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風土の意匠 | 浅野平八 学芸出版社(2000年2月) (2,200 円) |
建築の「築」の字を分解すれば、竹と土と瓦と木からできているという。 しかも、その各々は、その土地土地の風土によって、種類も色も形も違う。 更に、家の屋根の形は、風が強い地方であれば、強い風を受け流し、雪の深い地方であれば、強い勾配によって、雪を滑り落とさせ、切りの深い所であれば、切りを切るーーなどと、したたかな側面をもっているのが、日本の民家の特徴なのだという。 モンスーン地帯にある日本列島の風土が、気候・風・雪・温度・湿度などにおいて、千差万別であるごとく、日本の民家の形状も、その土地の風土と切り離されたものであるはずはない。 私の郷里の住まいも、相当旧い物であるが、よくよくみれば、郷土の気候条件を考えた設計になっていることに驚く。 例えば、私の家は平屋ではあるが、家の高さは、二階屋と同じ高さにある。 それが、どのようなメリットとなっているかといえば、南側の二階部分が、天窓となっているため、二階以上に積もる豪雪時でも、家の回りに、雪が山のごとく積もっても、天気の良い日であれば、燦々と陽光の恵みにあづかることができるというわけだ。 本書は、そんな、風土に根差した全国36例の民家について、6つの視点から、その分析を試みている。 すなわち、 1,気象 2,伝承された様式 3,歴史を反映した風土 4,伝統的構法 5,田の地方から伝播された型 6,職人の技芸に基づく様式 である。 1の代表的な例は、沖縄の民家である。沖縄の民家の門の奥には、ヒンプン(風屏)と呼ばれる塀があるが、これは、目隠しや魔除けの機能と同時に、台風時の風よけになるという。 2の例としては、青森県田子町の民家の屋根の真ん中にある、煙り出しのための面破風が芸術的である。 3の例としては、北前船の歴史を反映した北海道・江差町の羽根出し倉が重厚である。 4の例としては、長野県茅野市の母屋が蔵を抱えているような、入れ子構造の民家が印象的である。 5の例としては、宮崎県日向市の、京都の町屋から伝わったという、折り畳み式縁台ともいえるバッタリ床几がユニークである。 6の例としては、岡山県倉敷市の町並み景観を制する、なまこ瓦の基礎となる技術「貼り瓦」工法が圧巻である。 これらの民家の形は、その時代時代の技術なり材料の変遷によって、多少の変形や「もどき」はあってもよいというのが、著者のおおらかな見解である。 例えば、茅葺き職人の減少や、茅の材料の減少によって、カラートタンのやねを強いられる地方の民家もあるが、それは、やむないことであろう。 しかし、次代に伝えるべき、風土のメッセージは、決して忘れることがあってはならないであろう。 |
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