教育のセーフティー・ネットの確立を要請


2000年4月21日、笹山登生衆議院議員は、文教委員会で、中曽根文部大臣にたいし、つぎのような質問を行なった。

まづ、笹山議員は、文部省の教育改革プログラムが、その後の経済変動のもとにおいても、実効を上げうるよう、その条件整備をはかることの必要性を訴えた。

ここで、笹山議員は、教育改革の先進国、イギリスにおいて、1980年代から90年代にかけて、サッチャ一政権のもとに行われた教育改革が、その後、かならずしも良い評価を受けていないことを指摘した。

とくに、
(1)選ばれる学校と、選ばれない学校の二極化が進んでいること。
(2)貧困な家庭の子女の私学通学のために設けられた奨学金制度が、実質は、富裕な家庭の子女のためのものになっていること。
(3)企業との連携のもとに設立されたカレッジや、国と直結した公立校が、実際は、「エリート校」の一変形となってしまっていること。
などをあげた。

日本においても、近時のバブル崩壊の親の経済状態の変化によって、改革プログラムが志向した「多様な選択」がはからえれにくい状況にあること、特に、私立中・高校では、学期途中に、公立校に転校する児童もあるなど、親の経済状態の変化によって、親も児童も、自由な選択の幅が狭められてきている事実を指摘した。

これらに対しては、奨学金制度のいっそうの充実、私立校についての学費延納などの、いわぼ「教育分野におけるセーフティー・ネットの充実」を国としてもはかる必要がある事を訴えた。

これにたいし、河村文部総括政務次官は、同感を示し、特に、奨学金制度については、希望する者には、その家庭の経済状態如何にかかわらず、一律に対応するここにより、その自立性を尊重するような制度としたい旨を強調した。

また、親のリストラによる子弟への配慮策については、これまでも整備をはかってきたが、なお、足らざるものについては、教育の機会均等の原点に立ち返り、即補うとの意向を示した。

さらに、笹山議員は、いわゆる「教育の市場化」といわれる現象について触れ、教育費公共財の供給とみれば、教育の一部を市場メカニズムに委ねることの功罪を、バブルが弾けた今、検証する必要があるとし、特に、私学一辺倒への志向、教育産業への過度の依存、産学連携による企業力への依存などが、経済基盤の沈下によって、どの様な影響を受けるのかを、検証する必要があることを指摘した。

また、「教育の市場化」は、効率化・選択の自由化・多様化には資するが、ともすれぱ、短視的・非永続的となる欠点を有するとした。

最後に笹山議員は、中曽根文部大臣にたいし、次のような質問を行なった。

笹山議員は、まづ、ある国立大学で「ゴカイ」の研究にあけくれている学者について触れ、この様な20年に一回あるいは100年に一回しか日の当たらない研究員が国立大学に奉職できること自体が、教育大国日本の、キャパシティ・度量を示すことになるのだと指摘、教育の市場化の進展により、短視的・非永続的になりがちな研究者への評価を、もっと、長視的・永続的なスケールで計ることの重要性を訴えた。

これに対し、中曽根大臣は、国公立校のもつ長期的・基礎的・社会的要請のある地域の向上に役立つ分野こそ、国公立校の受け持つ領域であり使命であるとし、研究者の評価・研修も、それにそったものでなけばならないと、笹山議員の見解に同感を示された。


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