Sasayama’s Weblog


2004/10/10 Sunday

「名もなき作家」と「名もなきユーザー」と「名もなき貸本屋さん」を置き去りにしている「貸与権」バトル

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2004/10/10
著作権法附則4条の2を廃止する著作権法改正法は平成17年1月1日に施行され、施行日までに、「貸与権管理センター」との著作権集中処理機関が書籍・雑誌等に関する著作権者から貸与権の処理の委託を受けることにより、スムーズに権利処理を行い、ライセンス料さえ払えば書籍等の貸与事業自体は禁止しないことが前提となっている。
で、そのセンター構想が、双方条件の大幅な不一致により決裂したといううわさなのだが。
そこで、このセンター構想なるもののスキームを改めて、このサイトでみてみると。
なるほど、このスキーム上では、権利を委託する側は出版社となっていて、許諾申請をするのが利用者となっていて、品物を取り揃えたり、許諾料を徴収するのが、代行店となっているのだが、実は、この一件すっきり見えるスキームのそれぞれ(出版社・利用者・代行店)に、しっかり、それぞれの団体がはりついているという仕掛けだ。
かたや「貸与権連絡協議会」で、構成団体は、○21世紀のコミック作家の著作権を考える会社団法人 日本雑誌協会 ○日本児童出版美術家連盟○社団法人 日本児童文学者協会○社団法人 日本児童文芸家協会○有限責任中間法人 日本写真著作権協会○社団法人 日本出版取次協会○社団法人 日本書籍出版協会 ○日本書店商業組合連合会○社団法人 日本推理作家協会日本美術著作権連合○社団法人 日本文芸家協会 ○杜団法人 日本ペンクラブ○社団法人 日本漫画家協会マンガジャパン というわけで、取りまとめ役は、どういうわけか、漫画家さんが主力のようなのは、「コミックレンタル」がおいしいマーケットというせいか。
かたや、レンタル業者の団体であるCDVジャパン(日本コンパクトディスクビデオレンタル商業組合)。
「では、エンドユーザーの声というのは、このスキームでは、どう反映されるのだろうか? 何らかのボードが必要なのではなかろうか?
やはり、団体の思惑も、出版社の思惑も、権利利用者の思惑も、文化庁さんの思惑も、エンドユーザーとしての「利用者」の声を原点に、するべきなのだろう。」 という問題意識が、このスキームを眺めているうちに、私自身の中に、猛然と、湧き起こってきてしまった。
ちょうど、私が初当選してまもなく、1981年10月、レコード会社13社が、大手レンタル・チェーン4社を相手に、レンタル行為が “複製権の侵害 “に当たるとして、東京地検に貸与の差止め請求したのをきっかけに、1984年3月には、日本レコードレンタル協会が設立され、同じく、 1982年7月、「貸しレコード規制法案」が提出された。 当時の文教族の 森喜朗前総理と、まだ、若かった白川勝彦さんとの自民党内でのバトルがあったのを鮮明に覚えている。
その流れで、レンタル会社側が1984年4月に通産省の指導を得て作られたのが、この「日本レコードレンタル商業組合」(1998年に「日本コンパクトディスクビデオレンタル商業組合(CDV-JAPAN)」に名称変更)というものだ。 その後、1984年5月の著作権法改正によって「貸与権」が新設されたが、このときには、零細な「貸本屋さん」を保護するとの大儀名文から、書籍・雑誌を除外するとの暫定措置がとられた。
皮肉にも、このころの著作権課長は、今のJASRACの大御所である吉田茂さんであったはず。 このときは、森さんが文部大臣であった。
これ以後、著作者、漫画家は著作権料を請求できない状況が続いてきたが、その後、大規模チェーンのビデオレンタル店で、マンガや推理小説のレンタルが始まり、同じく、2003年の文化庁の著作権分科会の下に置かれた法制問題小委員会で、書籍と雑誌の貸与権の確立という問題が審議されるようになり、附則第4条の2(貸与権(著作権法第26条の3)を書籍・雑誌には当分の間適用しない、)を削ることが、2004年3月5日提出の著作権法一部改正によって決まり、2005年1月1日から施行されることになった。
この施行までの間に、権利者と利用者がよく話し合うようにとのものであったが、これが、今回決裂したというのである。
現在、貸本業は全国で239店舗、都内では29店舗に減少しており、専業の貸本業は全国で150店舗程度にすぎないといわれている。
全国に1100店舗を展開するレンタル大手の「TSUTAYA」は著作権者との契約ベースでコミックレンタルを開始するとしている。
「ブック・オフ」等のいわゆる新古書店は譲渡権の消尽した中古本を販売しているため貸与権の問題は生じない。
私なんかが、よく利用している「ネットカフェ」のマンガ分については、日本複合カフェ協会なるものが、窓口になっているようだ。 全国約2000店のマンガ喫茶のうち、この日本複合カフェ協会に加盟するのは450店ということで、この「日本複合カフェ協会」と「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」、日本雑誌協会の3団体が、喫茶店内のコミック本利用について、著作者側に利益の一部を還元することで暫定合意したようだ。
しかし、これについても、「店内は貸与権が及ばなくて、店外だけなぜ、貸与権が及ぶのか?」などという、やや、言葉は悪いが、ホテトル的グレーゾーン論議が交わされているようだ。
これらの問題は、貸与権に限らない。
複写権についても、貸与権の場合と同じような構図が見える。
複写権に関する著作権等管理事業法にもとづく管理事業者としては、(財)日本複写権センター(JRRC) 社団法人情報科学技術協会(INFOSTA) 有限責任中間法人学術著作権協会(JAACC  かつてのACCSから譲渡を受け設立) (株)日本著作出版権管理システム(JCLS) などがある。
スキームの上では、包括許諾契約と個別許諾契約とがあるが、使用料の違いをめぐって、管理事業者間でいろいろ、揉め事があるようだ。
ここにおいても、エンドユーザーが口を出す場はないようだ。
あるかたは、このエンドユーザー置き去りの、現在の複写権の管理事業のあり方について、次のような提言をされている。
「利用者代表との協議の条件をゆるくすること 管理事業者は利用者代表から協議を求められた場合それに応じる義務があるが、利用者代表となるための規定が厳し過ぎる。業界団体のレベルでないと、利用者たりえない。個人などの一般利用者が管理事業者の使用料規定に対して異議を述べたくても、現在の利用者代表の条件を満たすことは非常に難しい。著作物の利用促進を図るためには、利用者代表となる条件を緩和し、個々の利用者が管理事業者と協議を行えるような条項にすべきである。」
同じ指摘は、貸与権についても、当てはまるであろう。
まあ、こうして貸与権発祥から現在までの長い歴史を見ると、簡単にいえば、レンタルつぶしがあって、貸与権が生み出され、零細貸し本屋さんを守るために、レコードと雑誌・本との扱いが、イコールフッティングでなくなったのが、暫定措置が廃止され、レコードと本・雑誌とがイコールフッティングになっての現在なのだが、その間に、貸し本屋さんは、ほとんど、希少動物のようになってしまって、その隙間テリトリーをコミックレンタルで埋めようとするレンタルレコード屋さんたちが、かわりになって、がんばっているというバトルロワイヤルの構図のようだ。
となると、どうも見えてこないのが、名もなき「書き屋」さんたちと、名もなき「ユーザー」、そして、大義名分として利用されつくされながらも、黙って死に絶えて生きつつある「名もなき貸し本屋さん」なんだけど。
どこかへんじゃない? この有名作家と、有力業界中心のバトル?
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