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雪景色 地域通貨は、地域の内発的発展を促せるか?
 







消費の挫折・投資の挫折
バブル崩壊は、地域経済、コミュニティ、家族関係に目に見えない変化を及ぼした。

心理的にも、「買う気がしない」「借りる気がしない」「投資する気がしない」−−というように、人々に、信用創造への挫折と共に、消費への挫折をもたらした。

これらの挫折感は、相当根深いものがあり、何らかの新しいパラダイムを提示しなければ、この回復や払拭は、不可能なものと思われる。

一方、地域経済では、どうだろう。

グローバリゼーション・世界標準の波は,農村地域にも押し寄せている。

規制緩和の対価として、インター周辺に林立する大型店は、豊富な品揃えで、2-30km遠方の客まで呼び寄せ、旧市街地の商店街は、次々に閉店へと追い込まれている。

また、公共事業に投下される金額は結構多いのに、なぜか、地域経済は、活況を呈しない。

原因は何か。

地域内で発生する購買力も投資力も、地域内経済循環の中に組み込まれてることなく、地域外経済循環へと水漏れ(リーケージ)を起こしている。

これによって、地域循環型市場が、なかなか形成されにくいことになる。


会話のために消費する?
地域コミュニティの面では、どうだろう。

1993年の「国民生活白書」のなかで、「人と人とのふれあいを求めるために使う経費」を「交流消費」と名づけた。

この交流消費のために、本来の消費をするような、次のような例もある。

あるお婆さんは、毎日喫茶店に行くことが、日課だ。
もちろん、珈琲好きなのだが、目的は別にある。注文をし、若い店員が、珈琲を持ってきてくれるわずか1〜2秒が、お婆さんがその日のうちに他人と会話を交わす、唯一のチャンスなのだ。
購買という行為の中でしか、他人と会話できない、また、話し掛けられもしないのが、このお婆さんにとっての現実なのだ。

消費とは、金銭的犠牲を払って、自分が満足する財やサービスを得ることにあるとすれば、ロスなく、もっとダイレクトにこのお婆さんの「話したい、話されたい」という欲求を低コストで満足させるシステムは、あるはずだ。


必要な環境・福祉のための決済システム
地域の環境面ではどうだろう。

自分が所有している、近くのオープンスペースが、ゴミの捨て場と化してしまっている。

なんとか、環境美化したいのだが、自分にはその体力がない。

昔であれば近所の親戚縁者に頼むのだが、都市化した今では、頼める人もいない。

行政では埒があかないので、応分の負担をし、ボランティアに頼むのが一番よいのだが、そのシステムがない。

環境が、金で買えない非貨幣部門にある限りは、自力か、行政か、善意のボランティアに依存するしかない。

もし、環境や福祉・介護などの非貨幣部門についての決済システムがあれば、もっと周囲への気兼ねなく、身の回りの環境改善はできるのだが−−、こんな要望も多い。


自給的農業確立のために
地域農業・農村社会ではどうだろう。

ウルグァイラウンド後の農業・農村は、やや、元気をなくしている。

しかし、新しく株式会社・農業生産法人制度の創出などによって、農村地域でも、旧来の考え方にない起業化を目指そうとする動きもある。

その場合のキーワードとなるのが、農業の自給化である。

「地産地消」(地域で生産された農産物を、地域で消費する)という言葉は、10数年以上も前から、一部の有識者によって唱えられていた。

私の郷里の佐藤喜作さん(秋田県由利郡仁賀保町)は、その代表的な論客である。

しかし、この間(かん)の高度成長化の日本の農業農村は、この言葉に耳を傾ける余裕はなかった。

ウルグァイラウンドを経、日本の農業・農村が否応なくグローバル・スタンダードに組み込まれた今、グローバリゼーションと協調しながらも、地域経済へのこれ以上の浸食を防ぐためには、循環型農業・農村社会を構築することを旨とした、自給的農業確立のための試行錯誤が必要だ。

