田園環境図書館
こうして…森と緑は守られた 川名英之
三修社(1999年12月)
( 2,500円)
ドイツ語辞典で有名な出版社から、「環境先進国ドイツを知る」シリーズの第一巻として出版された。

ちなみに、第二巻「ドイツ企業の環境サバイバル戦略」第三巻「ドイツの環境政策」第四巻「ドイツ市民生活と廃棄物」第五巻「ドイツの環境教育」(いずれも仮称)である。

ドイツがいかに環境先進国と世界から注目されるに至ったか、その素地を、筆者は、「事実を重んじる環境教育」に、早くから、取り組んできたことにあるとみている。

この、ドイツの事実教育は、私のHPのコラム「田園を勇気づけた人々」のなかでも述べているが、第二次世界大戦以前から、行われており、日本の新渡辺稲造は、この考えを、郷土教育に応用しようとした。

この様に、この本では、戦後のドイツの環境トピックスのみ掲げられているが、戦前からの環境的な流れも、それ以上に重視しなければならないのではないだろうか。

例えば、この他の点についていえば、ビオトープの考え方は、戦前のトロールの考え方に沿ったものでもある。

筆者は、ドイツが環境の危機に目覚めたのは、1970年代から1980年代にかけての、大気汚染・酸性雨によるシュワルツバルト(黒い森)をはじめとしたドイツの森の衰弱・枯死を契機としたものであるとしている。

これを契機に、緑の党など、政治的な環境勢力の拡大が、環境関連各種立法の後押しをしたとしている。

本書の巻末には、「ドイツの環境略年表」が掲げられており、一つの資料集としても価値のあるものである。

それにしても、1994年10月の「循環経済・廃棄物法」にしても、1998年4月の「土壌保全法」にしても、その成立に至るまでには、かなりの熟成期間を経ていることに、敬服をおぼえる。

日本が、これら諸法の精神にキャッチアップするには、その取り組みは、一年でも早いにこしたことはない。

本書で、もっと重点的にとらえていただきたかったのは、前述の、ドイツが大戦前からもっていた、環境的風土からの考察であり、もう一つは、1994年10月のドイツ連邦共和国基本法改正により、環境保護を明文化した経緯の詳細である。

とくに後者は、今後日本が、なにはともあれ、日本国憲法上に、環境重視の姿勢を明記する上で、貴重な先例となりうるからである。

総じて、文章が、やや、ジャーナリステックに流れている嫌いはあるものの、大戦後の環境先進国ドイツの、これまでの経緯を気軽に読むことのできる、好著であることには間違いない。

今後の同シリーズの成功に期待したい。

目次に戻る

HOME -オピニオン -政策提言 -発言- profile & open - 著書 - 政策行動-図書館-掲示板 -コラム- リンク- 政策まんが