田園環境図書館
環境保全・創出のための生態工学 岡田光正ほか編著
丸善(1999年9月)
(3,500円)
近年、ミチゲーションという概念によって、開発行為による環境生態系喪失をくいとめようという考え方が、主流になってきた。
そのためには、最小化、回避、代償の三段階によって、開発行為による影響を軽減化しようというものだが、その三段階目の代償措置として、人工的に生態系を復元・創出するにはどうしたらよいのかを論じたのが、本著である。

この問題を体系的に論じたのは、邦著では、私の知る限り、本著が始めてではなかろうか。

本著によれば、人口生態系の創出に関わる技術は、およそ次の二つに分けられるという。

第一は、生態系の構造や機能が、持続するよう、人間が生態系に働きかける、生態系維持管理技術、
第二は、すでに破壊された生態系の機能を回復させたり、以前にはなかった生態系であっても、その機能が、全体の生態系の機能を補完するものであれば、新たに作り出してしまう、生態系創出技術、
である。

この二つの技術の可能性を、本著では、森林生態系、農耕地域生態系、陸/水境界域生態系、河川・湖沼生態系の4分野で、模索している。

いずれの分野の生態系の保全・創出に当たっても、残されている自然に、いたずらに人為的な作為は施さない、という考え方が必要だということを、本著では、各所で強調されている。まことに健全な方向であると、共感を思える。

この項は、ミチゲーションの考え方を、開発者の都合のよいようにとらえ、「代償措置さえあれば、何でもOK」という、不届きな考え方も横行し始めている。

私は、これを称して「イミテーション・ミチゲーション」と揶揄しているのだが、本著は、これらの誤れる代償措置の考え方に対しても、厳しい自己反省を迫る反論資料ともなり得るものである。

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