その前提となるのが、地域農業者の「プロシューマー化」(生産者であるとともに、他の生産者のつくる生産物の消費者であること)である。

鹿児島県の南西諸島や沖縄にいくと、いまでも「ユイマール」という互助組織が、さとうきび生産労働に活用されていることに驚くが、新しい株式会社・農業生産法人を中核とした地域農業者の「プロシューマー化」が実現するためには、この「結」または「ユイマール」に似た「互助決済システム」(個対個のサービスの相互交換を報酬の形で決済するシステムで、これには、「お返し」「手間返し」のような伝統的な手間決済も含まれる)というようなものが必要になってくるであろう。

また、地域の農業者がお互いの生産物の消費者であるために、「自給を社会化する場所」としてのシステム(直売所など)が必要となるし、また、農作物の産地の形態も、「多品目・少量産地化」していく必要がある。


プロシューマーへの道
家族関係はどうか。

「夫は生産者、妻は消費者」という役割分担は、とうの昔に崩壊している。

問題は、それに替わる新たな役割分担を可能とするシステムがないままに、そのすきまに、外部よりの高価な民間サービスが、入り込んでしまっていることである。

ちなみに、農村部に行けば、玄関先には宅配食材を入れるポリスチロール・コンテナが並び、そのことが、そのまま、農家の主婦の忙しさを現わしている。

また、バブル崩壊後、企業社会の拘束から解き放たれた企業戦士が、地域に、家庭に、帰ってきたが、恐らく、これらの人々も、プロシューマーとして、これまで企業で培ってきた能力で、地域に貢献できるものがあれば、提供したいし、その見返りに、同じ地域の人から、市場相場より安いサービスがあれば、提供されたいと、思っているに違いない。

以上にみたように、経済のグローバル化に順応しながらも、それに組み込まれ得ぬ「ニッチな経済」の中における地域内経済循環をどうたかめるか、また、本来貨幣部門ではまかないきれぬ福祉・介護・環境・自給・相互扶助などの非貨幣部門でのサービスの相互決済システムをどう構築していくかが、大きな課題となってくる。

そのための有力な手法の一つとして注目されてきたのが、地域通貨である。


地域通貨の歴史
近代国家成立以降、一地域内で複数の通貨が流通した例はいくつかある。1830年代、ロンドンにおけるロバート・オーエンの「労働貨幣(Labour Exchange Notes)」が、その代表的なものである。。

中央銀行が成立して以降の代表的な地域通貨として、1934年、スイス・チューリッヒのWIR 経済リング(現在のWIR銀行の前身)で発行されたWIR(ヴィア)は、70年近くたった今でも、使用されている。

1983年、カナダのブリティッシュ・コロンビア州ヴァンクーバー島で、マイケル・リントンが、LETS(Local Exchange Trading System)を提唱した。同じ時期同様のシステムは世界各地で発生し、、カナダより早くは、オランダ、スイスなどで普及した。その後、このシステムは、カナダを始め、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランスなどで、急速に普及することになる。

日本においても、1991年より生活クラブ生協神奈川が、「神奈川バーターネット」の名前で、4ヶ月の期限付きで実験を行った。

LETSの通貨の名称は、国なり地域によって異なっており、その数は、カナダ27、アメリカ110、イギリス500、フランス300、オーストラリア250、イタリア100、オランダ90、ドイツ90、ニュージーランド70、ベルギー29、アイルランド20、オーストリア19、スウェーデン14、ノルウェー7、デンマーク3、スイス14、メキシコ1、とのことである。
そのほか、ロシアにおいても、これに似たシステムがあるとされる。

1985年には、アメリカ・ワシントンで、弁護士エドガー・カーン氏の発想により、タイムダラー(Time Doller)という、労働貨幣の一種が発行された。

タイムダラーは、介護・福祉・社会貢献活動などへのボランティアサービスを、「1時間=1タイムダラー」の単位で評価し、これを預託(時間預託)し、後に、これを使って、自らの介護などのサービスをうけるものである。

このタイムダラーは、地域通貨と言うよりは、時間預託システムとしていちづけられている。これは、イギリス、日本、フランスにおいても採用されている。

1990年代にはいって、メキシコ・エクアドルで「トラロック」(TLALOC)という、個人振出し小切手による決済システムが生まれた。

1991年には、アメリカのニューヨーク州イサカ市で、「イサカ・アワー」とよばれる地域通貨が発行された。

これらの試みは、発展途上国にも広がり、1995年には、エクアドル・トクチウコで、「コンプロミソス」という地域通貨を発行、1998年には、セネガル・ダカールで「ボンス・ドゥ・トラバーユ(労働券)」という代替貨幣を発行、その他、ウルグァイ、アルゼンチン(RGT)、タイなどで、同様な試みが始まっている。
このうち、タイでは、カナダ政府よりの資金援助により、現在地域通貨の実験プロジェクトが、はじまっている。


