生産者が、環境を語り始める時が来た
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穴道湖中海本庄工区のパイプによる潮通
しが始まってから半年超、潮通し後の水産資源に与える影響調査の中間報告が、このほどまとまった。
全国の他の干拓予定地に比べれば、潮通しまでこぎつけた関係者のご英断とご努力には敬意を表するが、同時に、生産物に与える影響をもとにしてしか、前進できない、日本の環境マインドの未成熟度が、このことによって示されているような気もする。
今回の調査で、潮通しによって生育に効果のあったとされるアサリは、底生生物(MacroBenthos)の一つである。
アサリを守ることが底生生物の保護になることで、環境生態系の復元につながり、ここに、水産関係者と環境との共生関係が保たれることになる。
しかし、ではダイレクトに、底生生物を守るために、今回のような潮通しと調査が行われたかといえば、おそらくNOであろう。
多くの環境関係者は、好むと好まざるとにかかわらず、自らの意思と目的を実現する具現者として、この様に、生産物をパラメーターに使ってきた。
しかし、環境関係者が、この様に自らの主張を、間接話法で話さなくとも、生産者の環境に対する時代認識は確実に変ってきていることに、環境関係者はもっと自信を持つべきなのではないであろうか。
農業と環境保全の両立への試み

イギリスのFWAG(Farmimng and Wildlife
Advisory Group)は、農業者自身が身近にできる範囲で、自然環境保全のための行動を起こそうということで、
1969年に設立された団体である。彼らの共通認識は、高収益の農業と自然環境保全とを、いかに両立するか、農村環境をどうマネージするか、ということであった。
そこで、FWAGは、農業者の利害と対立する環境問題について、農業者と対話を重ね、同時に、農業者でできる環境問題についての対応について、農業者に理解と行動をもとめ、さらには、そのためのアドバイスを行う活動をしている。
農村景観づくりにも、具体的に景観プランの提案をしたり、行政との間にたった活動も行っている。
新しい農業基本法に、環境の位置づけが、不十分ながらも明確になったことで、日本においても、農業者・漁業者の、環境に対する関心が高まってきた。
それを強烈に促しているのは、ここ数年の間に急速に広まってきた、オーガニック食品ブームである。
オーガニック食品ブームも影響
アメリカで1990年有機農産物生産法が制定され、厳しい有機農産物基準にもとずくオーガニック(有機農産物)食品の輸入が急速に拡大してきた。また、日本の商社の一部では、この厳しい基準をクリアーしうる日本国内の有機農業生産者と契約栽培をおこない、有機農産物の生産から消費までのインテグレーション化(川上と川下をつなぐ)をはかる動きが見られてきた。
この成り行きだと、ここ数年のうちに、米国基準なみの有機農産物でなければ
有機農産物にあらずとの風潮も、消費者の間に広まっていく気配すら感じる。
こうなれば、否がおうでも、日本の農業生産者の多くは、環境保全型農業に活路を見出さざるを得なくなる。
農業生産が、環境保全型中心になれば、農業生産を取り巻く農村環境にも、当然、関心が高くなることになり、生産者の環境問題に対する認識は、いま以上にたかまることになるであろう。
先日ある環境NGOの会に出たところ、これまでは無関心を装うことの多かった農林水産関係者が積極的な発言をしており、時代は変りつつあることを実感した。
環境関係者が農業生産物を仲介項として環境を語るのではなく、農業生産者が環境を仲介項として農業を語る時代が、急速に近づいているのである。
('98年10月21日更新)
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