Sasayama’s Weblog


2009/12/15 Tuesday

サミュエルソンは、日本の失われた十年を、すでに予測していた、とのクルーグマン氏のコラム

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 07:07:29

2009年12月15日
 
大学にはいって初めて渡されたのがサミュエルソンのEconomicsで、「えっ、こんな分厚いの英語で読めっての?」ってのが最初のサミュエルソンとの出会い。

当時は、今みたいに、翻訳本はなかった。(川田 寿さんの「サムエルソン・経済学概説』が出版されたのは、1958年でした。)

それでも、図示も多かったので、それほどの圧迫感はなかった。

で、政治家になったばっかりで、大平元総理の地元でのしのぶ会に出席のため、仲間の同期の政治家と空港で待ち合わせていたら、大田誠一さんが、このサミュエルソンのEconomicsを小脇に抱えて登場したのには、びっくりした。

そうか、彼の前身は、プロフェッサー(福岡大学経済学部助教授、ブラウン大学客員助教授)だったんだ、と、そのとき、初めて認識を新たにした。
(たしか、このとき、大田さんは、「コンパクトシティ / G.B.ダンツィク,T.L.サアティ[他]日科技連出版社, 1974」という本も抱えていたような。私もこの本、それ以前に読んでいたんで、印象的でしたね。)

サミュエルソンの「公共財と私財における資源の最適配分決定論」なんてのは、今の日本の陳腐な「大きな政府、小さな政府」論争を凌駕するものがあるとも思われる。

昨日のニューヨークタイムズのブログ
Samuelson, Friedman, and monetary policy
で、クルーグマンは、次のように書いている。

「サミュエルソンは偉大な経済学者であったと同時に、現実の世界に対する正確な観察者でもあった。

これは、金融政策についてもしかりであった。

1980年代までは、多くのエコノミストたちは、ミルトン・フリードマンの主張でもあった「積極的な金融政策が大恐慌を防ぐ」との主張を正しいものとしていた。

このことについて、経済学者の幾人かが疑念を抱いたのは、1990年代の日本での失われた十年でのトラブルであったが。それでも、確たる疑念となるのは、2002年のバーナンキの宣言(参考「Bernanke: Federal Reserve caused Great Depression」ミルトン・フリードマンが、2000年10月1日のPBSのインタビューで、1929年の大恐慌をつくったのは、FEDの責任であるといったことについて、2002年11月8日に、バーナンキがシカゴ大学で行った講演で、フリードマンの指摘は正しく、FEDとしてもすまなく思う、といったことをさしている。)にまで、待つことになった。

しかし、サミュエルソンは、すでに、1948年の彼のEconomicsの353ページから354ページにわたって、次のように記述しているのである。

““今日、FEDの金融政策を景気循環を刺激するための万能薬のようにみなしているエコノミストは少ない。
単なる貨幣的要因だけでは、その兆候が完全には無視できない悪化の効果を伴った兆候であっても、兆候と原因とは同じ程度のものである。
政府債やローンの量を増加させたり、また、加盟銀行の法定支払い準備率の引き下げによったりすることによって、準備銀行は、マネーの供給や銀行預金の増加を促すことができる。
しかし、彼らは、促すことはできるが、ドラスティックな行動をとることがなければ、彼らは、強制することはできない。
われわれがFEDの方針をもっとも必要としているような極度の不況のさなかにおいて、加盟銀行は、ともすれば、新投資を行ったりローンを組むことにためらいを見せる。
もし、FEDが、公開市場において、国債を買い、それによって、銀行準備金を増大させるなら、銀行は彼らの資金を向けないであろうし、ただ、保有金として保有するだけであろう。
その結果は、何も起こらず、ただ、銀行の遊休現金のバランスシートが、既発債のバランスシートに置き換わるだけである。
もし、銀行や大衆が利回りが低い英国債と遊休現金との間の選好にまったく関心がなければ、FEDは、既発債の価格をせり上げることに成功しないであろうし、これは同じことになるが、利率をせり下げることにも成功しないであろう。
たとえ、FEDが、短期金利を押し下げることに成功したとしても、彼らは、投資家たちをして、長期金利が低いままとなるであろうと確信させることはできないであるう。
もし、スーパーマンの努力によって、彼らが上位格付英国債や民間債の利率を引き下げることができたなら、モーゲージやコマーシャル・ローンや株式上場などによってファイナンスされたよりリスキーな新投資に科せられた利率は、硬直性を保つであろう。
すなわち、拡張的通貨政策は、実効金利をそんなには下げることにはならず、単に、すべてのひとにより流動性を高めるためにのみ使われるであろう。

貨幣数量説に関していえば、貨幣流通の速度は、一定を保ってはいないといわれている。
“あなたは、馬を水辺に引っ張っていくことはできるが、馬に水を飲ませることはできない。”
あなたは、貨幣代替物に近い国債と引き換えに、マネーをシステムに押し付けることはできるが、新商品や新雇用に対して循環しうるマネーを作ることはできない。
あなたは、いくつかについての利率を下げることはできるが、すべて同じ程度には下げることはできない。
あなたは、低い金利で企業家をして、借りる気にさせることはできるが、彼らをして、金を借り、それをあたらしい投資財に使わせることはできないのである。”"

クルーグマン氏は、このコラムの中で、サミュエルソン氏は、この当時の記述で、現在のわれわれの抱えるジレンマをすでに語っていた、としている。

 

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