日本の地域通貨

これらの海外の地域通貨発行の動きに呼応し、日本での動きも活発だ。。
日本で現在創設されている地域通貨は、次のようなものである。

「Peanuts」 1999年2月より、千葉まちづくりサポートセンターが運営し、千葉県内で流通
「レインボーリング」 N.W.O(New World Order)代表安部芳裕氏が発行のLETSで、日本全国対象
「ボラン」 「賢治の学校」発行の会員間交換サークルLETS
「おうみ」 草津コミュニティ支援センター事務局発行の地域通貨
「ハートマネー安曇野リング」 シャロム有明の家を中心で稼動のLETS
「だんだん」 愛知県関前村発行の日本型タイムダラー
「NALC」 元気な50−60代の中高年が、70−80代のお年寄りを、時間預託で奉仕・助け合いをする、タイムダラーの変形
時間預託では、このほか、「ボランティア労力銀行」(1973年)、「神戸ライフ・ケアー協会」、「日本ケアシステム協会」、「さわやか福祉財団」(ふれあい切符制度)などがある。
「エコマネー」 通産省サービス産業課長の加藤敏春氏が唱える「日本版LETS」。
札幌市、横須賀市、三鷹市、草津市(滋賀県)、千葉市、栗山市(北海道)(「くりやまエコマネー研究会」の「クリーン」)、富山市(「富山エコマネー研究会」の「キトキト」)、高岡市(富山県)(「富山エコマネー研究会」の「高岡ドラー」)、山田村(富山県)、飯田市(長野県)(「駒ヶ根青年会議所」の「ずあら」)、神戸・姫路市、松江市(島根県)(「松江まちづくり塾」の「ダガー」)、中村市(高知県)、石垣市(沖縄県)などで、導入の取組みないし検討がされつつある。
また、静岡県、高知県、愛媛県、沖縄県では県ぐるみで取組の動きにある。


代表的地域通貨「LETS」と「エコマネー」

以上の各種ある世界の地域通貨のうち、代表的な「LETS」と「エコマネー」について、その特色をみてみよう。

(1)「LETS」

国際通貨による貨幣部門の一部を地域通貨に置き換えるもので、参加者は、次の運営原則のもとに、財・サービスを自発的に取り引きし合う。

(4つの運営原則)
  1. 同意の原則
    地域通貨取引への加入・脱退・取引への参加は、本人の同意のもとに行われること
  2. 無利子の原則
    取引決済口座の残高には、利子がつかないこと
  3. 共有の原則
    LETS運営に関わる共通管理費は、利用者が、利用程度に応じて平等に負担すること
  4. 情報公開の原則
    取引参加者の全ての行動に必要な個人取引は、公開され、参加者は情報入手しうること

(運営の仕組み)
  1. 運営者として、登記人または記録調整者をおく
  2. 登記人または、登記調整者は、参加者の口座を開設管理し、取引を記録し、取引明細書を発送する
  3. 参加者の口座は、全てゼロからスタートする
  4. 参加者は、提供したいサービス(オファー=Offer)を、目録にのせ、それを見た取引の相手と交渉し、取引価格を決め、小切手にその金額を記入し、両者署名し、運営者に送る
  5. 参加者は、提供されたいサービス(ウオンツ=Wants)を目録より選び、4と同じ手順により、提供者の小切手に署名し、運営者に送る
  6. 登記人は、参加者(口座保有者)が提供したいサービス(オファー)の小切手金額を貸方に黒字で記録する
  7. 登記人は、参加者(口座保有者)が提供されたいサービス(ウオンツ)の小切手金額を、借方に赤字で記録する
  8. 参加者(口座保有者)は、他の口座保有者の口座残高や、取引実績について知ることができる
  9. この口座残高について、利子は課されないし、残高は国民通貨で支払われない

