ダム問題にミチゲーション手法を用いる方法などを、アメリカのノースカロライナの事例をもとに話したり、民主党政権のお好きな直接支払い型政策の限界や、景気対策としての問題点、あるいは、CO2削減に京都メカニズムを用いる問題や、鞆の浦訴訟における景観権の位置づけ、などについて、話した。

相変わらずの汚い私の板書で、受講生の方は、おそらく、あきれていたのではないかと、内心、ちょっと、申し訳ない気がしたが、準備の段階で、事務局の方が、『パワーポイントはお使いではないですね。』などといわれてみると、今時は、板書よりも、パワーポイントが主流なのかな?などとも思ってしまうのだが。

ただ、こうして、三回もやってみると、この板書ってのは、話すほうから見ると、結構息抜きの時間帯になって、書いている間に、次の流れを考えられるっていう利点があるようだ。

それと、時間稼ぎや話の間の要素もかなりある。

聞いているほうも、息抜きになる面があるんではないでしょうかね。

いろいろなシンポジウムに出ているが、今はやりのパワーポイント・スライドによる説明は、素材感がないって言うか、ざらざら感がないって言うか、朗読をしているような無機的な講義に思える。

話すほうがすでにパワーポイント準備の段階で、話のストーリー/展開を予定してしまっているという点で、意外感や新鮮感や端無くもみえてしまう話し手の人間性の要素などが、パワーポイントの素材で隠されてしまう、というデメリットもあるんではなかろうか?

というわけで、今回の講義は、話し足りないことがいっぱいあるままに、あっという間に時間が終わってしまった感じだ。

最後の質問で、『小沢事件の今後の展開は?』なんて、きわどい質問があったが、『国会開会前の昨日(1月13日)の検察の捜索の動きから見ると、今日から開会日の1月18日までの金曜・土曜・日曜のあいだに、石川さんの逮捕はあるでしょうね。』なんて、政治評論家気取りのことを言ったら、昨日(1月16日)、そのとおりの展開になってしまったのには、いささか、後で、びっくりした。

以下は、今年の講義メモである。

講義メモ(2010年01月14日)

わが国における環境政治家の役割の変化について

1.政権交代と環境政策の変化

(1).これまでのスキーム

これまでの「政・官・民」の力関係は、グー・チョキ・パーの関係
政治家は、予算を取れなくなってきたし、小選挙区なので、専門力を行使できなくなってきた。
官僚は、許認可権限を奪われたり、委託研究による民間への甘いえさが行使出来なくなってき た。
民は、業界圧力としての政治家への働きかけが出来なくなってきた。

(2).新しい環境NGO/NPOの動き

このような中で、新しい「三権」として「NPO/NGO・官・民」の力関係が生まれてきた。
一方、環境NPO/NGOは、これまでの抵抗型の活動から、提案型の活動にシフトしてきた。
特に諫早干潟問題における山下弘文さんらの活動が契機になった。
代議制の形骸化と環境NPO/NGOの変質-行政側が、パブリックコメントなどを通じて、代議制をスルーして、直接、環境 NPO/NGOに働きかける比重が多くなってきた。

(3).政権交代後での環境政治家に求められる新たな役割

政治主導と官僚非依存によって、これまでの政・官・民のけん制関係が不透明になってきている。

(政⇔官⇔議)⇔(民)
というような関係に変質しつつある。

それにともなう官僚の萎縮が環境問題にどう影響を及ぼすのか?-よい面、悪い面-
議会内部での健全なチェック機能がはたされるのか?
議員立法の不活発化による影響は?
族議員不在の功罪
民主党政権の環境政策へのスタンスは?

これまでの民主党内における環境問題への取り組みへの評価-公共事業チェック機構を実現する議員の会(公共事業チェック議員の会)の活動や、諫早問題などへの取り組みでは評価できる人材がいる。
これまでのNPOへの近接度は自民党よりもあるが、これまでのNGO関連ブレーンの変質はあるだろう。

