都市、緑と農 | 進士五十八 東京農大出版会(2000年7月) (700円) |
話は、イスラエルのキブツ(集団農村共同体)から、始まる イスラエルの耕地面積が、1948年の独立以来、3倍近く増えたのは、このキブツに参加した農民たちと農業研究者との共同による、科学的農業の実現によるところが多いという。 日本においても、環境と緑と農とのリンクに、農業者と農業研究者とが一体となってあたれば、日本の緑と農の復権は可能というのが、著者の認識である。 そして、そのことが、建て前に終わらない「循環型社会実現」への、具体的で、強力な第一歩になるのだという。 戦後の日本人は、つい最近まで、緑の真の意味をはきちがえていたという。 小さな植枡(うえます)にいけた街路樹を、無剪ていにし、緑の部分を大きくしたところで、街路樹は、ちょっと風でも吹けば、ひっくり返ってしまう。 大きな緑のためには、地下部分に、十分な土が無ければならない。 大きな緑を育てようとすれば、十分なオープンスペースが無ければならない。 フラワーポットなど、地下と連携していない緑を幾ら育てても、生態系としての緑は、育たない。 それには、民間の緑地に頼ること無く、公共的に担保された緑地が増やされければ、真の緑はふえていかないと、著者はいう。 まさに、環境インフラとして、公共緑地は必要なのである。 ちょっと目でみれば、経済不況になれば、緑地は増えそうなものだか、そうはなかなかいかないという。 相続による緑の細分化ゃ、物納の一般化などによって、逆に、緑は減っていくのだという。 私など思うのだが、経済不況の今こそ、下手な公的支援に金を使うより、公共緑地の拡充に、公的資金を使ったらどうなのだろう 私は、著者については、市民農園を普及されたり、農のある街造りを実践されたりしたことで、今から15年以上も前から、その活動を注目してきた。 とくに、著者の考えが色濃く盛り込まれた仕事に、東京都世田谷区の次太夫堀公園 の建設がある。 この次太夫堀というのは、この地に旧くからある疎水の名前で、この疎水跡を中心にし、両側に、たんぼや旧い農家がはりついたゾーンである。 そこで、この地を、公園にし、残っているたんぼでできた米で、出来秋には、餅つき大会をイベントにし、近所の人々や、この公園を訪れる人々を、楽しませている。 また、旧い農家の空きスペースを利用し、様々な会合がひらかれている。 まさに、著者のいう「都市の農村化」が、この次太夫堀公園では、実現されている。 本書を読まれたうえで、この次太夫堀公園を訪れれば、著者がこだわる「緑と農と環境のトライアングル」で、いかに爽やかな都市を作ることができるのかということが、良くわかると思う。 |
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