(取引の仕方)
  1. 「LETS」参加者には、口座番号入りプラステックカードが渡される
  2. 「LETS」システム参加者には、取引実績シートが配られる
  3. 参加者は、取引実績シートに、取引年月日、通貨支払者名、口座番号、受取者名、受取り者番号、金額を記入する
  4. 参加者は、それらを記載した実績シートを、一定期間分まとめて、登記人に送付する
  5. 登記人は、これら実績を、口座管理用コンピューターに入力し、各参加者の取引高や残高を計算する
  6. これら取引高と残高一覧表は、参加者に毎月、郵送される

(提供されるサービスの例)
1,子供の世話、2,車の移動 、3,事務の手伝い、4,機械の修理、5,日曜大工、6,工芸の指導、7,庭仕事、8,手工芸、9,外国語会話指導、10,料理指導、11,物品貸出し、12,マッサージ、13,カウンセリング、14,スペース・レンタル、15,スポーツ指導、16,楽器・ピアノ指導、17,コンサルティング、18,車洗い、19,ボランティアの機会提供、20,モーニングコール

(いくつかの問題点)
  1. サービスのレベルと価格の差
    プロの世界に通用する人がLETSで技術提供しても、それ並みの評価金額は得られない。
    これについては、技術レベルによる一定のランクを設けているLETSもある。
    サービスの時間重視か、技能重視かは、その技術レベルによって異なってくる。

  2. フリー・ライダー問題
    LETS退会時の決済については、口座残高が赤字(サービスは提供されたが、自らからはサービス提供をする機会が少ないまま退会)の場合。それを、国民通貨により決済するLETSと、赤字のままにしておくLETSとがある。
    しかし、参加者個々の取引情報は、全て公開されているんで、タダ乗り常習参加者との取引は、自然に縮小していく。

  3. 睡眠口座の増加
    会員の何割かは、参加しているだけで、オファーもウオンツもない。
    これら、睡眠会員対策として、定期的な参加者の更新をはかっている。

  4. ほしいサービス提供の不足
    参加者のニーズを適確にとらえ、サービスの品揃えを、常にしておく必要がある。

  5. 経済の好・不況の影響
    不況時には、LETSはにぎわうが、好況時には、利用が減少してしまう。

  6. 社会的底辺の人々の収入機会への圧迫
    これらの人々の現金収入・手間仕事と、LETSのサービスとは、競合する分野が多い。
    政府の失業対策、地域の起業政策と有機的に連動したLETSの運用がのぞまれる。

(今後の展望)
  1. インターネットと電子マネーの活用
    電子マネーによって、取引決済の多様化がはかられ、インターネットによって、Web上での個人情報の把握、提供サービスの確認と申し込みが容易となる。
    また、ICカードの普及で、国民通貨と地域通貨の混合使用が可能となる

  2. 他地域LETSとの広域連合化
    ある地域の地域通貨が、他地域の地域通貨と、スワップ取引できるようになる

  3. NPO等団体への残高提供
    参加者が余分のLETS残高を、NPO等に寄付することによって、NPOはこれらの集積残高をつかって、多角的サービス提供によるボランティア支援を受けることができる。

  4. 市民起業への発展
    LETSへの参加者の技能サービスの提供によって、参加者は、自らの技能に自信を持つことができ、これが、将来プロとして、起業しうる芽となる。
    これらの技能に目覚めた参加者の集積が、コミュニティにおける市民起業の創業につながる。

  5. 政府・自治体の支援
    地域経済やコミュニティの活性化のために、行政サイドがLETSを積極的に位置づけ、それをサポートしていく動きにある。
    また、失業対策との連動も可能となる。


(2)エコ・マネー

「日本版LETS」とよばれるもので、LETSとの違いは、次の通りである。

  1. インターネットと電子マネーによる決済システム
    インターネット上のWebを使うことによって、より、リアル・タイムに、参加者個々取引状況や、提供サービスの一覧申込などができる。
    また、電子マネーを使うことにより、地域通貨だけでなく、電子身分証明書、医療福祉サービス、電子行政サービス、ATM、インターネット・ショッピング、マイル・サービス、各種料金引落し、カード型PCなどの機能が付加できる。

  2. 取引の対象
    取引の対象として、(1)コミュニティ領域−介護・福祉 (2)自然領域−環境サービス (3)文化領域−伝統芸能等文化促進サービス (4)生活領域−日常品取引