これからの民主党の課題-単なる公共事業反対のスタンスではなく、問題解決のための新しい政策スキームや出口戦略のスキームの構築が必要

2.民主党政権が志向しようとしている政策課題についての問題点

(1).ターゲット政策から直接支払い政策への転換

成長戦略としては、サプライ・サイドへのインセンティブからデマンド・サイドへのインセンティブへの転換
菅さんの言われる第三の道とは?
直接支払い政策は、デフレの罠にとらわれる可能性
直接支払い政策は、これまでの面的なインセンティブからホロニックなインセンティブへ、ニュートラルでありフラットなインセンティブへの転換であるが、その点が、民主党自身にも理解されていない嫌いがある。(『直接支払いとは、農協などを経由せずに、直接、国民の口座に現金が振り込まれることをさしている』、などと、平気で言う大臣もいる位だ。この大臣には、ニュートラルなインセンティブという点がまったく理解されていない。)
直接支払い政策の課題-トランザクション・コストの増大(徴税コストと措置コストがダブルにかかる)
必要な、トランザクションコスト低減のための納税者背番号制の導入の必要性

(2)出口戦略が見られないダム問題

すでにダムの費用便益比(B/C)に組み入れられている、ダムの水源をもとにした水系での農業かんがい排水事業などとの関係

ダム除去問題解決にミチゲーション手法を使うことは可能なのか?

アメリカ・ノースカロライナのミチゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数
(係数は、護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。また、河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。)

修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット×修正係数
(修正係数は、/綣舛呂匹Δ?、⊃綫言己のコミュニティが確保されているか?、4少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。
また、人的要因としての修正係数は、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウント修正)

このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミチゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキーム

(3)25%CO2削減目標は真水か京都メカニズム分をカウントか?

鳩山さんの90年比25%削減の中身が不明
自国での削減による目標達成のほか、他国での削減量を自国の削減としてカウントできる京都メカニズムがある。

京都メカニズム
’喀侘娘莪(日本での排出権市場は成熟していない。シカゴのCCXやCCFE(先物)、ユーロのECXには、すでに勝てない。)、
CDM(Clean Development Mechanism.途上国対応の削減プロジェクト実施、削減できた部分について、クレジットと受領)、
JI(Joint Implementation.先進国対応の削減プロジェクト実施し、削減できた部分について、クレジットと受領)
からなっている。
このほか、現在、新たなスキームとして検討されているのが、
「REDD」(途上国の森林維持に与えるクレジット)
「セクトラル・クレディティング・メカニズム(SCM)」(産業部門別に達成部門に対して与えるクレジット)
「NAMAクレジット」(途上国に与えるクレジット)
などである。
日本は、そのどちらを主軸として削減目標25パーセントを鳩山さんが言っているのか、その戦略が不透明である。
環境問題の経済化(炭素関税など)への対応に備えるべきとき

(4)サードパーティーリスクの増大を考慮していない羽田ハブ空港化問題

航空機の発着に伴う発着一回あたりの離陸・着陸のリスクは低減しているが、総発着数の増大が、ハブ空港化によって、巨大な数に及ぶことによって、事故確率が増大。
着陸航路や離陸航路のゾーンにおける第三者に対するリスクが、累乗的に増大
これに、航空路下の精製所や発電プラントなどへの二次的なサード・パーティー・リスクが伴う。

(5)これまでのトレードオフのスキームによる環境利害調整スキームは見直す必要があるのではないのか?

排出権取引

汚染者負担原則
企業が利益拡大のみを目指したがために生じた「一方向外部経済」(One-Directional External DisEconomy)とともに、一地域において、面的に発生する外部不経済は、その地域の被害者が加害者でもある、という複雑な因果関係の下に生じている外部不経済(相互外部不経済-Reciprocal External DisEconomy-)を吸収できない、

No-Net-Loss原則(ミチゲーション・バンキング)
オンサイトでのトレードオフ
オンサイトとオフサイトとのトレード・オフ
イン・カインド(同種)とアウト・オブ・カインド(異種)とのトレード・オフ
期近と期先との間のトレード・オフ(時の要素を盛り込んだ新しいスキーム、拡大ミチゲーション構 想など )

環境スワップ(DNS)
「発展途上国の累積債務の返済負担軽減」

「保護区の設定など, 自然保護政策を確約させ、環境 NGO が金融機関から債権を割引価格で購入し,金融機関は途上 国の現地通貨を債務国に提供」
とのトレードオフ

(6)先進化する司法見解に政治はついていけるのか?

