笹山登生の発言・寸感アラカルト


2002年5月24日 商業捕鯨と、先住民の鯨の捕獲とを、同次元でみてしまった、ホスト国・日本のお粗末


今日のロイター電は、日本の下関でのIWC総会で、先住民生存捕鯨の議案について、開催国の日本が、採決方法について、話し合いによらず、可決に4分の3の賛成票が必要な投票実施を主張した結果、IWCの56年もの歴史の中で、初めて否決されたことに対し、きわめて残念なことであると、報じている。 (http://www.planetark.org/dailynewsstory.cfm/newsid/16123/story.htm参照)

この記事の中で、日本は、前日の議案である自らのミンク鯨50頭の商業捕鯨再開への賛同が得られなかった仕返し-tit for tat-に、ロシア、グリーンランド、アラスカ、そしてカリブ海のセント・ヴィンナセント及びグレナディン諸島の先住民に与える特例の捕鯨許可枠の議案についての採決を、投票によることを、強く主張したとされている。

アメリカ代表は、「この投票は、IWCの歴史の中で、最も、不正義であり、不誠実であり、不公平なものである。」(http://www.nandotimes.com/world/story/412757p-3288572c.html )と、述べている。

また、http://finance.lycos.com/home/news/story.asp?story=27297885では、「日本は、(自らの商業捕鯨案を通すため、先住民生存捕鯨を道ずれにした)自殺行為をした。」と述べている。

また、最近IWCに参加した6ヶ国(Portugal,Mongolia 、Benin, Gabon, Palau ,San Marino)の投票行動についても、いろいろな揣摩臆測が流れている。(http://www.planetark.org/dailynewsstory.cfm/newsid/16139/story.htm 参照)

じつは、私も、若いとき、金融機関で捕鯨会社の融資を担当していたため、捕鯨とは、浅からぬご縁がある。

1970年代半ばのころであるから、当時は、1964年から南平洋でのシロナガス鯨の捕獲が禁止され、1972年には、国連人間環境会議で「商業捕鯨10年間モラトリアム勧告案」が採択され、シロナガス換算(BWU)方式のかわりに種別捕獲頭数枠の設定がされ、1975年に管理方式(NMP)が採用されたあたりのころだ。

そして、1976年から1978年にかけて、ナガス鯨やイワシ鯨の捕獲も禁止され、1987年の商業捕鯨禁止へと向かう。

何しろ、南氷洋捕鯨は、日本水産、大洋、極洋の三社で、キャッチャーボート 86隻、冷凍船 14隻、タンカー 7隻、貨物船 36隻、乗組員1万 200人を抱えていたのが、1976年以降、共同捕鯨となってからは、母船 2隻、冷凍船 2隻、キャッチャーボート 18隻、乗組員数1500名となってしまうという凋落ぶりだった。

その1過程を、私も、目の当たりにして見てきた。

だから、商業捕鯨再開にかける日本の関係者の悲願もわからないわけではないのだが、それにしても、消費者の鯨離れの中で、これほどまでに、水産庁を先頭に、政治家をも巻き込んで突っ走るのは、ややアナクロニズムのそしりを受けるのではないのだろうか。

先住民族による捕鯨とは、伝統的な捕鯨漁具や捕鯨用カヌーを駆使したものと聞く。

その装備からして、資源維持になじみやすいものだ。

これを、乱獲につながりうる近代装備の商業捕鯨と、トレードオフの関係に見ること自体、誤りだ。

まさに、その意味では、日本側が非難する「ダブル・スタンダード」が通用する概念の違いが、そこにはある。

CNN(http://asia.cnn.com/2002/WORLD/asiapcf/east/05/23/japan.whaling.conference/index.html)によれば、ある先住民族は、栄養摂取は鯨の肉に依存していること、これがなくなると、部族の飢餓につながると、述べているという。

もっとも、五年間でホッキョククジラ二百八十頭という先住民捕獲枠というものの実際の流通形態がどのようなものかについては、日本の調査捕鯨の流通形態についての検証同様、しっかりした検証は、必要である。

なぜなら、彼らに、富としての鯨を教えたのは、ほかならぬアメリカ捕鯨であるからである 。

しかし、何も、この議論と商業捕鯨再開論とを同一視することは、ホスト国として、あってはならないことだ。

商業捕鯨の再開に固執するあまり、人道上の問題につながりかねない議案にまで、ノーといった、日本の無定見さが、今度は、国際社会から問われる番だ。


追記-その後のIWCの動き

5月24日、特別に捕鯨が認められている四カ国五地域の先住民の捕獲枠見直しについて討議を再開し、米国・マカ人のコククジラ捕獲枠などを話し合いによる合意で採択。

米国とロシアが、アラスカ州のイヌイットなどのホッキョククジラ捕獲枠について修正案を共同提案したが、採決の結果、再び否決された。

マカ人とグリーンランド東部・西部(デンマーク)のミンククジラとナガスクジラの捕獲枠は、現行枠を二〇〇三年から五年間継続。

セントビンセント・グレナディーンのザトウクジラ捕獲枠は、現行枠の年間二頭が同四頭に増え、期間も三年から五年に延長された。


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