Sasayama’s Weblog


2005/01/28 Friday

近頃気になるBSE研究 二つの話題

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:34:53

  
2005/01/28
null今年の1月に入ってから、BSEに関する注目すべき研究成果がいくつか発表された。そのひとつは、「慢性炎症を持ったBSE罹患動物は、感染を拡大させやすい」というの研究であり、もうひとつは、昨日発表された「霊長類にBSE経口感染実験をしての興味深い成果」、この二つである。

この二つの研究に共通するのは、「プリオンは、どのような状況なり、曝露量で、種の壁を、乗り越えるのか? 」ということである。

前者の研究は、1月20日発信のthe journal Science 
のScience Express Reportsに「Chronic Lymphocytic Inflammation Specifies the Organ Tropism of Prions」http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15661974(「慢性リンパ球性炎症が臓器のプリオン選択性をたかめる原因になる」とでも訳すんでしょうか?)の題名で、のっている。

スイスのチューリッヒのthe University Hospital のAdriano Aguzzi さんをはじめとする共同研究で、げっ歯類動物による実験では、肝臓、腎臓、脾臓にも、プリオン蓄積が見られた。

このことは、農場内の異種の動物間で、同じプロテインが動く可能性があるということが、重要な問題であると、Adriano Aguzzi さんは、指摘している。

たとえば、スクレイピーに罹っている羊が、農場内を移動すると、炎症時に、農場内の他の種類の動物にプリオン病を拡散させる、といった具合にである。

そのことから、これまでの危険部位管理でよいのか、プリオン・リスク管理についてのの見直しをしなればならないのではないかと、Adriano Aguzzi さんは、言っている。

また、肝炎の発症など,腫脹の症状を示す場合には、これまでのプリオンの危険部位を脳やリンパ組織に限定して考えることは、もはや、正当性を欠くと、言っている。
このことについて、「you never say never」(「決してない」ということは、決していえない。) と、William Hueston博士は言っている。
http://www.medicalnewstoday.com/medicalnews
.php?newsid=19169
http://www.miami.com/mld/miamiherald/living/health/10692109
.htm
も、ご参照

後者の研究は、1月27日にThe Lancetに発表された「Risk of oral infection with bovine spongiform encephalopathy agent in primates 」http://www.thelancet.com/journal/vol365/iss9456/
abs/llan.365.9456.early_online_publication.32139.1
という、Jean-Philippe Deslys氏ら、フランス原子力庁BSE研究チーム(The Commissariat à l’Energie Atomique scientists)の論文で、種の壁がどのようなものかを、人間と同じ霊長類であるマカクザル(macaques)を使って実験したものである。
http://europa.eu.int/comm/food/fs/sc/ssc/out228_en.pdf http://www.theglobeandmail.com/servlet/ArticleNews/TPStory/LAC/20050127/HMADCOW27/TPHealth/も、ご参照

それによると、ここでは、二匹のマカクザルに対して、BSE感染牛からとった5グラムの脳のホモジェネート(ミキサーで破砕した細胞のジュース)を経口で投与したところ、一匹のマカクザルは、投与後、60ヶ月後に、vCJDに似た発症を示した。

しかし、もう一方のマカクザルは、投与後、76ヶ月たっても発症しなかった。

これらの研究によって、人間に対して食品を曝露することによるリスクを仮定することができたし、また、現在のBSEの人間への伝達経路などについても、公衆衛生上で、有力な手段があることが分かってきたと、研究者たちは言っている。

ちなみに、この種の実験は、マウスによるものは、これまでにも
http://vir.sgmjournals.org/cgi/content/full/80/11/3035のようにあった。

このマカクザルによるフランスの実験結果をめぐって、http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4210003.stmのように早速、論議が沸騰している。

イギリスの専門家は、「経口感染にいたる量については以前謎のままであり、引き続きサーベイランスが必要だ。」と、述べている。

このフランスの研究では、少なくとも、1.5キログラムのBSE罹患牛の脳組織を人間が食べなければ、vCJDに罹ることはないとしている。

Jean-Philippe Deslys博士は、このことについて、イギリスが、30ヶ月以上の牛について、他のヨーロッパ諸国と同じように、スクリーニングにかけても、これまでの30ヶ月以上の牛の食用販売禁止措置と同等の安全策となりうる、としている。
また、氏によれば、牛→牛間の感染リスクに比して、牛→ヒト間の感染リスクは、7倍から20倍、リスクが少ないものだとしている。

また、牛→ヒトへのBSE感染の潜伏期間については、ヒト→ヒトへの感染に比して、三分の一長いとしている。

今回の研究データは、牛→ヒトへの最小感染量を決定しうるものではなく、現在のヒトへの食供給にあたって、BSE感染リスクを阻止しうるに十分な方法なのかどうかを検証しうるに過ぎないものであるとしている。

そのためには、引き続き、サーベイランスが必要なものであるとしている。

Deslys博士の言うに、人間がvCJDに感染するためには、不可能なくらい大量の脳を食さなければならない、としている。

また、現在BSE対策のために採られている施策は、食の安全と将来のリスク回避のためには、十分なものである、としている。

これについて、the National CJD Surveillance UnitのJames Ironside教授は、今回の小さい規模での実験結果と、サルによる実験結果では、まだ、未知の部分が多いとしている。

また、教授は、新しいvCJD患者発生数が減少してきているからといて、vCJDの終焉を仮定することは、間違いであるとしている。
確たる結論を得るまでには、かなり長い期間のサーベイランスが必要になると、している。

以上の二つの実験結果は、BSE感染様式は、多様であり、また、種の壁の強さも、多様であることを示しいる。

これまでの、一律的なリスク管理では、不十分であることを示唆した研究成果であると、見て取れる。

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