司法見解では認知されつつある環境権
反射的利益からの離脱
利益の比較衡量での環境権のカウント
公共益対私的利益間の利益の衡量から公共益と環境の公共益との比較衡量へ
地域不在者のもつ非使用価値を認めるか−原告適格性の拡大

鞆の浦景観訴訟広島地裁判決を例にして
景観利益は、地先権の利益の中に入り、公有水面埋め立て法の損得カウントに入れる。という画期的判決
反射利益以外のものが考慮された
時のアセスの観点から、環境紛争を長期化させない和解スキームの確立が必要

国立マンション問題-2006年3月30日、最高裁の国立マンション訴訟-の例
「住民の景観利益を認める」

沖縄・慶良間海域でのエコツーリズム推進法によるダイバーの立ち入り制限と海域での自然観光資源に対する地先権の問題

環境政治家に求められる新たな役割 -先進的な司法見解の取り入れと、行政に対する牽制力の発揮
アルビン・トフラー夫妻の「歴史にも時効を」の観点に立った応報的司法から、修復的司法へのシフト、
被害者・加害者和解プログラム(VORP Victim offender Reconciliation Program)や、被害者・加害者仲裁プログラム(VOM Victim Offender Mediation Program)のスキームの導入
除斥期間の起算点となる「不法行為の終了」かラ被害発生、除斥期間の満了(時効)にいたるまでの期間の中断のない長期化と「時のアセス」スキームの必要性
これまでの国家賠償法訴訟は、国側の控訴の連続で、原告の高齢化を待って、除斥期間に逃げ込むケースが見られた。

(7)、環境をスキームにした新しい貧困・雇用・景気対策スキーム確立の必要性

新しい景気刺激策は、サプライサイドに対するビッグプッシュでも、デマンドサイドに対するビッグプッシュでもなく、その中間である第三のサイドである、非利益追求型であり、非措置型でもある、主体に対するビッグプッシュである必要がある。
その第三の主体とは?
市民ビジネスであり
BOP(Bottom of Pyramid)ビジネスでもある。

たんなる直接支払いでなく、持続可能型のビッグプッシュによる景気浮揚を志向すべきである。

BOP(Bottom of Pyramid)ビジネスの国際的な具体的動きー
マイクロ・クレジット、
ITC Limited主体で行っている農業分野におけるe-Choupals、
貧困者特定マーケットに向けた商品の開発(水でゆすげるノンパッケージのシャンプーの商品開発など)、
環境悪化地域におけるごみ収集や環境浄化のための換金回路の構築、など
これらの国内版貧困ビジネス・スキームの構築

コミュニティ・オーガナイザーの必要性
農村開発の新手法としてのSME(Small and Medium-Sized Enterprieses)やLEADERプログラムの構築、ダイバーシフィケーション

直接支払い型の財政支出よりも、持続可能型の換金回路の構築が地域経済にとっては必要

3.その他−住民の環境要望を政策実現するまでのシェーマ-

住民の具体的な環境要望を法制度の実現にまで向かわせるための手順

マスコミ報道などを契機にしての政策変更を促すキーワードの発生と、そのキーワードに関心 を示すNGO/NPOやオピ二オンリーダー、政治家、官僚の発生

その機会を捉えての政治家を中心にしての勉強会やシンポジウムの開催を仕掛けるとともに、 NGO/NPOとの接触・情報交換などの機会の発生

それらを契機にして、これらのテーマを省益にしたい官僚の取り込みと、これらのキーワード を法制化する際の、インセンティブの確定と、調査費などの予算措置の確保

法制化を議員立法(衆法)でやるのか、内閣法(閣法)でやるのかの選択。議員立法でやる場合、担当 する委員会の選択。野党窓口の確保。野党との修正合意の根回し。 内閣法でやる場合は、キーワードが複数省庁にまたがる場合、その繋ぎとして、まず、議員立法 先行型で行う必要もあり。

議員立法でやる場合は、与野党の委員会理事間で合意をはかり、委員長提案で、討論省略、一 挙に採決する方法もある。

パブリック・コメントによる内容修正のフォロー

環境政治家に求められる新たな役割-
提案するNGOからの提案の積極的取り入れと、それをたたき台にして省庁と、解決策を探る努 力
官僚任せにしない、政治家自身の環境要望のシーズ探し 特に、改革特区制度を利用した環境要望の実現化
貧弱な議員立法のインセンティブの改善
フォーカス・グループの結成と、そこからのフィードバック
NPO提案を法制化に結びつけられうるようなアドボケート・プランナーの活用
代議制とNPOとを結びつけうるNPO of NPO的存在の充実

以上

 

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