田園環境図書館
アメリカの公園・リクリエーション行政 蒲]暇問題研究所編
不昧堂(1999年12月)
( 2,400円)
本書によれば、日本のレクリエーション行政の不幸は、戦後のアメリカのリクリエーション行政のうちの、ソフトの部分だけが、切り取られ輸入され、始まったことによるのだという。

アメリカのリクリエーション行政は、パブリック・サービスの一環として、ソフト・ハード一体となった歴史的展開のもとにあるのに対し、そのうちのゲーム、フォークダンス、楽しい歌などのみが、切り離され、戦後の日本に直輸入されたために、日本では、地の足のついたリクリエーション行政が永らく育つことがなかった。

また、担当庁もバラバラで、ソフト・ハード一体となった総合的なインフラとして、リクリエーション行政が位置づけられることがなかったのだという。

本書に書かれたアメリカのリクリエーション行政の歴史を見ると、社会政策あるいは救貧政策として、公有地の確保、プレイ・グラウンドの建設が始まり、サンド・ガーデンと呼ばれるものに、指導者を配置することから、ソフトのリクリエーション行政が始まったとしている。

そして、1906年の「アメリカ・プレイグラウンド・リクリエーション協会」の設立と共に、学校と一体となったりクリエーション・プログラムが導入された。

一方、1919年の「全米公園協会」の設立、1934年の最初の公園区の設置、1956年の「全米公園サービス”ミッション66”」のスタートなどを経て、公園とリクリエーションとの一体化が進み、1965年には、「全米リクリエーション・公園協会」の設立に至る。

これらの歴史を見ると、アメリカでは、ソフトとハード、リクリエーションと公園との各々の融合過程のもとに、現在のリクリエーション行政があるのに対し、日本では、改善の方向にあるとはいえ、ソフトの中身を置き去りにし、ハードの建設のみが先行しているのが、現在の日本のリクリエーション行政の実態にあることが、本書を読んでよくわかる。

本書では、後半第U部をアメリカ12地区の公園・リクリエーション事例研究に費やしている。
どのような組織構成のもとに、どのような内容のプログラムで運営されているかが、具体的によくわかるようになっている。

惜しむらくは、12事例のいくつかは、実際に著者たちが訪れてのものだが、その大半は、地元パンフレットの引き写しにとどまっているため、いまひとつ、臨場感が伝わっていない。

それぞれの事例地区にてわけして訪問し、日本人の目で見た活動レポートを、次の機会に報告していただければ、すばらしい事例集になるのだが、そのことを期待したい。

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