琉球弧の一体的発展を
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鹿児島から、奄美、沖縄をへて石垣、与那国にいたる1,000q以上にわたる、数十の島からなるアーチを、琉球弧
という。
このそれぞれの島島は、三つの異なる振興法によって、守られている。すなわち種子島からトカラ列島までが離島振興法、奄美から与論までが奄美振興開発特別措置法、沖縄本島から与那国までが沖縄振興開発特別措置法によってである。
このそれぞれの振興法においては、同じメニューの公共事業であっても、補助率が異なる。例えば、距離的にも文化的にも沖縄に近い与論島は、沖縄より低い補助率の適用を受けることになる。これからの沖縄振興策の充実は、さらに、その格差を広げることになる。
日本列島の本州の長さにほぼ匹敵する、この琉球弧の存在によって、日本は、海洋国家日本にふさわしい広大な海域と漁業水域を得ている。
このように、実質的に海洋国家日本をささえている琉球弧に対し、果たして政治は、その存在意義に値する地域政策を確立しているのだろうか。
つらく当たるアジア不況の影
むしろ、日本経済とアジア経済の不況の影は、この琉球弧経済圏に、つらく当たりさえしている。
観光依存型の地域経済は、バブルの崩壊と周辺アジア諸国への観光客の移動によって、打撃を受けつつある。先日、私の乗った、ある島から東京への定員159名の直行便には、13人の乗客しかいなかった。航空分野の自由化や、需給調整規則の99年度撤廃による自由化が、不採算路線である離島路線の廃止をもたらし始めている。
地元からは、離島空路に対する支援法の制定を求める動きがある。
また、万事がクローズド・システムの離島にとって、ごみや地下水汚染などの環境問題の深刻化や、長雨によるサトウキビ生産からの代替作物の目途なき撤退などが、それに追い討ちをかけている。
まさにこれら離島は、日本列島の抱える諸問題の、縮図以上の縮図となっている。
飛行場のない島と島を結ぶ時間距離は、途方もなく遠い。時間距離でいえば、隣の島も東京も、ほぼ同じ距離に位置するというわけだ。これでは、琉球弧諸島間の地域連携軸の構築は、難しい。
必要な社会資本とソフトの充実
今必要なのは、琉球弧が、自立的な発展をめざせるための、ミニマムとしての社会資本の整備と、内的発展力を喚起しうるソフト策の充実である。
更に、琉球弧は、自然と環境の宝庫でもある。
これらの社会資本 の整備とソフト策の充実は、自然環境と調和し、その欠損を補填しうるものでなければならない。
いわば、環境資産構築が、離島の公共事業の主目的とされるといっても、いいすぎではない。そのためには、琉球弧をもう一つの分散した日本列島とみなした、新たなグランドデザインの構築と、琉球弧一体となった振興法の確立が必要である。
奄美振興法の延長問題を来年にひかえ、小笠原をふくみ一国四制度となっている日本の離島振興対策をもう一度見直し、現在の沖縄振興策を中核に据えながら、それを、琉球弧全体を有機的に包括しうるものに、拡大発展させることも必要となろう。
それぞれの島を点的にとらえた発展策では、これらの島島は、経済的にも環境的にも、生き残ることは、もはや不可能である。
('98年5月)
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