  3. 運営の形態
    設立主体は、行政・企業・各種NPO・組合などの共同イニシアティブにより、NPOとして「エコ・マネー運営団体」を設立。
    運営団体は、市町村当局や、自治会と連携し、ボランティア・サービスのニーズを把握し、システムに登録する。

  4. サービスの提供と決済
    ボランティアを志願する住民は、インターネットを通じ、ボランティアの提供を申し出、実行する。
    住民は、提供したボランティアの実績に応じて、「エコ・マネー」の支払いを受ける。
    住民は、「エコ・マネー」を保有し、将来、自分が介護サービスなどを受ける時の支払いにあてたり、受け取った「エコ・マネー」を高齢者などの知人に譲渡し、それらの人々が受ける介護サービスへの支援をする。

  5. NPOへの寄付
    「エコ・マネー」を、NPOに寄付することによって、NPOの活動を支援する。

  6. 公的事業のためのファンド造成
    「エコ・マネー」を更に発展させ、住民よりの「エコ・マネー」の集積により、地域における「まちづくり」や、「環境改善」さらには、「PFI事業」に必要な資金ファンドの造成に使うことも、将来可能となる。


地域社会に変革をもたらす

以上、地域通貨を代表する「LETS」と「エコ・マネー」の特色について述べた。
では、これらの地域通貨は、地域社会にどのような変革をもたらすのであろうか。
次の諸点が可能性としてある。

  1. 地域の人々の接触の拡大と自立型コミュニティの再生
    貨幣経済のもとでは、売り手・買い手の関係で、地域の人々が接触するのに対し、LETSでは、同一人物が時には、サービスの提供者であり、受け手でもあるという、対等・互恵の人間関係のもとに、人々は接触し合うことになる。
    このことによって、自立型のコミュニティが徐々に形成されてくる。

  2. 地域資源循環システムの構築
    これまで、他の地域との間で行われてきた物流や、域外への製品輸送が減少し、さらに、農業生産物の地域内自給比率の向上などによって、地域内資源循環型経済システムが構築される。
    また、地域の人々の消費パターンは、これまでの大量消費から、地域の生産力やサービス提供力の、「範囲内での持続可能型消費」へと転換していく。

  3. 世代間平等性の確保
    LETSは、信用創造機能を持たないため、投機的活動を伴わない。
    このことは、結果的に、後世代にツケを回さないことになり、同一世代間と異世代間や平等性を確保することになる。
    また、環境的、社会的に有害なプロジェクトの実施を、制限することになる。

  4. 国民通貨と地域通貨とのベスト・ミックス
    LETSの発展によって、国民通貨でしか取引できない領域と、地域通貨でしか取引できない領域のすみわけが、確立される。
    この両通貨のベスト・ミックスによって、過剰な信用創造が抑制され、節度ある金融調整機能が発揮できる。


「地域振興券」を超えて

以上、地域通貨の地域、コミュニティーに与える効用を述べた。
日本においては、昨年、地域通貨の考えに似た「地域振興券」が景気対策の一環として、各自治体より発行された。

地域振興券の評価は、いま少し、時をまたねばならないが、必ずしも、地域通貨としての効果を発揮できたとはいえない。

その原因は、
  1. 取引の対象を、地域内資源に限定できなかった
  2. 理美容等のサービス分野には使えたが、介護・環境などのソフトのサービス分野での使用が制限された
  3. 取引するサイドとしては、「上から与えられた金券」という認識にとどまり、賢明な持続可能型消費パターンとは、ならなかった
  4. 自家消費にのみ使われ、NPO等への寄付への途がなく、公的資金が、住民の公共心を育てることなく、使われた

などによる。

この為、地域通貨のように、地域内経済循環を高める効果は、弱まり、マクロとしての景気浮揚効果も薄れてしまった。

しかし、考え方を変えれば、今回の「地域振興券発行」は、日本型地域通貨の今後をシュミレートしうる「壮大な実験」であったといえる。

この時こそ、「地域振興券」を超え、地域社会に変革をもたらしうる日本型地域通貨の実現に向かい、まい進すべき時である。




(2000年 4月 24日更新)


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