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国民が、それぞれの多様な価値観のもとで、ゆとりと潤いのある活動ができるよう、生活空間の倍増をめざそうというのが、このプランの趣旨である。 第2は、『空間を複合化することが、社会資本の質を高めることにつながる』という視点の欠如である。 日本においては、昭和44年より総合設計制度ができ、一定規模の公開空地を確保することを条件に、形態制限を緩和する制度がとられている。
また、アメリカでは,1950年代の早い時期から複合的用途開発 (MXD=Mixd Use)の手法による都市再開発が行われてきた。 近年、日本でも、日本版MXDともいうべき、恵比寿ガーデンプレイスなどの複合的用途開発が急速に行われ始めてきている。 公共事業においても、異なる省庁所管あるいは、異なる用途の施設の合築のための規制緩和(公共施設の合築・複合化にかかわる起債許可手続の簡素化など)がすすめられつつある。 合築の例 さらに、技術的に見ても、離れた建物同士を地下を通じて合築する法(地下連続壁構築方法)なども開発されつつある。 今後、一層の規制緩和と、省庁再編も視野に入れての、省庁間公共事業の複合化と施設の多機能化によって、狭いスペースであっても、諸空間が高度の機能をもちうるような、社会資本の充実をはかるべき時である。 第3は、『共生空間との有機的連携こそ、人間にとっての生活空間をより価値あるものとしうる』という視点の欠如である。 このプランにおいては、共生空間は,環境にやさしい空間の一部として、位置づけられているに過ぎない。 しかし、あらゆる空間において、人間にとっての生活空間と共生空間を結ぶ軸を作り、そのハブの中心に共生空間を位置付けることが、すなわち質の高い空間を生み出す、前提になる。共生空間を生活空間より高いレベルに位置づけた上で、共生空間と、それぞれの生活空間との関わりあいのあり方を模索することが、この際必要である。 「場所愛」呼び起こす戦略の欠如 ![]() 「狭いながらも楽しい我が家」とか、「故郷に対する愛着」などというものは、場所愛のなせるものであるというのが、「トポフィリア(場所愛)」の作者、イーフー・トゥアンの考えである。 日本人が,どうして、古い民家を見ると安心するのか、民家を見れば、そこに住む家族や共同体、個人の生活のありさまが想像でき、そこに各人の場所愛が発生するというのが、彼の言い分である。 安らぎのある空間は、いくら、古いものを新しくしても、狭いものを広くして も、それだけで生れるものではない。人間のもつ場所愛を、たくみに先取りした空間の創造こそ、次世代に残すべき大きな遺産である。 以上に見たように、諸空間を単に羅列するだけでは、これまで、浮いては消えた各種プランと変わらぬものとなってしまう。 生活空間と共生空間との有機的な結合、諸空間に対する人間心理の微妙さにまで、考えを及ぼさないと、そこでの真のゆとりと、うるおいのある活動はうまれないであろう。
('99年 2月17日更新) |
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