障害者にやさしく、柔軟な著作権法の適用を訴える


2000年4月26日、笹山登生衆議院議員は、文教委員会で、中曽根文部大臣にたいし、つぎのような質問を行なった。

今回、著作権法改正により、視聴覚障害者のための点字情報が、通信回線上で配信可能となることについて、まさしく時宜に適った措置であるとした上で、これらのニーズが現場で生じてから、この法改正にいたるまで、かなりの時間がたっていることについて、もっと早期に著作権法改正がされるための方途を、この際、考え直すべきであり、障害者にとって著作権法が最大のバリアーとならないために、最善を尽くさなければならないと主張した。

特に、近年、障害者向けのデジタル関係のソフト・ハードの著しい進展によって、ともすれば、著作権法の改正が、後追いし、追随的傾向にあることを指摘、障害者の現場でのニーズを先取りした著作権法の改正を果たすためにはどうしたらよいかについて、大臣ならびに文化庁に、問いただした。

笹山議員は、特にアメリカにおいては、著作権法第107条のフェア・ユースの考え方によって、公共の利益に資する利用については、著作権の弾力的な運用を認めていることを指摘、日本とアメリカの著作権法の生い立ちの違いはあるものの、障害者の公的権利を著作権の公的権利に優先させるため、何らかの工夫が必要であることを指摘した。

その一つの例として、笹山議員は、1998年のフィリップス社のDAT(デジタル・オーディオ・テープレコーダー)の著作権問題について触れ、その発売にあたり、法改正が遅れたため、1989年のアテネ合意を前提として、権利関係者に補償金を支払うことで、特定機器の指定に先立って、先行発売に踏み切った事例を紹介、著作権法改正が遅延する場合は、このような「つなぎ措置」の例も参考にすべきではないかと、述べた。

これにたいし、中曽根文部大臣は、日本の著作権法が、アメリカ式の包括規定によらず、個別規定によっていることの功罪を認め、とくに、著作権法が障害者のバリアーとならないように、現場のニーズに即応した早急な法改正に向けての体制作りを検討したいと述べた。

さらに、笹山議員は、今回対象とならなかった録音物については、依然として、点字図書館などの公的施設での頒布にとどまっていることについて触れ、アメリカは1996年の著作権法改正によって、点字情報も録音物も、提供場所の制約なしに提供可能となったことを指摘し、日本においてもこれにならった早急の是正をすることを要請した。

特に、Web上にバーチャルな点字図書館をつくり、これに視聴覚障害者が、会員パスワードをもってアクセスすることで、MPEG等の音声情報を、自宅パソコンで、Real Player等で再生することが可能となるような、著作権法の規制緩和を求めた。

これに対し、文化庁は、現行法上では制約があることを認めた上で、今後、いかなることが可能かを検討する余地を示した。

さらに、笹山議員は、Web上での配信を、今回の法改正で可能となった点字情報によって配信した上、これを障害者の宅内で、音声情報に変換できるシステムがあることを指摘、これは、著作権法上どう対応できるのかを、文化庁にただした。

これについて、文化庁は、その音声情報を公衆の用に供さない限りは、著作権法上、許されるものであると答えた。

さらに、笹山議員は、これらの規制緩和が可能となれば、現在の点字図書館のありかたや、その内容は、かなり変りうるのではないかと、その将来像を示した。

すわなち、これまでの点字図書館は、規模も小さく、また、その蔵書も少なく、さらに発行年の旧いものが多かった。

特に、専門図書館情報は、皆無に近く、それらを専門とする視覚障害者は、専門書を点字で読むために膨大なボランティアの助けによらざるを得なかった。

これがWeb上の配信によって、点字情報・録音物・TEXT−FILE等を、ダイレクトに障害者が入手可能となれば、これらのデータ・ベースを各県ごとの点字図書館で作成するのではなく、中央一括なり、地域分散ネットワークのもと、手分けし、作成し、それを中央データ・ベースに集積し、中央データ・ベースより一括配信することによって、より、早く、より最近の、より多様な情報へのアクセスができることになると指摘した。

各県の点字図書館は、むしろ、その地域の生活密着型の点字情報の提供に専念できることになる。

この構想に対し、河村文部省総括政務次官は、おおいに共感を示し、データ・ベースづくりについては著作権法上の制約はあるものの、今後、前向きに検討すべきであると、その構想実現を確約した。


ホーム目 次

HOME -オピニオン -政策提言 -発言- profile & open - 著書 - 政策行動-図書館-掲示板 -コラム- リンク- 政策まんが