田園環境図書館
人と街を大切にするドイツのまちづくり 春日井道彦
学芸出版社(1999年11月)
( 2,300円)
滞独35年の日本の設計家が、ドイツのまちづくりの実態を、10例にわたって、いろいろな角度から、見ている。

日本では、郊外への大型店の進出により、既成市街地の空洞化が、進んでいるが、ドイツでも同じような現象にみまわれているという。

ダルムシュタットでは、郊外進出直前の大型店を、都心に誘致し直すと共に、それに合わせて、都心のルイーゼン広場の地下に、駐車場を整備し、複合機能を持つセンターの建設、交通体系の抜本的な見直しなど、都心の再開発に乗り出したという。

また、フランクフルトでは、これまでの経済首都としての、都市の魅力の無さから脱するため、博物館通りをつくり、13の博物館を配置することで、文化サイドからのまちづくりを行った。

デュッセルドルフでは、ライン川沿いに走っている国道を地下にし、その上をプロムナード(散策路)にするとともに、レストランなどの関連施設を配置することによって、賑わいを取り戻そうとしている。

ミュンスターでは、徹底した自転車優先政策をとるため、ドイツ最大で多機能の自転車あずかり所の建設を行った。

フライブルグのフォーボー団地では、自動車依存型のライフスタイルから脱するため、自動車を共同利用するカー・シェアリング・システム、団地内の運搬を車以外のものとする手押し車システム、カー・シェアリング・システムに加盟すれば、他の交通機関の優待券がもらえるモビリティ・パック・システムなどの諸策を用意した。

ロスドルフでは、道路拡幅を中止し、そのスペースに、街角広場を設けることにより、賑わいを取り戻した。

このほかにも、本書では、ドイツのまちづくりのいろいろな知恵を駆使した事例があげられているが、なかでも興味を引かれるものが、IBA方式のよるまちづくりである。

日本でも国体が開かれると、それにともなって、各種体育施設が充実されるが、IBA方式は、ある地域に、国際建設展覧会というイベントを誘致し、超一流の建築家による建築物をたて、その後のその地域のインフラを展覧会を機会に整備しようという手法である。

この場合、IBAの事務局がやることは、コーディネートと広報のみである。

このプロジェクトに参加する企業主体は、それによって無形のステータスを得るメリットを享受できる。

また、これには、資金的あるいは税制上のインセンティブは何もない。

日本においても、この手法は、検討すべき課題である。

本書では、そのほか、ボンからベルリンへの首都移転の最新情報が書かれており、日本の首都機能移転問題にも参考となる、いろいろな課題がリアルに述べられている点でも、興味深い。

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