2005/03/17(Thu)
どうやら、本格的な原油高時代を迎えたようだ。
ここで、頭の整理として、この原油高の時代に、何を指標に見ていけばいいのかを、メモ的に記してみよう。
かつて、「OPECの3方程式」というのは、次のようなものであった。
「世界なりアメリカがインフレ傾向にあれば、原油価格を引き上げないと、相対価格が減価してしまうので、原油価格を引き上げる。」
「世界成長率があがリ、インフレ機運がたかまれば、原油への需要増となり、原油価格を引き上げる。」
「ドル価値が下がっているとき、ドル建ての原油価格の手取り実収の目減りを回避するために、原油価格を上げる。」
というのが、これまでの「OPECの3方程式」なのだが、今回は、この方程式も、ちょっと様変わりを見せているようだ。
第一、OPECが、原油価格を上げたいのか、上げたくないのか、やむを得ず上げるのか、その誘因が単純ではない。
だから、これからは「OPECの3方程式」というものではなく、「生産限界におちいったOPECの価格コントロール不能時代の原油高のもたらす逆方程式」という、これまでとは因果逆転した考えで行かなければならないのではないのかなとも、思う。
すなわち、OPEC側の意向や思惑にかかわらずに、必然的に原油価格が値上がりする時代となり、原油高になれば、玉突き衝突的に、どの要因に影響が出てくるのか、という視点からの原油方程式の再構築である。
その要因とは、「ドル安」「アメリカの長期金利」「米国債」「アメリカの「双子の赤字」-財政赤字と貿易・経常収支赤字」である。
「原油高になれば、金高になり、基軸通貨ドルへの信頼が、相対的に、減価してきて、ドル安の方向となる。」
「ドル安になれば、アメリカの債券安すなわち長期金利の上昇を招く。」
「本来貿易赤字は、ドル安によって、是正されるはずなのに、いまのアメリカでは、ドル安のもとで貿易赤字がふくらみつつあるという事態も想定される。」
「原油高のもとでのアメリカの財政赤字の存在は、いっそうの将来不安を招き、長期金利の上昇に拍車をかける。」
「長期金利の上昇が続けば、保有債券の含み損が拡大する。」
「保有資産の含み損が膨らんでくると、ドル資産のユーロや金へのシフトが始まる。」
てな方程式を仮に考えてみたが、ちょっと、悲観的にすぎるかな?
これを、米国債を大量に保有している日本から見ての方程式だって十分考えられるが、こっちのほうは、もっと悲惨な方程式になってしまうようだ。
ところで、早くも、グリーンスパン・バッシングが始まったようで、何やら、アメリカ経済にも、先行きの不透明感がいっそう増してきたようだ。
このサイト「Greenspan out of favor, out of touch」(「人気を失い、現実を直視しないグリーンスパン」とでも、訳すのでしょうか?)http://www.newsday.com/news/columnists
/ny-opmcc174178084mar17,0,3711452.column?coll=ny-news-columnists
では、一時は「神」といわれるまでのオーラのあったグリーンスパンの衰え振りを、「グリーンスパンの風格(patina)がなくなった。」とか、「グリーンスパンは、雇われ政治家(”a political hack”)になってしまった。」とか、「グリーンスパンは、クリントンからブッシュに早変わりした。」とか、こっぴどい表現で書いている。
ああ、世の東西を問わず、晩節は汚したくないものですね。
参考 原油の単位
1 barrel = 42 gallons = 158.9873 liters = 5.6146 cu ft = 0.159 cu meters = 0.136 metric ton
1 metric ton of crude = 7.35 barrels of crude
「メトリックトン」は、ヤード・ポンド法でのトンと区別してメートル法での単位であることを明示するために使う表現です。(1トン=1,000kg)
http://www.nigerianmuse.com/important_documents/what_barrel_of_crude_oil_makes.htmご参照