リストラに対する雇用政策の総合的対策を要請


2000年5月10日、笹山登生衆議院議員は、衆議院労働委員会で、牧野労働大臣に対し、次のような質疑を行った。

今回、委員会に提出されている法案は、企業のリストラクチャリングに伴い、多様な形態の会社分割・営業譲渡・合併が進む中で、分割される会社と、その労働者との労働契約が、いかに円滑に承継されるかを保障するための法案である。

冒頭、笹山議員は、この法案の狙いとするところは、会社分割による労働者の保護をはかりつつも、同時に、決して円滑な会社分割を阻害するものであってはならないとし、この両者のバランスを取った対処が必要ではないかと、牧野労働大臣に問うた。

これに対し、牧野労働大臣は、新会社に移行する労働者の円滑な承継と、元の会社に残留するか、新会社への移行に異議申立てした労働者への保障、分割に伴う解雇の制限などによって、労働者の雇用の安定を計るものであって、同時に分割承継についての指針を定めることによって、その周知徹底をはかり、分割にともない発生するであろう紛争等に対しても、助言・相談・調停機能の向上をはかる所存であると述べた。

さらに、笹山議員は、大蔵省に対し、会社分割に伴う税制の整備について、この税制の検討にあっては、分割へのインセンティブと同時に、租税回避措置を配慮した、慎重な対応が望まれるとし、今後の対応を問うた。

とくに、「退職給与引当金」を始めとする各種引当金・準備金の分割会社への承継については、フランスの承継税制では、新会社への承継引継ぎを明記していることなどから、各国の分割税制を参考にしながら、慎重に対応すべきであると述べた。

これに対し、大蔵省は、企業会計・商法会計と連動し、適切な対応を計っていき、平成13年度の税制改正に、これらを盛り込む意向であることを述べた。

次に、笹山議員は、本来のリストラの意味は、「環境に応じて、会社構造をよりよいものに変えていこう」とする、前向きの側面があるとし、また、「社内カンパニー制」などの新しい形のリストラ形態も生まれているところから、このことが、結果的に新しい雇用創出を促す側面もあるとすれば、労働省として、リストラを真正面にとらえ、それが、中長期的に円滑にいくようソフト策を用意していくのも、雇用政策の社会的役割と考えるがどうかを、牧野労働大臣に問うた。

これに対し、牧野労働大臣は、リストラは、人員整理のみを意図したものではなく、企業の再編整理によって、長期的には、経済の活力を高めうる要素もあるとし、場合によっては積極的にやらなければならない時もあるが、これに対し、国は、創業や労働移動に対しての積極的支援や、セーフティー・ネットの構築に努めるとともに、新事態に適応しうる技術研修の充実などに対しても、国として、積極的に取り組む意向を示された。

最後に、笹山議員は、景気後退の調整局面において、日本的雇用風土として、企業が、人件費圧縮を、雇用数によらず、賃金によって果たすのが、通例であるのに、その事態を適確に示すインデックスが、必ずしも整備されていないことを指摘し、変わり行く日本の雇用形態や、一人あたり賃金圧縮を適確に示す、各種労働雇用関係指標の有機的な再編・構築を計る必要があるのではないかと、問うた。

これに対し、労働省は、雇用数によらず賃金による人件費圧縮の日本的風土の存在を認め、今後、より、実態把握の精緻化を計るための諸策を講じる意向を示した。



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