NPO参加型雇用政策の展開を提唱


2,000年3月10日、笹山登生議員は、衆議院労働委員会における「介護労働者の雇用管理の改善にかんする法律改正」にかかる質疑のなかで、「雇用政策とNPOの連携」について、牧野労働大臣にたいし、次のような質問をおこなった。

まず、笹山議員は、近時、「委託をうける条件として、市町村から、NPO法人認可を条件とする示唆をうける動き」について触れ、「委託を受けるためのみのNPO法人の増加は、必ずしも、日本のNPOの健全な自立的発展につながらない」との問題意識から、 「今回、雇用保険に加入しているNPOについて、インセンティブを与えるにしろ、介護業務にかかわるNPO的団体がいくつあり、そのうち、NPO法人認可をうけた団体数、さらに、そのうち、雇用保険に加入している団体数や、業態について、しっかりした実態調査を行う必要がある」と、労働省の実態調査の不備を指摘し、労働省側も、今後の実態把握を明言した。

つぎに、笹山議員は、やや長期的な視点から、「雇用政策とNPOの連携」をキーワードにした、新しい労働行政の展開の必要性について、牧野労働大臣の見解をただした。

笹山議員は、労働省が、これまで、NPOと労働行政の連携化について、はやくから研究会の設置や、委託による調査報告書の発表などに取り組んできた先見性については評価しつつも、一昨年の夏以降、産業界を中心として、「緊急雇用策の一つとして、NPOを雇用の場に」という機運から、昨年6月の「雇用政策・産業強化策」に、その趣旨が色濃くもりこまれるまでに、必ずしもNPO側との意思疎通なり、NPOの考えを雇用政策に反映させる努力は、十分ではなかったのではないか」と、指摘した。

これに対し、労働大臣は、「緊急事態の中でもあり、できうる限りのNPOサイドの要望はとりいれた積もりではあるが、不十分な点は、これからも、できるだけ是正に努めていきたい」と、確約した。

さらに、笹山議員は、この「強化策」と前後して、日本NPOセンターなどが、「緊急提言:雇用政策としてのNPOになにが可能か」を提言したことについて、労働省として、この提言への対応は十分であったのか、もし不十分であるとすれば、あらためてNPOサイドと話し合う用意はあるのか」と、質問したのに対し、労働省側は、その対応の不十分さを認め、労働大臣は、「今後とも、十分、NPOサイドの意見を反映させる機会を、国レベル・県レベルともに強化する」と約束した。

さらに、笹山議員は、県レベルでも、労政担当とNPO担当との連携が必ずしも十分でないために、NPOに対する情報公開が少なく、結果として、受託に手を上げるNPOが少なくなっている事態にもふれた。

最後に笹山議員は、この提言にも提起されている三つの問題点についてふれた。

第一は、らんしょう期にある日本のNPOに、一時的に公金を大量に投入することは、 「赤子に札束を背負わせる」ようなもので、必ずしも、長期的には、日本のNPO発展につつながらないのではないか。緊急策と同時に、今こそ中長期的視点にたった「NPOと雇用政策の連動政策」を展開すべき時ではないのか。

第二は、NPOに委託する業務は、行政下請け的な業務ではなく、また、単なる有償ボランティア的な仕事ではなく、NPOならでは、なしえない、新しい社会サービス分野への展開をこころがけるべきではないのか。

第三は、いまだ弱体な日本のNPOにたいし、直接雇用の受け皿を期待するのでなく、やや迂回しても、間接的な雇用効果が発現するように、研修制度の充実など、ソフトインフラなどの整備にインセンティブを与える施策を展開すべきーーなどの諸点を指摘した。

最後に、笹山議員自身が、イギリスのディベロップメント・トラストを訪れた際、その研修プログラムに、国の雇用トレーニングと連携し、自然修復・環境修復のための技術的トレーニングコースに、200人の失業者枠をもうけ、国の労働行政とNPOとの有機的連携をはかっている例を紹介し、「NPOと雇用政策の連携」は、21世紀の労働行政の有力なキーワードになりうること、また、そのためには、NPO優遇税制の実現が急務であることを指摘した。

これに対し、牧野労働大臣は、御自らの福井における過去の繊維産業の生産調整問題でのご経験と絡め、「モノが余る事と、ヒトが余ることを同一視してはいけない」ことを原点として、血の通った労働行政を、今後とも、展開していく意欲を示された。      


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